上 下
17 / 17

皇女と勘違い

しおりを挟む
『それは大変ですね…とりあえず宿に転送してあげますから、2人の安否確認をしてから解決策を考えましょう。』
私はヴリエーミァさんの冷静な答えを聞いて、頷いた。
転送魔法はすぐに使われ、気が付いたら私は部屋の扉の目の前にいた。
ここは、宿だ!
「クルム!ユシル!」
ドキドキしながら扉を開けると、2人はベッドの上で眠っていた。
あれ…?
誘拐されて、いない?
何かがおかしいと思い、2人の枕元を確認すると、一枚の紙が置かれていた。
『変化に驚きなさい!ーサリナ』
変化?もしかして2人の体に何かしたの?
「ユシル、クルム。」
優しく2人のことをゆすり起こすと、目をこすりながら起き上がった。
「おねーちゃん?」
「さな?」
「まだ夜だけど、起こしちゃってごめんね。」
テーブルに移すために、ユシルのことを抱っこしようとすると、ユシルは自力で立ち上がり、手を伸ばした。
「ゆ、ユシル?」
た、たってる!
私は驚いて一歩下がった。
「ゆしるが立ってる!」
目が覚めたクルムが隣ではしゃいだ。
「ほ、ほんとだ…」
驚いたユシルはベッドの上で転んでしまった。
よかったー!
もしかして、サリナの言ってた変化って…
足を治してくれたってこと!?
いやいやそんなわけ…
「あのお姉さんだよ!」
クルムが嬉しそうに教えてくれた。
「お姉さん?」
「うん!部屋に来てね、おねーちゃんの友達だから、ユシルの足を治してくれるって…」
「もしかして、そのお姉さんは茶色い髪に、うっすらオレンジっぽい瞳?」
聞いてみると、クルムはにこにこと微笑みながら頷いた。
サリナって、ただのいい人やないかーい!
あとでお礼言わなきゃいけないな。いつ会えるか分からないけど。
「そっか。2人は寝なさい。私は、行く場所があるから。」
ベッドで寝かせて、窓から旅立とうとすると、服を2人に掴まれた。
「「明日じゃ、ダメ?」」
可愛い顔で見つめてくる2人は、もう、反則。
この子達にノーって言える人はある意味すごいわ。
しょうがない。今回は私が折れよう。
「一緒に寝よっか。」
リリアナがいい人だということをみると、商談主さんは死んでないはず。
部下もいるはずだし、大丈夫でしょ。
ふかふかな布団の中に入ると、自然と眠ってしまった。
2人を連れた明日朝イチにアジトに行くぞー!


夜が明け、日が登った。
チェックアウトの準備ができた私たちは、いつも通り空高く飛んでいた。
ユシルとクルムを抱えて、箒から飛び降りると、全く同じ道を辿り、商談主の部屋に向かった。
あ、ちゃんと片付いてる。
「君が逃亡皇女か。こんにちは。」
急に目の前に現れた商談主を見て、私は一歩後ろに下がった。
黒髪に黒い瞳、ユシルと同じだ。
変な人じゃないといいんだけど。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。

児童書・童話 / 連載中 24h.ポイント:11,972pt お気に入り:1,050

許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,958pt お気に入り:3,672

「ぶっ飛んだ公爵家」の末っ子

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:21

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:127,677pt お気に入り:8,069

婚約破棄していただき、誠にありがとうございます!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:6,203pt お気に入り:1,989

処理中です...