転生皇女（12歳）、家出してみました。

皇女と新しい国

『助けて…助けて…』
助けを呼ぶ声が、頭の中で聞こえた。
あの時の声だ。
男の子の声は聞こえなくなった。
女の子だけ。
もしかして、貴方はウルフナイトの中にいる少女なの？
「ねえっ！あなた…！」
彼女の正体を聞く前に、私は目を覚ました。
真正面に座っていた、ユシルとクルムは、私に寄りかかって眠っている。
あの子は、誰なんだろう。
夢では、正体を明かしてくれないみたい。
着陸しようとしている馬車に気付き、私はドーム型のシールドを張った。
着いたみたい。
馬車が止まったことを確認したあと、私は二人を抱えてホテルに向かった。
「いらっしゃいませ。」
「三名で。二泊三日。身分証です。」
私はスタッフさんに身分証を渡して、無事チェックインを済ませた。
部屋に案内してもらい、扉を開けた途端、クルムは布団の中に飛び込んだ。
「こら、クルム。」
もう。可愛いんだから。
眠ってしまったクルムの隣にユシルを寝かせた後、私はスマホでワイナス商団のアジトを調べた。
お、この宿から近い。
コアの結界を2人の周りに貼って、夜中になったら行ってみよう。
一応防衛グッズも持っていって、少しだけ上げた剣士のレベルも役立ちそうだな。
パパっと木刀を創って、良し！準備オッケー！
後は、日が暮れるのを待とう！




日が沈み、月が世界を照らす時間、私は電気を消して、窓から飛び降りると同時に、箒に跨った。
目的地に急いで向かうと、私は空から華麗に着地した。
いつも通り透明になると、私は扉を開けた。
しかし、人の気配は全くしなかった。
おかしい。
足音を立てずに進んでいくと、なにか硬いものが壁にぶつかる音がした。
物では無い、何かが当たる音。
急がなくちゃ。この中で何かが起こっている。
メインルームの扉らしきものを突き破り、剣を構えると、人の気配を感じた。
しかし、部屋の中には誰もいない。
「姿を現しなさい！」
私しかいない部屋で叫ぶと、笑い声が聞こえてきた。
「テンセイシャさん、お久しぶり。」
「あ、あなたは！」
箒に乗って姿を現したのは、紛れもないヒロインのリリアナだった。
「あら、少しは強くなったのね。」
リリアナの姿をしてる、でも、リリアナではない。
「あなたもテンセイシャでしょ？商談主はどこに行ったの？」
確か、商談主のダレンは、小説の中でもトップの美貌と強さを兼ね備えていたはずよ。
「ふふ。弱いから倒しちゃった。私の正体は、ヒ•ミ•ツ。あ！ちなみに、あなたが宿に置いて行った子たちは…まあ、いずれわかるわ。また後でねー！」
「え、ちょっ！」
リリアナはにっこり微笑むと、宙に消えた。
置いて行った子達って、もしかして、ユシルとクルム！？
あの二人の身になにかあったんだわ！
私はスマホを取り出して、ヴリエーミァさんに電話をかけた。
『サナさん、どうしたんですか？』
『ヴリエーミァさーん…』
『わっ！ど、どうしたんですか！？』
半泣きになりながら、私はヴリエーミァさんに全てを説明した．