文豪たちの鎮魂歌~レクイエム~

桃井桜花

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第一話 始まり

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 四月十日。私は、東京都都内の大学で教授を務めている。学科は文系。ここは生徒数があまり多くないから私の学科は日中で終わることが多い。さぼりたい気がするが、同僚の芥川君に一時間ほどの説教をされるから、泣く泣く頑張っている。ちなみに、芥川君は大学教授での同僚ではなく、裏舞台での同僚さ。【テロ・犯罪組織特殊課~クライシス~】。君も聞いたことがあるんじゃないかな? 知ってても知らなくてもいいさ、日中は一般市民。それ以降は警察……まぁ刑事みたいなものをしているのだもの。はたから見れば皆同じ生活をしているように見えるからね。

「……はぁ。知っていますし、それに私今日からその組織に配属された樋口一葉ひぐちいちようと申しますけど?」

「だってよ芥川君」

 自分のデスクの椅子に座っている私は、横にいる芥川君に顔を向けると、彼は私の頭を新聞紙で叩いてきた。

「あんたが急に話し始めたんでしょーが!!」

「うーん。だってこの子何も知らなそうだったからね~」

 自分のデスクの上に上がっている珈琲を一口飲んだ。芥川君はなぜか深くため息をついた後、樋口君に謝罪を始めた。全く、芥川君はまじめすぎるな~。もっと緩くいかないとこの先持たないよと思いつつ、彼らの会話に耳を傾けた。

「ったく……すみませんね樋口さん。この大馬鹿が急に語り始めてしまって」

「いいえ全然大丈夫ですよ!むしろ勉強になりました!」

 樋口君は首を振った後、来客用のソファーから勢いよく立ち上がった。

「改めまして!今日から警視庁公安部から配属されました!樋口一葉と申します!宜しくお願い致します!」

「元気がいいね~。そんな子には徹夜地獄になると思うさ!頑張り給え、樋口君!君ならっ……痛いなもう~」

 また私の頭を新聞紙で叩いてきた芥川君。短気すぎないかい?

「あんたも徹夜組なんですから!それでも大学教授か!!」

「大学教授関係あるの……?」

 芥川君の言葉に疑問を抱いていると、事務室のドアが開き、黒髪のショートヘアの白い長そでのワイシャツに第一ボタンを閉めずに開け、黒いネクタイをしたの青年と、黒縁眼鏡に茶髪のナチュラルヘア。黒い外套に第一ボタンをはずした白いワイシャツ姿のの男性が事務室の中へと入ってきた。すると、黒髪の青年が芥川君に駆け寄り元気よく挨拶をした。

「お早うございます!芥川先輩!!!」

「あぁ、お早うございます太宰君。今日も元気があっていいですね。大学の講義は終わったのですか?」

 黒髪の青年の名は【太宰治だざいおさむ】。太宰君は芥川君の後輩にあたって、芥川君の後を追ってこの裏舞台の業界に入った青年。

「はい!だから安吾と喫茶店で合流して一緒に来ました!」

「治が無理矢理連れてきただけだろう……俺は原稿の締め切り前で、部屋にこもって原稿間に合わせるのに缶詰めだったのによ……」

 太宰君の後ろにいる長身の黒縁眼鏡の男性は、小さく欠伸をした。彼の名は坂口安吾さかぐちあんご。坂口君はそこそこ有名な小説家さ。彼は常識外れの頭脳を持ち、この組織クライシスに必要な人材ともいえる。ただし、その頭脳を持っての代償なのか、不眠症を患っており、目の下にはクマが出来ていることが多い。でもまぁ、一か月に一回医者のもとに行っているみたいだから、ここ最近はクマが出来ることはなくなった気もする。

「あの~確か同じ大学の……」

 樋口君は太宰君に話しかけると、太宰君は樋口君をギリッと睨んだ。ある意味の定番だよ。この組織クライシスのね。

「芥川先輩に色目を使ってんじゃねぇよ……」

 そんな太宰君に対してびくともせず、首をかしげた樋口君。いいコンビになりそうだ。

「治。やめないか……このお嬢さんは新入りだぞ?公安部からの配属だから、下手に刺激すれば俺たちの首が飛ぶんでしまうからな」

「新入り、芥川先輩から一メートルほど離れろ。それで許してやる」

 太宰君は樋口君にそう告げると、樋口君は元気よく『はい!』と返事をし、芥川君から一メートル離れようとした。私は彼女の行動に腹を抱えて笑った。坂口君は驚いた顔をし、太宰君は『こいつ阿保なのか』と小さくつぶやき、芥川君は樋口君を何とか引き留めた。

 ───三十分後

「いや~久しぶりにこんなに笑ってしまってお腹が痛い」

 呼吸するにも少しきつい。樋口君の奇行を何とか止めた芥川君は、息を切らしながら太宰君に説教。坂口君は樋口君の奇行をネタにするため、メモをし始めた。樋口君は左腕に着けてある腕時計を見て『こんな時間!?』と声を出した。私はお腹をさすりながら樋口君に問いかけた。

「どうしたんだい?」

「これから、あと一時間後に公安部に行って、クライシスここの長官と顔合わせなんです!急がないと!!」

「それなら私も一緒に行こうではないか!長官と顔を合わせるのであれば、私が必要になる」

 樋口君はまたもや首を傾げ『何故です?』と聞いた。私は芥川君に目線をやると、ため息をつかれてしまった。何時ものことだから気にしないのだけどね!

クライシスここのメンバー誰かひとりついていった方が、長官も話しやすいと思うし、君も話しやすくなる。それに私は一応、クライシスの副長官だからね!」

「そうだったんですか!!」

「あれ?教えてなかったっけ?」

 芥川君たちに顔を向けると、うんうんと頷かれてしまった。

「おやまぁ~失礼したね」

「お名前も教えてもらっていないのですが……」

「だめでしょー芥川君!名前教えていないなんて!」

「あんただよ!!!」

 今日三度目の新聞叩きをされ、渋々名前を名乗った。




 ───私はこのテロ・犯罪組織特殊課~クライシス~の副長官。永井荷風ながいかふう。君の相棒になる男だよ




 これが、私永井荷風と樋口一葉との出会いの物語。
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