文豪たちの鎮魂歌~レクイエム~

桃井桜花

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第二話 樋口一葉

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───四月十日 午後十七時。東京都・警視庁公安部にて

 私永井荷風ながいかふうと今日公安部から配属されてきた新人の樋口一葉ひぐちいちようと共に 【テロ・犯罪組織特殊課~クライシス~】の長官である【夏目漱石なつめそうせき】と顔合わせをしに今、会議室の中で長官を待っている最中。私は樋口君の付き添い。まぁ、仕事をさぼりたかっただけなんだけどね! さて、今の樋口君の状況を説明しよう。普通誰もが緊張する場面なのに、彼女は違った。度胸がある。先ほども太宰君の件でも思ったが、彼女は根がまじめすぎるタイプ。それに、なのかもしれない。私は樋口君にあることを問いかけた。

「樋口君、君は……」

 すると、ある意味タイミング悪く≪テロ・犯罪組織特殊課~クライシス~≫の設立者及び長官である【夏目漱石なつめそうせき】が会議室の中へと入ってきた。樋口君は椅子から立ち上がった。

「今日から公安部から配属されました樋口一葉と申し上げます!」

「元気な子がよう来てくれて嬉しいの~。吾輩は夏目漱石!存じ上げていると思うが、組織の長官じゃ。まぁ気軽に行こうではないかね」

「はい!」

 樋口君が椅子に再び座った後、私たちの向かいに夏目が座った。相変わらず鼻の下に髭を生やしているのか……。先生曰く、ファッションというものらしい。髭がファッションのうちに入るのかは定かだが、先生が気に入っているのであれば私は何も言わない。しかし、どうしても先生のその髭が気になり、毎回会うたび剃りたいという衝動に駆られ、先生の顔面をガン見してしまう。現在進行形で先生の顔をガン見していると、横にいる樋口君が引いているのに気付いた。すると、先生が私に『そんなに見つめなくてもよいぞ』と歳が似合わないにも関わらず、上目遣いで可愛い子ぶってきた。それに対して私と樋口君は背筋がぞっとした。鳥肌が立つくらいに。それくらいキモ……いや言わないでおこう。

「荷風君~。そんなに引かなくてもよくないかね……一葉君も」

「「無理です」」

 同時に言うと、先生は部屋の隅に移動しすね始めてしまった。私はそんなことに構わず、話を進めることにした。

「先生のことは無視していいよ。何時ものことだからね。さて、顔合わせもしたことだし、私から一つ」

「何でしょうか?」

「君は私と相棒バディを組んでもらうからね?いいでしょ先生?」

 すねているはずの先生は親指を立てた。先生から許可を取った私は、樋口君に早速ある任務を言い渡した。

「確か君は私がいる大学の生徒だったよね?」

「はい!」

「講義がすべて終わり次第、太宰君と共に今日いた事務室に来てくれ給え。決して太宰君と喧嘩したら駄目だからね?それと、太宰君が単独行動しようとしたら芥川君の名前か私の名前を使いなさい。渋々従うと思うからね?」

 樋口君にそう伝えると、樋口君に『拒否権はないのでしょうか?』と聞かれ、笑顔で頷いてあげた。

「了解いたしました!ではまた明日伺いますね!」

 樋口君はそう言って会釈をした後、会議室から出て行った。『頑張ってね~』と手を振って樋口君が会議室から出ていくのを見送った後、先ほどまでの緩い雰囲気の夏目先生ではなく、長官としての夏目先生がそこにいた。

「荷風君。自分と相棒バディを組ませたのに、何故治君と組ませたんだい?」

「太宰君と樋口君は相性が良い。先に自分よりも太宰君と組ませた方が、この先の対策にもなります。それに、彼女は全員と一回組ませたほうが彼女の身にもなります。まぁ彼女の経歴を拝見した際の判断なのですが……夏目先生ならお分かりですよね?」

 数秒会議室は静かに沈黙した。時が止まったかのように。だが、その沈黙を破ったのは夏目先生からだった。

「荷風君に任せよう。芥川君にも伝えておくから今日はもう帰りなさい。ただし、あまり根詰めないようにね?根詰めすぎて、思いつめるなんて言うことがあれば……」

「ご安心ください」




───もう二度とあんな風になんかなりませんよ。それに、私の居場所はここですから
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