実世界逃亡ー異世界ではスローライフより冒険がしたいー

木東

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【三話】異世界へのご案内

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「んだよ、どこかの田舎へ行くのかと思えば漫画かよ!
そういうあり得ない話に付き合うつもりはねーよ」

白虎は頭をボリボリとかきむしりながらツトムさんに背を向けるようにくるりと翻す。

「馬鹿げた話だと?」

「あぁそうだよ!」

「なるほど、ではお帰りになりますか?」

全員が白虎の方に視線を送る。
誰もがくだらないと言って帰るのだろうと思ったからだろう。

確かに、そんなファンタジー普通は信じないし彼のような人間の場合こんなことに付き合うのはごめんだろうと言うのは容易に想像がついた。

だが、くるりと翻して片方の踵ををトントンと鳴らすだけで、ただけで白虎はその場を一歩たりとも動こうとしない。

「…と言っても、その様子だと帰れる状態じゃなさそうですね。」

ツトムは煽るようにそう言うと、白虎はチラリと視線だけををツトムにむけ睨む
しかし、その言葉に返す言葉がないらしく、結局彼の口からは舌打ちが聞こえるだけだった。

ツトムはそれを満足そうに見ると、今度は俺たち3人の方を見て話しかけた。

「他の皆さんはいかがですか?」

その質問に全員が俯いて視線を逸らした。
しかし、返事をしないわけにも行かないのでオレは率直な感想を伝えた

「まぁ…異世界…っていうのは眉唾だな」

「ほう…じゃあ、行くのは遠慮されますか?」

「いや…その…」

ツトムの返しにオレは言葉に詰まる。
でも、こんな夜中に呼び出して異世界だのなんだのの話をされても信じられるわけもない。

信じられるわけもないのだが…
だからといって『くだらない』と一蹴してこの場を立ち去ることは、俺たちにもできなかった。
逃げ出す覚悟でここにきている以上、それが本当だろうと嘘だろうと既に帰る場所がないのだ。

だからだろうか

「どのような場所なのか、教えてもらえないですか?」

ピーチさんは半信半疑ながらとりあえず異世界があることは飲み込んでその場の全貌を知ろうとツトムに問いただした。

しかし…

「行けばわかります、正直にお答えしてもあなた方は今みたいに信じないでしょう。」

ツトムもツトムで素直に教えてはくれない。

そこから推理したのか雨姫はふと思いついてしまったのか

「もしかして…『天国』…って…意味だったりする?」

ごくりと喉を鳴らして質問した。

しかしこの問いには、先ほどまでは何を効かれてものらりくらりとかわしていたツトムも心底嫌そうな表情を作った。

そしてため息まじりにシッシと猫を追い払うかのように手を振りながらつぶやく

「そこへ行きたいのであれば、皆様ご勝手に行ってください
でも、そこに行くくらいなら眉唾でも異世界に言って新たな人生を送った方が有意義だと思いますがね。」

ツトムは一度俺たち4人を見回すと、メガネをくいっと上げて言葉を紡ぐ

「みなさんのご事情はそれぞれSNSで把握させてもらってます。
もちろん他言はしませんが、そこから推察するに現実から逃亡したい願望はあっても、天国に行きたいなんて本気ではないのでしょう?」

俺たちは各々の顔を見合わせる。
ツトムはその行動で俺たちの気持ちが把握できたのか、天国云々の話は終わりにして自分の話を進めた。

「信じられない、行きたくないと言うなら強制はしません。
ですが、行くのであれば全員の承諾が必要です。
一人でも拒否するのであれば、この話は終わりで解散といたします」

ツトムは笑顔を浮かべながら『どうしますか?』とまた俺たちを見回してそう尋ねる
それに対して一番最初に返事をしたのは…

「私は…かまいません。」

意外にもピーチさんだった。

「この世界に…いたくないですし…むしろ本当に異世界があるなら好都合です」

その表情には何かしらの覚悟が見えた気がした。
オレもオレで、今更帰るつもりはさらさらない。

「信じらんねーけど…未練ないしな…」

だからオレもピーチさんに続いて同意する

「なんでもいいけどさ、行くなら早くしてくんない?
あたしは最初から同意してるから!本当にどっか連れてってくれるんならあとはどこでもいいからさ!」

雨姫はもはやこれ以上待てない事情があるのか、もはや駆け足状態で足踏みをしながらツトムに訴えかけた。
ツトムは笑顔でうなづくと、最後にまだ後ろを向いたまま微動だにしない白虎を見る

「白虎さんは?どうされます?」

念押しでもう一度問いかけをすると、盛大なため息を吐いた後に

「わかったよ、行けばいいんだろ?行けば!
どうせ、ここにいても碌なことになんねーしな。」

と吐き捨てるように言い放った。

ツトムは満足そうに頷くとスマホを取り出して画面のほうを俺たちに向けた。

「全員一致ですね。
ではこれからみなさんを異世界にお連れいたしますので、携帯電話を出してください。」

俺たちは言われるがままスマホを取り出す。
するとそこには白背景で中央に『GO』と書かれたボタンが表示されたシンプルな画面が表示されていた

「それをタップしてください」

言われるがまま俺たちはその画面のボタンをタップした。

その直後、意識が遠のいていき現実世界での記憶はここで途切れることとなった。
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