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神様と女神①
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俺は今めちゃくちゃ悩んでいる。いつ言うべきか。
確実に合っているという証拠はない。しかし、考慮すべき事項をすべて勘案しても、またあらゆる仮説を立てたとしても、俺にはもうこれしかないんじゃないかと考えている。いや、これしかない。これしか考えられないのだ。
凪沙ちゃんは元神様、つまり天界の女神だったんじゃないか?
凪沙ちゃんは心優しい。それも、怖いほどに。凪沙ちゃんが天界の女神だとすれば、あの優しさでは長続きしていないだろう。結果として下界に降ろされるに違いない。
俺がそうであるように、天界にいた神様は下階に降ろされても神の力が使える。だとすれば女神だって同じはずだ。
凪沙ちゃんが神の力を使えるとすれば、自分と唯斗くんに迫りくるトラックの軌道を変えることは可能である。
神楽はトラックの軌道を右側に変えようとしたが、その前に凪沙ちゃんが咄嗟に左側に変えたのだ。
結果としてトラックの軌道が変わったという事実は変わらないが、その向きに食い違いが生じた。神楽はおかしいと思いながらも、とにかく俺を下界に追いやるという目的は達成出来たのだから、トラックの軌道の向きなんてどうでも良かったのだ。
トラックに異常は見当たらなかった件や、そのトラックの点検を行った権藤さんの話、そしてドライブレコーダーの映像から考えても、トラックのあの軌道の変わり方は少なくとも人間が起こせるものではない。長年神様をやってきた経験からも、あれは神の力が働いているに違いなかった。
凪沙ちゃんが元女神で、咄嗟に神の力を使ったと考えると合点がいくのた。
そしてもう1つ。俺が天界から下階に落とされるちょっと前に、誰か女神が下界に落とされていた。その理由は、今の凪沙ちゃんに通づるものがある。呆れるほど優しい性格だったのだ。これでは何をするにも情を入れてしまう。クビになるのも仕方が無い。
問題は、凪沙ちゃんにこの話をいつするかだ。いきなりこんな話をしたところで、もし違っていた場合が怖い。完全に頭がおかしくなったと思われる。
ただでさえ、ゴミ箱の中から引っ張り出されたのが初見なのである。これに加えて、いきなり「あなた元女神でしょ?」などと言って違った場合である。恐ろしくてその後の天界を想像したくもない。
でもなぁ……。これしかないんだよなぁ……。
小出しにして言うか? 神様の存在って信じる? とかね。
でもこれじゃまるで宗教勧誘みたいだよなぁ。何いきなり神様信じる? て。仮に信じていたら何? である。
どうしよ……、どうしよ……。
「神山さーん! 神山さーん!」
こんな時にっ……。ご本人様が……。
「神山さーん! 神山さーん!」
「は、はーい……、ここにいるよー……」
「神山さん! 神山さんって、神様信じますか!?」
え? あなたから? あなたから宗教勧誘ですか?
神様信じるか信じないかで言ったら、そりゃ信じるよ。だって、俺元神様だもん。
凪沙ちゃんも、神様に神様信じますか? って聞いてるなんて夢にも思わないだろうな……。
「神様……。うん、いると思うよ。今目の前に……じゃなかった、頑張っている人の頭上とかに」
「じゃあ私の頑張り、神様が見てくれたんですかね!? この間描いた風景画が、ある絵本の表紙を飾ることになったんですー!」
「へー! それは凄いね! 着々と画家への夢へ近づいているじゃない!」
「そこまで有名な絵本ではないのですが、それでもすごく有り難くて! 学校の先生や友達も褒めてくれましたー! 後でお姉ちゃんにも報告します!」
「お姉さん、凄く喜んでくれるんじゃないかな! 凪沙ちゃんに夢を託してたんだし!」
「もしかしたら、神山さんが神様なのかもしれませんねぇ! ゴミ箱の中から神山さんを発掘していなかったら、このことも無かったかもしれません!」
うん、それはたぶん気のせいだと思うけど……。けれど、まぁ凪沙ちゃん、努力してたからなぁ。間違いなく、凪沙ちゃんの努力の結晶だよ。
「あと、みんなからは絵に優しい性格が出ていて素敵だと言われました。すごく嬉しかったです。思えば、特に性格面で得したことはなく、むしろ苦労してきたんですよ。お節介っていうのかなぁ? そのせいで散々損してきましたから……」
優しい性格か……。本当に凪沙ちゃんはそれが当てはまるからなぁ。それで散々損してきたのか。
あ、じゃあ天界の時の記憶もあるのかな? 天界では苦労とか損どころか、クビになってるから……。
……聞くとしたら今だろうか?
「ねぇ、凪沙ちゃん?」
「はい? 何でしょうか? サインなら、まだ練習していないので完成したらしてあげますよ!」
「あ。いや、ちがっ……」
「でもその前に、サインの価値が高まるようにもっと頑張らなきゃですね! また神鳴山に絵を描きに行きましょう!」
「あ、あの……凪沙ちゃん?」
「ん? どうしたんですか?」
「凪沙ちゃんは神様の存在って信じる?」
「逆質問ですね!? 私は信じますよー! 神様は平等なんです。頑張ってる人もそうじゃない人も、平等に見てくれているんですよ。そして、頑張りが大きい人に、ちょっとしたご褒美をあげるんです。神様は人間が乗り越えられない試練も与えるなんて言いますが、そんなことはありません。ちゃんと乗り越えられる試練しか与えません。神様にも情はありますからねぇ!」
神様にも情はある。情がありまくった凪沙ちゃんだからこその発言だろう。これは今、聞くしかない。
「変なことを聞くようで申し訳ないんだけどね……?」
「変なこと? 何でしょうか?」
「……凪沙ちゃん、もしかして天界の元女神だった?」
確実に合っているという証拠はない。しかし、考慮すべき事項をすべて勘案しても、またあらゆる仮説を立てたとしても、俺にはもうこれしかないんじゃないかと考えている。いや、これしかない。これしか考えられないのだ。
凪沙ちゃんは元神様、つまり天界の女神だったんじゃないか?
凪沙ちゃんは心優しい。それも、怖いほどに。凪沙ちゃんが天界の女神だとすれば、あの優しさでは長続きしていないだろう。結果として下界に降ろされるに違いない。
俺がそうであるように、天界にいた神様は下階に降ろされても神の力が使える。だとすれば女神だって同じはずだ。
凪沙ちゃんが神の力を使えるとすれば、自分と唯斗くんに迫りくるトラックの軌道を変えることは可能である。
神楽はトラックの軌道を右側に変えようとしたが、その前に凪沙ちゃんが咄嗟に左側に変えたのだ。
結果としてトラックの軌道が変わったという事実は変わらないが、その向きに食い違いが生じた。神楽はおかしいと思いながらも、とにかく俺を下界に追いやるという目的は達成出来たのだから、トラックの軌道の向きなんてどうでも良かったのだ。
トラックに異常は見当たらなかった件や、そのトラックの点検を行った権藤さんの話、そしてドライブレコーダーの映像から考えても、トラックのあの軌道の変わり方は少なくとも人間が起こせるものではない。長年神様をやってきた経験からも、あれは神の力が働いているに違いなかった。
凪沙ちゃんが元女神で、咄嗟に神の力を使ったと考えると合点がいくのた。
そしてもう1つ。俺が天界から下階に落とされるちょっと前に、誰か女神が下界に落とされていた。その理由は、今の凪沙ちゃんに通づるものがある。呆れるほど優しい性格だったのだ。これでは何をするにも情を入れてしまう。クビになるのも仕方が無い。
問題は、凪沙ちゃんにこの話をいつするかだ。いきなりこんな話をしたところで、もし違っていた場合が怖い。完全に頭がおかしくなったと思われる。
ただでさえ、ゴミ箱の中から引っ張り出されたのが初見なのである。これに加えて、いきなり「あなた元女神でしょ?」などと言って違った場合である。恐ろしくてその後の天界を想像したくもない。
でもなぁ……。これしかないんだよなぁ……。
小出しにして言うか? 神様の存在って信じる? とかね。
でもこれじゃまるで宗教勧誘みたいだよなぁ。何いきなり神様信じる? て。仮に信じていたら何? である。
どうしよ……、どうしよ……。
「神山さーん! 神山さーん!」
こんな時にっ……。ご本人様が……。
「神山さーん! 神山さーん!」
「は、はーい……、ここにいるよー……」
「神山さん! 神山さんって、神様信じますか!?」
え? あなたから? あなたから宗教勧誘ですか?
神様信じるか信じないかで言ったら、そりゃ信じるよ。だって、俺元神様だもん。
凪沙ちゃんも、神様に神様信じますか? って聞いてるなんて夢にも思わないだろうな……。
「神様……。うん、いると思うよ。今目の前に……じゃなかった、頑張っている人の頭上とかに」
「じゃあ私の頑張り、神様が見てくれたんですかね!? この間描いた風景画が、ある絵本の表紙を飾ることになったんですー!」
「へー! それは凄いね! 着々と画家への夢へ近づいているじゃない!」
「そこまで有名な絵本ではないのですが、それでもすごく有り難くて! 学校の先生や友達も褒めてくれましたー! 後でお姉ちゃんにも報告します!」
「お姉さん、凄く喜んでくれるんじゃないかな! 凪沙ちゃんに夢を託してたんだし!」
「もしかしたら、神山さんが神様なのかもしれませんねぇ! ゴミ箱の中から神山さんを発掘していなかったら、このことも無かったかもしれません!」
うん、それはたぶん気のせいだと思うけど……。けれど、まぁ凪沙ちゃん、努力してたからなぁ。間違いなく、凪沙ちゃんの努力の結晶だよ。
「あと、みんなからは絵に優しい性格が出ていて素敵だと言われました。すごく嬉しかったです。思えば、特に性格面で得したことはなく、むしろ苦労してきたんですよ。お節介っていうのかなぁ? そのせいで散々損してきましたから……」
優しい性格か……。本当に凪沙ちゃんはそれが当てはまるからなぁ。それで散々損してきたのか。
あ、じゃあ天界の時の記憶もあるのかな? 天界では苦労とか損どころか、クビになってるから……。
……聞くとしたら今だろうか?
「ねぇ、凪沙ちゃん?」
「はい? 何でしょうか? サインなら、まだ練習していないので完成したらしてあげますよ!」
「あ。いや、ちがっ……」
「でもその前に、サインの価値が高まるようにもっと頑張らなきゃですね! また神鳴山に絵を描きに行きましょう!」
「あ、あの……凪沙ちゃん?」
「ん? どうしたんですか?」
「凪沙ちゃんは神様の存在って信じる?」
「逆質問ですね!? 私は信じますよー! 神様は平等なんです。頑張ってる人もそうじゃない人も、平等に見てくれているんですよ。そして、頑張りが大きい人に、ちょっとしたご褒美をあげるんです。神様は人間が乗り越えられない試練も与えるなんて言いますが、そんなことはありません。ちゃんと乗り越えられる試練しか与えません。神様にも情はありますからねぇ!」
神様にも情はある。情がありまくった凪沙ちゃんだからこその発言だろう。これは今、聞くしかない。
「変なことを聞くようで申し訳ないんだけどね……?」
「変なこと? 何でしょうか?」
「……凪沙ちゃん、もしかして天界の元女神だった?」
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