49 / 60
神様と女神②
しおりを挟む
言ってしまった……。さてどう転ぶ?
もしそうである場合、そんなわけないじゃないですかと否定してくるに違いない。なにしろ、いきなり「女神かい? 」と聞いているのだ。変態である。
そして、怖いのはそうでない場合。こちらもまた、何言ってるんですか? と不審がられるに違いない。変態である。
うーん、どっちにしても変態か……。
聞くのはちょっと時期尚早だったか……?
「……神山さん、なぜそれを……?」
めちゃくちゃあっさり白状した。凪沙ちゃん、優しいだけじゃなく、嘘も付けないのか……?
「あ、いや……。実はさ……」
口ごもっていても仕方が無いため、俺の考えを凪沙ちゃんに全て話さなければ。しかし、まずはこれを言わなければならないだろう……。
「僕は天界の元神様なんだ」
「そうだったんですか!? 全く気が付きませんでした! なんであの時、ゴミ箱なんかに入ってたんですか?」
「それはね……」
ここから、俺が下界に落とされた理由から、トラックの軌道の件までの全てを凪沙ちゃんに話した。
凪沙ちゃんは何か悟ったような、しかし終始黙って俺の話を聞いてくれた。
「……なるほど。その神楽さんという方に騙されて、代わりに神山さんが下界に落とされたんですね。それで今天界に戻るために情報を集めていたと。しかし、トラックの軌道の件だけは食い違いが生じたから、それを解消するための証人が必要になった。その証人が私というわけですね」
「そうなんだ。それで、トラックの軌道を左側に変えたのは凪沙ちゃんなんだね?」
「その通りです。天界でそんなことが起きていたなんて全く知らなかったのですが、私はとにかく自分と唯斗くんを守らなければならなかったので、あの時はトラックの軌道を変えることに必死でした。だから向きまでは意識していません。けど、今思い出してみると、確かに左側に軌道を変えていますね」
「やっと全てが揃った! 凪沙ちゃんを証人として天界の裁判所に出向けば神楽に勝てる! 凪沙ちゃん、すこし協力してくれないかい? 時間は取らせないよ。ただ少しの間証人として天界に着いて来てくれるだけでいいんだ!」
「けど、天界にはどうやって行くんですか? 手段がありませんよ?」
「勘解由小路さんを知ってるよね? 花串の常連さんの。実はあの方も、天界の元神様なんだ。本当の名前は勘解由小路さんじゃなくて神村さんなんだ。しかも、神村さんは元天界の裁判官なんだって。こんなに心強い味方いないよ。神村さんが天界と通信する手段を持っているから、天界に行く手続きなんかもやってくれるかもしれない!」
「そうなんですか!? それも全然気が付かなかったです……。私たちが気付いていないだけで、実は周りには元神様や女神がたくさんいるのかもしれませんね!」
「俺だって、神村さんはもちろん、凪沙ちゃんが元女神だっていうことも全く気が付かなかった。けど、なにはともあれこれで天界に戻れる情報が集まった! 凪沙ちゃん、協力してくれるかい?」
「神山さんは……その……、この街に留まっておくという選択肢はないですか……?」
痛い所を突かれてしまった。この街に愛着が湧いた、とまではいかないが、正直留まってもいいなと思ったことは何度もある。しかもその想いは少しずつ大きくなっていった。
しかし、俺は天界に戻りたい。天界で余生を過ごしたい。なにより、不本意な形で下界に落とされたのが納得行かない。
ごめんよ凪沙ちゃん……。
「鳥居家のみんなにはかなりお世話になったし、この街のみんなも優しいから凄く暮らしやすかった。でも、僕は天界に戻るために情報を集めてきたんだ。神楽にもガツンと言いたいしね。だから、申し訳ないけどこの街には留まれないかなぁ」
「そうですか……。でも、神山さんにこの街を気に入ってもらえて嬉しいです! といっても、実は私も天界に落とされてから住み始めたので、ここで生まれ育ったわけではないんですけどね」
「でも、凪沙ちゃんはクビになった俺とは違って、ちゃんと設定をしてもらった上で天界に降ろしてもらってるんだよね? 」
「そうです。私はクビになる前に自分から天界を降りると申し出たので、一応この町で生まれ育ったという設定にしてもらった上でこの街に降ろしてもらっています。だから、私は生まれも育ちもこの街ということになっているので、ここは紛れもなく私の生まれ故郷なんです! 鳥居家のみんなには、無理やり私の思い出が組み込まれた形になって申し訳ないと思ってるけど、それでも鳥居家は私が生まれ育った大切な家族なんです!!」
「そうなんだ……。凪沙ちゃんは本当に鳥居家とこの街が好きなんだね! 鳥居家での思い出が本物なのか、作り物なのかなんて関係ない。凪沙ちゃんは紛れもなく、鳥居家の一員だよ。そして、期間は短かったけど僕も鳥居家とこの街が大好きだ。だから凪沙ちゃんは僕の分まで、これからも鳥居家の一員として、この街の住人として、これからも楽しく過ごしてほしい。僕の分まで過ごしてくれるかい?」
「もちろん、そのつもりです! でも……」
「ありがとう! 本当に凪沙ちゃんは優しいね。それじゃあ神村さんに連絡しないと」
凪沙ちゃんが何か言いかけた気がしたが、俺は一刻も早く神村さんに連絡しなければならない。良かった! 凪沙ちゃんの理解が早くて!
神村さんは毎日のように花串へ顔を出してくれていたため、すぐに凪沙ちゃんの件を伝えることが出来た。
「なんと! 凪沙ちゃんも元女神だったか! 私も全く気が付かなかった。凪沙ちゃんがトラックの軌道を左側に変えた張本人だったとはね。では、明日私の家に来てくれないか? また天界と通信を繋いであげよう」
「ありがとうございます! 凪沙ちゃんに明日用事がなければ一緒に行きます。また連絡しますね」
今度こそ、今度こそだ。神楽よ。首を洗って待っとけよ。
「凪沙ちゃん。明日、少しだけ時間をくれないかい? 神村さんが天界に通信を繋いでくれるみたいなんだ」
「どうしても天界に戻りたいのですね……? ……わかりました。準備しておきます」
「準備って、そんな大掛かりなことではないよ。ただ証人としてそこにいてくれたらいいんだから。あ、でも天界に行くことになるかもしれないのか。久しぶりの天界だなぁ」
「……れないんです」
「え?」
凪沙ちゃんがなにか言った気がしたが、天界に戻れるかもしれないという興奮でよく聞こえなかった。
すると、凪沙ちゃんは大きく息を吸って、一気に話し出した。
「証人として一旦天界に戻ると、もう二度と下界の同じ場所には戻れないんです!」
「……え?」
「だから! 天界で証人としての役目を終えて再び下界に戻るときは、鳥居家の一員としてはもちろん、もう二度とこの街の住人には戻れなくなるんです!!」
「……えぇぇぇ!?」
もしそうである場合、そんなわけないじゃないですかと否定してくるに違いない。なにしろ、いきなり「女神かい? 」と聞いているのだ。変態である。
そして、怖いのはそうでない場合。こちらもまた、何言ってるんですか? と不審がられるに違いない。変態である。
うーん、どっちにしても変態か……。
聞くのはちょっと時期尚早だったか……?
「……神山さん、なぜそれを……?」
めちゃくちゃあっさり白状した。凪沙ちゃん、優しいだけじゃなく、嘘も付けないのか……?
「あ、いや……。実はさ……」
口ごもっていても仕方が無いため、俺の考えを凪沙ちゃんに全て話さなければ。しかし、まずはこれを言わなければならないだろう……。
「僕は天界の元神様なんだ」
「そうだったんですか!? 全く気が付きませんでした! なんであの時、ゴミ箱なんかに入ってたんですか?」
「それはね……」
ここから、俺が下界に落とされた理由から、トラックの軌道の件までの全てを凪沙ちゃんに話した。
凪沙ちゃんは何か悟ったような、しかし終始黙って俺の話を聞いてくれた。
「……なるほど。その神楽さんという方に騙されて、代わりに神山さんが下界に落とされたんですね。それで今天界に戻るために情報を集めていたと。しかし、トラックの軌道の件だけは食い違いが生じたから、それを解消するための証人が必要になった。その証人が私というわけですね」
「そうなんだ。それで、トラックの軌道を左側に変えたのは凪沙ちゃんなんだね?」
「その通りです。天界でそんなことが起きていたなんて全く知らなかったのですが、私はとにかく自分と唯斗くんを守らなければならなかったので、あの時はトラックの軌道を変えることに必死でした。だから向きまでは意識していません。けど、今思い出してみると、確かに左側に軌道を変えていますね」
「やっと全てが揃った! 凪沙ちゃんを証人として天界の裁判所に出向けば神楽に勝てる! 凪沙ちゃん、すこし協力してくれないかい? 時間は取らせないよ。ただ少しの間証人として天界に着いて来てくれるだけでいいんだ!」
「けど、天界にはどうやって行くんですか? 手段がありませんよ?」
「勘解由小路さんを知ってるよね? 花串の常連さんの。実はあの方も、天界の元神様なんだ。本当の名前は勘解由小路さんじゃなくて神村さんなんだ。しかも、神村さんは元天界の裁判官なんだって。こんなに心強い味方いないよ。神村さんが天界と通信する手段を持っているから、天界に行く手続きなんかもやってくれるかもしれない!」
「そうなんですか!? それも全然気が付かなかったです……。私たちが気付いていないだけで、実は周りには元神様や女神がたくさんいるのかもしれませんね!」
「俺だって、神村さんはもちろん、凪沙ちゃんが元女神だっていうことも全く気が付かなかった。けど、なにはともあれこれで天界に戻れる情報が集まった! 凪沙ちゃん、協力してくれるかい?」
「神山さんは……その……、この街に留まっておくという選択肢はないですか……?」
痛い所を突かれてしまった。この街に愛着が湧いた、とまではいかないが、正直留まってもいいなと思ったことは何度もある。しかもその想いは少しずつ大きくなっていった。
しかし、俺は天界に戻りたい。天界で余生を過ごしたい。なにより、不本意な形で下界に落とされたのが納得行かない。
ごめんよ凪沙ちゃん……。
「鳥居家のみんなにはかなりお世話になったし、この街のみんなも優しいから凄く暮らしやすかった。でも、僕は天界に戻るために情報を集めてきたんだ。神楽にもガツンと言いたいしね。だから、申し訳ないけどこの街には留まれないかなぁ」
「そうですか……。でも、神山さんにこの街を気に入ってもらえて嬉しいです! といっても、実は私も天界に落とされてから住み始めたので、ここで生まれ育ったわけではないんですけどね」
「でも、凪沙ちゃんはクビになった俺とは違って、ちゃんと設定をしてもらった上で天界に降ろしてもらってるんだよね? 」
「そうです。私はクビになる前に自分から天界を降りると申し出たので、一応この町で生まれ育ったという設定にしてもらった上でこの街に降ろしてもらっています。だから、私は生まれも育ちもこの街ということになっているので、ここは紛れもなく私の生まれ故郷なんです! 鳥居家のみんなには、無理やり私の思い出が組み込まれた形になって申し訳ないと思ってるけど、それでも鳥居家は私が生まれ育った大切な家族なんです!!」
「そうなんだ……。凪沙ちゃんは本当に鳥居家とこの街が好きなんだね! 鳥居家での思い出が本物なのか、作り物なのかなんて関係ない。凪沙ちゃんは紛れもなく、鳥居家の一員だよ。そして、期間は短かったけど僕も鳥居家とこの街が大好きだ。だから凪沙ちゃんは僕の分まで、これからも鳥居家の一員として、この街の住人として、これからも楽しく過ごしてほしい。僕の分まで過ごしてくれるかい?」
「もちろん、そのつもりです! でも……」
「ありがとう! 本当に凪沙ちゃんは優しいね。それじゃあ神村さんに連絡しないと」
凪沙ちゃんが何か言いかけた気がしたが、俺は一刻も早く神村さんに連絡しなければならない。良かった! 凪沙ちゃんの理解が早くて!
神村さんは毎日のように花串へ顔を出してくれていたため、すぐに凪沙ちゃんの件を伝えることが出来た。
「なんと! 凪沙ちゃんも元女神だったか! 私も全く気が付かなかった。凪沙ちゃんがトラックの軌道を左側に変えた張本人だったとはね。では、明日私の家に来てくれないか? また天界と通信を繋いであげよう」
「ありがとうございます! 凪沙ちゃんに明日用事がなければ一緒に行きます。また連絡しますね」
今度こそ、今度こそだ。神楽よ。首を洗って待っとけよ。
「凪沙ちゃん。明日、少しだけ時間をくれないかい? 神村さんが天界に通信を繋いでくれるみたいなんだ」
「どうしても天界に戻りたいのですね……? ……わかりました。準備しておきます」
「準備って、そんな大掛かりなことではないよ。ただ証人としてそこにいてくれたらいいんだから。あ、でも天界に行くことになるかもしれないのか。久しぶりの天界だなぁ」
「……れないんです」
「え?」
凪沙ちゃんがなにか言った気がしたが、天界に戻れるかもしれないという興奮でよく聞こえなかった。
すると、凪沙ちゃんは大きく息を吸って、一気に話し出した。
「証人として一旦天界に戻ると、もう二度と下界の同じ場所には戻れないんです!」
「……え?」
「だから! 天界で証人としての役目を終えて再び下界に戻るときは、鳥居家の一員としてはもちろん、もう二度とこの街の住人には戻れなくなるんです!!」
「……えぇぇぇ!?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる