下界の神様奮闘記

LUCA

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神様と女神⑤

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「神山さん。おかえりなさい。あら?凪沙と一緒に出掛けていたんじゃなかったの?」

俺は天界に戻るか、それとも下界に残るかを決めきれないまま、鳥居家に帰ってきた。改めて凪沙ちゃんと話し合ってから決めよう。そう考えて凪沙ちゃんを探していると、お母さんから話しかけられた。

「ただいま帰りました。いえ、僕は一人で出掛けていましたけど、どうかしたんですか?」

「もう日も暮れてきたのに、まだ凪沙が帰ってきてないのよ。今日は友達の家に泊まるなんて話も聞いてないし……。車を借りるって言って出掛けて行ったんだけど、あの子は方向音痴だし、車で出掛けてもこの街から出ることは滅多にないから、そんなに遠くには行ってないと思うのよね」

「あまりにも遅くなると心配ですね……。遅くなるという連絡も来ないんですか?」

「メッセージを送信しても返信がないのよ。電話を掛けても繋がらないみたいなの。電源が切れてるのかしら……?まぁ年頃の娘だからそんなに心配はいらないと思うけど、念の為神山さんも気にかけておいてくれる?」

「分かりました。僕からも連絡してみます」

部屋に戻って、凪沙ちゃんの番号に電話を掛けてみる。しばらくして「お掛けになった電話は、現在電源が入っていないか、電波の届かないところに……」という音声が聞こえてきた。うーん、たしかにこれは心配だ。

凪沙ちゃんはどこに行ったのだろう?今の凪沙ちゃんならどこへ行く?

車を借りてるって言ってたな。今まで凪沙ちゃんの車で行った所って、そんなに遠くはなかった気がする。たしかに、そんなに遠くには行ってないかもしれない。

凪沙ちゃんは優しい。それも、超がつくほど。そんな凪沙ちゃんのことだ。俺に協力して天界に戻ることも検討してくれているのだろう。しかし、凪沙ちゃんは下界、とりわけこの街、この家族のことを愛している。それが単なる設定としての家族だとしても。頭がちぎれるくらい考えてくれてるに違いない。葛藤しているに違いない。

そんな凪沙ちゃんなら、どこへ行く?この街のどこへ?大好きなこの街のどこへ行くだろうか。

大好きなこの街……、大好きなこの街……。

大好きなこの街……、を一望できる場所……。もしかして神鳴山か……?神鳴山の山頂かもしれない!

凪沙ちゃんは今まさに葛藤している。大好きなこの街を離れるべきかどうか。もし離れるという決断をするなら、せめて最後に、街を一望出来る神鳴山の山頂からその景色を目に焼き付けておきたい。そう考えたのかもしれない。

連絡手段が断たれてしまっている今は、本当に神鳴山にいるかどうかを確認しようがない。となると、俺が神鳴山へ行って確かめるしかないか。

駅前ならタクシーが止まっている。まずはそこから神鳴山の麓まで送ってもらおう。そして、神鳴山の標高は500メートルもなかったはずだから、「探索」の能力を使える。麓から「探索」の能力を使って凪沙ちゃんの目線になり、もし凪沙ちゃんがまだ山頂にいるのであれば、凪沙ちゃんの目線を通じてこの街の景色が見えるはず。

お母さんに断りを入れて家を飛び出し、最寄りの駅に向かって走り出す。あまりに遅くなると心配だな。まぁ、最寄りの駅なら走って20分くらいで着くだろう。普通なら……。

5分で息が上がってしまった。いや、息が上がるなんてレベルではないな。過呼吸になるくらい、呼吸している。歳を重ねたとはいえ、こんなに走れなくなっているなんて……。

「はぁ、はぁ。こ、これじゃ20分どころか、30分以上かかっちゃうな。うーん、仕方ない。あの能力を使うか」

走ると息が上がってすぐ動けなくなる。じゃあ走らなければいい。

神の能力「浮遊」。この力は、その名の通り身体を浮かせることが出来るという、非常に神様らしい能力。この能力使うの久し振りだな。

俺は早速「浮遊」を使う。すると、身体が少しずつ軽くなっていく感じがする。しかし、ここは下界。浮き過ぎると不自然に見えてしまって怪しまれるので、数センチ浮いた所で停止出来るように調整する。この調整は神様経験豊富だから出来るのであって、誰でも出来ることではない。神楽に見せつけてやりたいな。

「よし、これで移動すれば疲れないな!一刻も早く神鳴山へ……、あっ……」

重要なことに気づいてしまった。「浮遊」はあくまで浮くことの出来る能力。移動は出来るには出来るのだが、いかんせん非常に遅い。うーん、どれくらいだろう?老夫婦の散歩くらいの速さくらいかしら。

浮遊状態で移動するには、移動する方向に重心を傾けないといけない。まるであの有名な電動立ち乗り二輪車のようだ。なんなら、その電動立ち乗り二輪車の方が速いのではないか……?

走れば息が上がってすぐ動けなくなり、30分以上かかる。歩けば普通に30分以上かかる。

浮遊移動によって最寄りの駅に着いた頃には、40分以上かかっていた。

「歩けばよかった……」
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