56 / 60
さようなら天界➁
しおりを挟む
神村さんがスマホを取り出す。スマホという下界ではありふれた通信手段が、この場においては非常に特殊性を持つことになる。スマホによって、下界から天界へ通信を繋ぐのだ。下界の誰も、スマホを使って天界と通信しているとは思わないであろう。
画面を数回タップした神村さんが、スマホを顔の前に掲げる。数秒待った後、話しだした。
「あー、もしもし神村だか、神谷くんかね。今時間は大丈夫かな?そうか大丈夫か、時間を取って済まないね。神楽くんはそばにいるのかい?そうか、わかった。では、神山くんに取り次ごうと思う」
いよいよだ。これが、正式に天界と通信することが出来る最後の機会。さっき神村さんには、伝えたいことはまとまっていると言ったが、実は正直何も考えてきてはいなかった。考えをまとめてきたところで、きっと全てを上手く話すことはできないだろうし、なによりもう天界にほとんど未練がなかったからだ。
何かを伝える、というよりは、最後に神楽と話をしておきたかった。それと、さっき神村さんが言った「天界で凪沙ちゃんが接してきた神様や女神が、案外俺の近くにいたのかもしれない」という発見。あれも気になるなぁ。
「もしもし、神山だけど。神楽か?」
「……はい、神楽ですけど?もしかして、証人を見つけてきたんですか?」
「とぼけても無駄だぞ。お前、上から見てたから分かるだろ。あぁ、証人は見つかったよ。その証人の子が、意図的にトラックの軌道を左側に変えていた。その子は実は天界の元女神だったんだ。まぁ、これもお前は知っていただろうけどな。さて、これで俺とお前の食い違いも解消して、お前を下界に引きずり下ろす証拠も揃った。今の気持ちはどうだ?」
「……」
「そうだよな、何も言えないよな。お前が考えに考えて、その上で実行した計画が全て、この俺に暴かれてしまったんだから。これでいつでもお前を下界に引きずり下ろすことができる。だが、その前に少し話をしようじゃないか」
「話?今更なんの話をするのです?」
「まぁ、ただの世間話だ。そう身構えることはないよ。まずはお前、本当は九州地方じゃなくて、関東地方の区域担当神を任される予定だったんだよな?」
「……はあ、そうですが?なぜ今更それを……、まぁいいでしょう。計画が台無しになった今、何を話しても仕方がないですからね。聞かれたことの範囲内だったら何でも話しますよ。たしかに私は関東地方の区域担当神を任される予定でした。私は元々、下界でいうところの関東地方にあたる区域の天界で誕生しましたからね」
「あとお前、絵が上手だったよな?」
「……?意図がよく分からないですね。たしかに、私は絵を描くことが趣味ですが、上手かどうかは自分では分かりませんね。それがなにか?」
「お前の絵は上手いよ。ちょっと漫画風のタッチが、よりその上手さを引き立てている。まるで誰かの絵を見てるみたいだ」
「結局、何が言いたいんです?」
「お前、本当は俺の質問の意図くらい分かってるんだろう?今回俺が見つけてきた証人のことも、お前はよく知ってるはずだ」
「さぁ?何のことでしょう?」
「いい加減、とぼけてるのはやめにしないか?さっきお前が言ってたじゃないか。計画が台無しになった今、何を話しても仕方がないって。お前は俺が見つけてきた証人の子と、何らかの接点があるんだろう?」
「……。まったく、どこまで知っているんですかあなたは。そうです、その通りですよ。私はあなたが見つけてきた証人、凪沙さんのことをよく知っている」
やっぱりそうだったか。凪沙ちゃんは関東地方の区域担当神だった。ならば、元々関東地方にあたる区域で誕生した神楽も、凪沙ちゃんと接していた可能性は高い。そして、神楽は絵が上手だった。しかも凪沙ちゃんと同じ漫画風のタッチ。絵の特徴もよく似ていた。何らかの理由があって、凪沙ちゃんが神楽に絵を教えたのだろう。
「あの人は私の恩人ですからね」
「凪沙ちゃんが神楽の恩人?」
画面を数回タップした神村さんが、スマホを顔の前に掲げる。数秒待った後、話しだした。
「あー、もしもし神村だか、神谷くんかね。今時間は大丈夫かな?そうか大丈夫か、時間を取って済まないね。神楽くんはそばにいるのかい?そうか、わかった。では、神山くんに取り次ごうと思う」
いよいよだ。これが、正式に天界と通信することが出来る最後の機会。さっき神村さんには、伝えたいことはまとまっていると言ったが、実は正直何も考えてきてはいなかった。考えをまとめてきたところで、きっと全てを上手く話すことはできないだろうし、なによりもう天界にほとんど未練がなかったからだ。
何かを伝える、というよりは、最後に神楽と話をしておきたかった。それと、さっき神村さんが言った「天界で凪沙ちゃんが接してきた神様や女神が、案外俺の近くにいたのかもしれない」という発見。あれも気になるなぁ。
「もしもし、神山だけど。神楽か?」
「……はい、神楽ですけど?もしかして、証人を見つけてきたんですか?」
「とぼけても無駄だぞ。お前、上から見てたから分かるだろ。あぁ、証人は見つかったよ。その証人の子が、意図的にトラックの軌道を左側に変えていた。その子は実は天界の元女神だったんだ。まぁ、これもお前は知っていただろうけどな。さて、これで俺とお前の食い違いも解消して、お前を下界に引きずり下ろす証拠も揃った。今の気持ちはどうだ?」
「……」
「そうだよな、何も言えないよな。お前が考えに考えて、その上で実行した計画が全て、この俺に暴かれてしまったんだから。これでいつでもお前を下界に引きずり下ろすことができる。だが、その前に少し話をしようじゃないか」
「話?今更なんの話をするのです?」
「まぁ、ただの世間話だ。そう身構えることはないよ。まずはお前、本当は九州地方じゃなくて、関東地方の区域担当神を任される予定だったんだよな?」
「……はあ、そうですが?なぜ今更それを……、まぁいいでしょう。計画が台無しになった今、何を話しても仕方がないですからね。聞かれたことの範囲内だったら何でも話しますよ。たしかに私は関東地方の区域担当神を任される予定でした。私は元々、下界でいうところの関東地方にあたる区域の天界で誕生しましたからね」
「あとお前、絵が上手だったよな?」
「……?意図がよく分からないですね。たしかに、私は絵を描くことが趣味ですが、上手かどうかは自分では分かりませんね。それがなにか?」
「お前の絵は上手いよ。ちょっと漫画風のタッチが、よりその上手さを引き立てている。まるで誰かの絵を見てるみたいだ」
「結局、何が言いたいんです?」
「お前、本当は俺の質問の意図くらい分かってるんだろう?今回俺が見つけてきた証人のことも、お前はよく知ってるはずだ」
「さぁ?何のことでしょう?」
「いい加減、とぼけてるのはやめにしないか?さっきお前が言ってたじゃないか。計画が台無しになった今、何を話しても仕方がないって。お前は俺が見つけてきた証人の子と、何らかの接点があるんだろう?」
「……。まったく、どこまで知っているんですかあなたは。そうです、その通りですよ。私はあなたが見つけてきた証人、凪沙さんのことをよく知っている」
やっぱりそうだったか。凪沙ちゃんは関東地方の区域担当神だった。ならば、元々関東地方にあたる区域で誕生した神楽も、凪沙ちゃんと接していた可能性は高い。そして、神楽は絵が上手だった。しかも凪沙ちゃんと同じ漫画風のタッチ。絵の特徴もよく似ていた。何らかの理由があって、凪沙ちゃんが神楽に絵を教えたのだろう。
「あの人は私の恩人ですからね」
「凪沙ちゃんが神楽の恩人?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる