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さようなら天界➂
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「そうです。私は凪沙さんに救われたんです。神山さんも既に感じているかもしれませんが、私はこの通り素直じゃなく、気難しい性格です。その性格からか、幼い頃から周りから孤立した生活を送っていました。気軽に話せる相手なんていない。しかし、私はそれでもいいと思っていました。そんな私が下界年齢でいうと10歳頃のある日、広場で絵を描いていた凪沙さんを離れた所からなんとなく見ていると、凪沙さんは一人で孤立している私を見かねたのか、一緒に描かないかと誘ってくれました。優しい凪沙さんの性格ゆえ、孤立していた私を放っておけなかったんでしょうね。私も素直ではないので、決して口には出さなかったのですが、非常に嬉しかったのを覚えています。あんな気持ちになったのは初めてかもしれません。それから何度か絵を教えて貰ううちに絵を描く楽しさを覚え、また私が描いた絵に興味を持ってくれる人も現れ、それに伴って少しずつ少しずつ孤立も解消していきました。社交的になった、とまではいかなかったものの、もし凪沙さんがいなかったら私は孤立したままで、その後の神生」もどうなっていたか分かりません」
そうだったのか。神楽も幼い頃は苦労してたんだな。俺にしたことは許せないけど、そんな事情があったとは。しかし、やっぱり凪沙ちゃんは優しいなぁ。
「凪沙さんは天界においても、区域担当神の業務の傍ら、画家になることを夢見ていました。しかし、区域担当神の業務では情に流されまくるし、それ以外のプライベートの時間においても自分のことは二の次に、周りに気を配ることに多くの時間を割いていました。これでは画家になることはおろか、絵を描く暇も無い。だから私は、自分を救ってくれたせめてもの恩返しとして、凪沙さんの担当する区域の区域担当神になって凪沙さんをサポートし、それによって少しでも絵を描く時間が増えればと考えました。しかし……」
「凪沙ちゃんは下界に降りてしまったと」
「そうです。最初は慣れない下界に降りることで、ますます画家から遠ざかるのではないかと思いました。しかし、下界には天界には無い、芸術などを学ぶ専門の学校がある。もちろん、区域担当神の業務も無いので思う存分学校で学び、また絵の練習に時間を割くことができ、結果として夢だった画家に近づくことが出来る」
「それでお前は、区域担当神として凪沙ちゃんのサポートは出来なくなってしまったが、せめて凪沙ちゃんが画家になるまでを見守りたいという理由で、わざわざ関東地方から九州地方の区域担当神になるべく、俺の所に来たってわけだな?」
「その通りです。しかし、いくら環境が整っているとはいえ、凪沙さんは慣れない下界で過ごすことになる、だから出来ることなら間接的とはいえ僕が天界からサポートしてあげたい。ただ、天界においては業務においては情に流されはいけないので、それは難しい。だったら、私も下界に降りれば良いと考えました」
「結果として、なぜ下界に降りなかったんだ?」
「下界において、凪沙さんを遠くから見守ることが出来るなら良いんですが、私は私で下界の生活をしていかなければならないので、ずっと見守ることには限界があります。そしてなにより、同じ下界の、しかも凪沙さんに近い所にいることで、間接的に見守ることがもどかしくなって思わず凪沙さんに接触してしまうかもしれません。そうなると……」
「凪沙ちゃんの優しい性格上、一度は天界で世話をした神楽が下界にいることが分かれば、天界にいる時と同じように神楽の心配や世話にばかり時間を割いて、結果として画家になる夢を邪魔してしまうかもしれない。だから間接的に俺を凪沙ちゃんのサポート役にするために俺を下界へ落とす計画した、ということだな?」
「その通りです。悔しいですが、全て正解です」
「けれど、何で俺だったんだ? お前も上から見ていたから分かってると思うけど、俺も散々凪沙ちゃんに迷惑かけてきたんだぞ?」
「それは、あなたが一番手っ取り早かったんです」
「……は?」
「あなたは九州地方の区域担当神だった。しかも、凪沙さんが住んでいる区域に非常に近い場所の。他にも近い区域はありましたが、一番最初に目に付いたのが神山さんだったんです」
「急にドライだな、おい……」
「なにはともあれ、まもなく私は下界に引きずり下ろされるでしょう。おそらく、ペナルティを理由に落とされるので、凪沙さんと同じ地域に落ちることになります。天界よりも見守ることは難しくなりますが、せいぜい凪沙さんにバレない範囲でサポートしようとは思います。神山さんにも迷惑をおかけしましたね。天界でゆっくり過ごされてください。申し訳ありませんでした」
「まぁ待て。まだ話は終わってないぞ」
「もう話すことは何も無いでしょう? これ以上何を話すんです?」
「いいか? よく聞けよ。これから話すことが、お前に伝える最後の話だ」
「……何ですか?」
「俺はもう天界には戻らないよ」
そうだったのか。神楽も幼い頃は苦労してたんだな。俺にしたことは許せないけど、そんな事情があったとは。しかし、やっぱり凪沙ちゃんは優しいなぁ。
「凪沙さんは天界においても、区域担当神の業務の傍ら、画家になることを夢見ていました。しかし、区域担当神の業務では情に流されまくるし、それ以外のプライベートの時間においても自分のことは二の次に、周りに気を配ることに多くの時間を割いていました。これでは画家になることはおろか、絵を描く暇も無い。だから私は、自分を救ってくれたせめてもの恩返しとして、凪沙さんの担当する区域の区域担当神になって凪沙さんをサポートし、それによって少しでも絵を描く時間が増えればと考えました。しかし……」
「凪沙ちゃんは下界に降りてしまったと」
「そうです。最初は慣れない下界に降りることで、ますます画家から遠ざかるのではないかと思いました。しかし、下界には天界には無い、芸術などを学ぶ専門の学校がある。もちろん、区域担当神の業務も無いので思う存分学校で学び、また絵の練習に時間を割くことができ、結果として夢だった画家に近づくことが出来る」
「それでお前は、区域担当神として凪沙ちゃんのサポートは出来なくなってしまったが、せめて凪沙ちゃんが画家になるまでを見守りたいという理由で、わざわざ関東地方から九州地方の区域担当神になるべく、俺の所に来たってわけだな?」
「その通りです。しかし、いくら環境が整っているとはいえ、凪沙さんは慣れない下界で過ごすことになる、だから出来ることなら間接的とはいえ僕が天界からサポートしてあげたい。ただ、天界においては業務においては情に流されはいけないので、それは難しい。だったら、私も下界に降りれば良いと考えました」
「結果として、なぜ下界に降りなかったんだ?」
「下界において、凪沙さんを遠くから見守ることが出来るなら良いんですが、私は私で下界の生活をしていかなければならないので、ずっと見守ることには限界があります。そしてなにより、同じ下界の、しかも凪沙さんに近い所にいることで、間接的に見守ることがもどかしくなって思わず凪沙さんに接触してしまうかもしれません。そうなると……」
「凪沙ちゃんの優しい性格上、一度は天界で世話をした神楽が下界にいることが分かれば、天界にいる時と同じように神楽の心配や世話にばかり時間を割いて、結果として画家になる夢を邪魔してしまうかもしれない。だから間接的に俺を凪沙ちゃんのサポート役にするために俺を下界へ落とす計画した、ということだな?」
「その通りです。悔しいですが、全て正解です」
「けれど、何で俺だったんだ? お前も上から見ていたから分かってると思うけど、俺も散々凪沙ちゃんに迷惑かけてきたんだぞ?」
「それは、あなたが一番手っ取り早かったんです」
「……は?」
「あなたは九州地方の区域担当神だった。しかも、凪沙さんが住んでいる区域に非常に近い場所の。他にも近い区域はありましたが、一番最初に目に付いたのが神山さんだったんです」
「急にドライだな、おい……」
「なにはともあれ、まもなく私は下界に引きずり下ろされるでしょう。おそらく、ペナルティを理由に落とされるので、凪沙さんと同じ地域に落ちることになります。天界よりも見守ることは難しくなりますが、せいぜい凪沙さんにバレない範囲でサポートしようとは思います。神山さんにも迷惑をおかけしましたね。天界でゆっくり過ごされてください。申し訳ありませんでした」
「まぁ待て。まだ話は終わってないぞ」
「もう話すことは何も無いでしょう? これ以上何を話すんです?」
「いいか? よく聞けよ。これから話すことが、お前に伝える最後の話だ」
「……何ですか?」
「俺はもう天界には戻らないよ」
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