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第1章 冒険者へ
第1話 大飢饉
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僕の第2の人生は、片田舎の領主アルス・ド・レインの四男ライル・ド・レインとして生を受けた。
母は物心が付く前に亡くなった様で、幼少時僕は乳母のジェーンによって育てられた。
僕は7歳になり、前世の記憶が蘇ったのは一年前のことだった。
丁度子供がある程度人格を形成する時期であった為、前世の記憶も人格の崩壊に繋がることなく自然と受け入れる事が出来た。
前世の記憶が戻った事で判った事だが、父は領主としては優秀な部類に入る様だ。
王都からは随分と離れた領地を任されてはいるものの、領民からは良い領主として慕われているようだ。
兄弟は僕を含めて5人。長男アトス17歳。次男ケイル15歳。長女アリス12歳。三男ラトス12歳。四男が僕ライル7歳である。
長男のアトスと次男のケイルは王都で騎士として奉公している。
実家と王都の間は馬車で片道1週間。往復で2週間の距離があり、まとまった休暇以外は帰って来られないとのことだ。
長女アリスと、三男ラトスは双子の兄弟で、容姿は瓜二つなのだが、性格は正反対。しかし兄弟仲は良い。
僕は末の弟ということもあって家族から優しくされている。
最近の僕の日課は、家族に内緒で近くの森へ籠もっての魔法の練習と、近い将来の為の身体作りを続けている。なにしろ貴族の末っ子程気楽な立場はない。
家を継ぐこともなければこれといって親から期待されることもなく、自分の身の振り方に自由が効く。
僕は折角多くの特典を貰った第2の人生は、(剣と魔法の世界)を満喫する為に冒険者になろうと決めていた。
冒険者ギルドの登録は12歳から受けられる様なのでそれまではひたすら己を鍛えることを目標にしている。
とはいえ自領ではこれといった事件もなく鍛錬の成果を試すことも出来ずに最近少し自分の力量に不安があった。
時は流れて僕も11歳になった。
もう一年経てば冒険者ギルドに登録出来る。(家族にはまだ内緒ではあるが)
その年の夏、近年にない日照り続きで国内の作物が不作になり、食料難になった。
貴族は己の財力で必要以上に食料を買い漁り、王都においても市場に食料がほとんど出回らず、大飢饉となった。
日を増す毎に国内には餓死者が溢れ、国も対応に追われていた。
父の領地でも井戸が涸れ、川は涸れ細って、近くの湖の水量も見たことが無い程に減っていた。
「皆も苦しいだろうが耐えてくれ!
保証は出来ないが、この日照りもそう長くは続かないだろう」
父が領民の前で力説している。
「王様も国の対応に追われここの様な辺境にまではまだ目が届かないのも無理の無いことだと理解して欲しい」
「ですが領主様。
王様がこのような辺境のことを考えられる様になるまでに我々は餓死してしまいます」
領民の顔役達の中で比較的若い領民が父へ訴えた。
「判っている。国の対応が決定するまでは我が家に蓄えてある食料を皆へ配給する。
決して多くはないが、しばらくは我慢して貰いたい」
父はそう言うと領民の前で深く頭を下げた。
これには皆驚いたものの、父の発言に皆安堵した様だ。
「アルス様どうか頭を上げて下さい。
アルス様は他の領主様方と違って儂等のことを考えて下さる良い領主様だ!
他の地では餓死者が多く出ているが、ここではそんな奴は一人も出ちゃいない」
「そうだ!みんなアルス様を信じて頑張ろう」
「「おう」」
領民皆の心が一つになった瞬間だった。
母は物心が付く前に亡くなった様で、幼少時僕は乳母のジェーンによって育てられた。
僕は7歳になり、前世の記憶が蘇ったのは一年前のことだった。
丁度子供がある程度人格を形成する時期であった為、前世の記憶も人格の崩壊に繋がることなく自然と受け入れる事が出来た。
前世の記憶が戻った事で判った事だが、父は領主としては優秀な部類に入る様だ。
王都からは随分と離れた領地を任されてはいるものの、領民からは良い領主として慕われているようだ。
兄弟は僕を含めて5人。長男アトス17歳。次男ケイル15歳。長女アリス12歳。三男ラトス12歳。四男が僕ライル7歳である。
長男のアトスと次男のケイルは王都で騎士として奉公している。
実家と王都の間は馬車で片道1週間。往復で2週間の距離があり、まとまった休暇以外は帰って来られないとのことだ。
長女アリスと、三男ラトスは双子の兄弟で、容姿は瓜二つなのだが、性格は正反対。しかし兄弟仲は良い。
僕は末の弟ということもあって家族から優しくされている。
最近の僕の日課は、家族に内緒で近くの森へ籠もっての魔法の練習と、近い将来の為の身体作りを続けている。なにしろ貴族の末っ子程気楽な立場はない。
家を継ぐこともなければこれといって親から期待されることもなく、自分の身の振り方に自由が効く。
僕は折角多くの特典を貰った第2の人生は、(剣と魔法の世界)を満喫する為に冒険者になろうと決めていた。
冒険者ギルドの登録は12歳から受けられる様なのでそれまではひたすら己を鍛えることを目標にしている。
とはいえ自領ではこれといった事件もなく鍛錬の成果を試すことも出来ずに最近少し自分の力量に不安があった。
時は流れて僕も11歳になった。
もう一年経てば冒険者ギルドに登録出来る。(家族にはまだ内緒ではあるが)
その年の夏、近年にない日照り続きで国内の作物が不作になり、食料難になった。
貴族は己の財力で必要以上に食料を買い漁り、王都においても市場に食料がほとんど出回らず、大飢饉となった。
日を増す毎に国内には餓死者が溢れ、国も対応に追われていた。
父の領地でも井戸が涸れ、川は涸れ細って、近くの湖の水量も見たことが無い程に減っていた。
「皆も苦しいだろうが耐えてくれ!
保証は出来ないが、この日照りもそう長くは続かないだろう」
父が領民の前で力説している。
「王様も国の対応に追われここの様な辺境にまではまだ目が届かないのも無理の無いことだと理解して欲しい」
「ですが領主様。
王様がこのような辺境のことを考えられる様になるまでに我々は餓死してしまいます」
領民の顔役達の中で比較的若い領民が父へ訴えた。
「判っている。国の対応が決定するまでは我が家に蓄えてある食料を皆へ配給する。
決して多くはないが、しばらくは我慢して貰いたい」
父はそう言うと領民の前で深く頭を下げた。
これには皆驚いたものの、父の発言に皆安堵した様だ。
「アルス様どうか頭を上げて下さい。
アルス様は他の領主様方と違って儂等のことを考えて下さる良い領主様だ!
他の地では餓死者が多く出ているが、ここではそんな奴は一人も出ちゃいない」
「そうだ!みんなアルス様を信じて頑張ろう」
「「おう」」
領民皆の心が一つになった瞬間だった。
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