運命の輪

雪椿

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2.違う世界

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「ここどこ?」

 私のつぶやきに応えるように、今度は目の前に半透明の地図が表示されました。縮小も拡大もできるようです。よくインターネットで添付される地図のようでした。縮小してみると、ここは島のようでした。拡大してみるとやっぱり森の中。近くに建物がないか探してみると、”森の隠れ家”というところがありました。ここにいても仕方ないので、とりあえずその隠れ家に行ってみることにしました。天気がどうなるかもわからないし、ここに1人でいても埒が明きませんから。

 森の隠れ家は、意外に近くて安心しました。道も平坦だったので、比較的歩きやすかったのです。体力にはあまり自信がありませんから、助かりました。さて、森の隠れ家の外観は木でできたコテージのようです。広さもそこそこといった感じでした。ノックをしましたが、中からの反応はありませんでした。仕方ないので、声をかけながら扉を開きましたが、中は暗く人のいる気配は感じられませんでした。
 「暗い。明かりはないの?」そうつぶやくと、家の中に明かりがつきました。突然のことなので驚きましたが、周囲を見ると、さらに驚くことになってしまいました。壁一面に、本があるのです。床から天井まで、本棚の中に整然と並べられた本の数々。見るだけで、圧倒されてしまいます。
 つい嬉しくて、近くの1冊を手に取ってみると、国の創生神話のようでした。


 人は、自分たち以外の生き物を迫害し、追いつめた。まるで、己こそが神だと言わんばかりの所業をおこなった。その行動が神の怒りを買い、全てを無に帰された。けれど、人を愛していた女神が人に慈悲をかけ、この島を作った。初めに生まれたのは、自然だった。次に生まれたのは、魔力を身に宿すものだった。魔力によって自然は安定し、繁栄していった。そして最後に生まれたのが人だ。女神は、魔力を宿すものと人が共存できるように、島の中央に山を築いた。そして、その山に、魔力を宿すもの。その周辺に人が住むように掟を作った。こうしてこの島は、出来上がった。女神の慈悲の島”レイズ”。
 

 「女神の慈悲って…」
 あまりのことに現実感なんてありません。近くの机の上には、先ほどまで気づかなかった薄い冊子がありました。タイトルは、「この家に訪れる観察者へ」。取り合えず、見てみようと手に取りました。

 その冊子に書かれていたのは、今の私の状況でした。
1、私はどうやら違う次元に飛ばされたらしいこと。
2、この世界では、魔法が使えること。ただし、私の使える魔法は、私の想像力から来ること。
3、観察者というのは、この隠れ家を見つけ扉を開けられた者がなること。
4、この世界の常識・知識はこの隠れ家にある本を読めばわかること。
 
 要約するとこの4つが書かれていました。生活していく上で、この家にいる間は何の不自由もなさそうでした。
本の山の中で興味を覚えたタイトルから読みまくりました。
薬学・常識・言語などなど。前の住人は、どうやら薬を作って町に売りに行き生活しているようでした。簡単なガーデニングの本まであり、この家の周りの一部に畑を作って、薬草・野菜を作っていたようです。しかも、魔法で植物の管理ができるため大変効率がいいとか。この家は、本棚の奥に隠し扉があり、そちらが生活空間になっているようです。日当たりも良く、広いダイニングキッチンに、寝室。バスルームとトイレは、別の作りになっているようです。ダイニングには暖炉があり、そこでゆったりくつろげるようでした。気に行った本は、ここで読むこともできそうです。食材は、保管庫が別にあり、薬草と一緒に管理され、生ものは、魔法で腐らないように保存してありました。1か月は、何もしなくても十分暮らしていけるようです。
 本の中の情報から分かったことは、この世界では魔族と、人との交流は認められていないようでした。ごくまれに、魔族と人との間に子供が生まれることもあるそうですが、魔族からも人からも迫害を受けるとのことです。人は、自分と違うものを受け入れることができないのでしょう。この点に関しては、どこの世界でも同じなのかもしれません。魔族は、人より長い時間を生き、自分の種族を誇りに思っているそうです。そのため、女神の定めた山から下りることはめったになく、人との交流も避けるようになったのだとか。逆に人は、魔族よりも短命で、魔法も使えないために、魔族を敬う気持ちから、恐れそして迫害に至ったのだとか。つまり、今や魔族と人はお互いに不可侵という関係のようです。
食事の準備などは、慣れると大変簡単でした。火が欲しければ、魔法で出せばいいし、火力の調整もイメージでできるのでコツが分かれば簡単になりました。ベッドも大変寝心地がよく、安眠できました。日中は薬を作ったり、魔法の実験の繰り返しでした。周りの森や、畑で、木の実や野菜を収穫したりと何気に忙しく充実した毎日でした。お金に関しては、金貨・銀貨・銅貨があり、1金貨=100銀貨。1銀貨=100銅貨となるようです。物価としては、リンゴなどの果物が、1~5銅貨で1つ買えるようでした。よくその時の市場を調査して、薬の売買や買い物をするように注意書きがありました。おそらく、前に住人は、買い物で悔しい思いをしたのでしょう。注意書きに悔しさがにじみ出ていました。

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