上 下
3 / 18

悪役令嬢でも死んじゃだめぇ~!3

しおりを挟む
イザーク様が海外留学した後。
ハロル公爵家主催のお茶会(子供版)が、開催された。
それに参加した際、やっとアンジェリカ様とお会いできた。
その日は、多くの貴族令嬢が参加する素敵なガーデンパーティースタイルのお茶会であった。
お茶会の開始早々、皆、お目当ての高位貴族令嬢に下位貴族令嬢が挨拶にいく形式をとることになっている。
もちろん、分家として、私と一緒に参加したサラ義姉様は、一番にアンジェリカ様へご挨拶にうかがった。

「はじめまして、アンジェリカ様。
私はルキラ子爵家のエミリーと申します。
ずっと、お会いしたかったです」と親から仕込まれた挨拶をする。
アンジェリカ様は、挨拶中、ずっと無表情で、最後はため息をついて目をそらし、挨拶を返してくれなかった。

え、アンジェリカ様、クール過ぎでしょう………。

そんな塩対応でも、やっとアンジェリカ様にお会いできただけでも嬉しかった。
さすがは兄妹と思う位に、イザーク様の容姿にとても似ているアンジェリカ様に、期待が膨らんでいたから。
でも、私はすぐに打ちのめされた。

アンジェリカ様は、私の次に挨拶したサラお義姉様には、無表情ながらもきちんと挨拶を交わしていた。
そして、アンジェリカ様は、今後のアンジェリカ様の遊び相手には、私ではなくサラお義姉様を選んでしまった。
ここでいう遊び相手は、将来の側近、補佐候補になることがほとんどである。
ちなみに、サラお義姉様は、我が家の養女の一人で見た目も良くて賢いため、我が家に孤児院から引き取られた。
サラ義姉様は私と同じ年齢だけど、誕生日が私より半年早いので姉となり、ルキラ子爵家の次女になる。

一方、私はルキラ子爵家の子供であるが、見た目は全体的に地味。
顔立ちは、……さっぱり顔?
とりあえず、派手ではない顔立ちに、くすんだ金髪で、瞳は暗い青で、これまた地味である。
そして、知識、運動神経など、あらゆる点で平均である。
だからだろう。
アンジェリカ様に私は遊び相手として、選らんでもらえなかった。

しょうがない……。

ハロル公爵家は、優秀な人材を人一倍求めるから、有能でないと採用されない。
今思えば、アンジェリカ様が私になかなか会ってくださらなかったのは、やっぱり遠回しに断りたかったからか……。
両親もそれを予想して、サラお義姉様を養女にしたのかも。
サラお義姉様位に高スペックなら、将来、アンジェリカ様でなくても、他の有力者の補佐候補として、活躍できる職場は沢山ある。
でも、私のように低スペックで、高位令嬢の補佐候補に不採用な子爵令嬢は、他の有力者の方に気に入られなかった場合、この先どうなるかというと、たぶん、成金商家へ養女に出されることが多い……。
特に我がルキラ子爵家は、ハロル公爵家の手足となるため、その可能性が高い。

なので、アンジェリカ様に選ばれなかった私は、もうお茶会どころではなくなった。
ハロル公爵家のお庭の片隅にあるベンチに一人寂しく座ってみた。ちょっと途方にくれているエミリーです。
雲ひとつない空を見上げて、悲しい気持ちを霧散させるように頑張ってみた。

そんな私が、迷子になったような不安、真っ最中の時。
天使のようなラフィーナ様に出会った。

「あの……、あなた、大丈夫?気分が優れないの?」

えっ?何で天使がここにっ!?

「え、あの、だ、大丈夫です!
えっと、ちょっと緊張してしまいまして……」
「まあ、そうなの。
このお茶会は、沢山の方が招待されているから、ちょっと緊張してしまうわよね」

ベンチでシュンとしていた私に話かけてきたのは、金髪碧眼の天使。
容姿はめちゃめちゃ綺麗だが、女神というには、まだ幼い感じなので、うん、天使で。
しかも、声も澄んていて、優しいトーンで話かけてくる。
声だけでも癒されるな~。

「ねぇ、はじめましてよね?
私、ラフィーナ・アリードよ。
あなたのお名前を教えてくれる?」
「あ、はじめまして!
私はルキラ子爵家のエミリーと申します」
「よろしくね。
よろしかったら、一緒にお菓子を食べましょう?
ほら、先ほど、サーブの方から、お菓子をお皿に山盛りで渡されましたの」
「わあ!ありがとうございます!!」

ラフィーナ様は、色とりどりのお菓子が沢山のったお皿をお持ちでした。
ベンチに座って、二人でお菓子を堪能しながら、楽しくおしゃべりしました。
話しているうちに、エミリーと親しみを込めて呼んでくれるようになるラフィーナ様。
そして、何でこんな端っこでシュンとしているのかを聞かれ、本日のお茶会で私がアンジェリカ様の遊び相手になるのを断られたことを告げると……。

「それなら、エミリー!
私の遊び相手になってほしいわ。
エミリーとなら、一緒に遊びたいわ」とあどけない顔でねだるように首を傾げるラフィーナ様。可愛い。
「はい!もちろんです!!」と全力で首を縦にふる私。

天使の遊び相手!幸せ!!
ああ、ラフィーナ様は、私の助けの天使です。

実は、ラフィーナ様は、この国の三大公爵の一つで、主に宰相業務を担うアリード公爵家の方。
ラフィーナ様の評判は、幼い頃から美しくも聡明なので、次期王妃候補と呼ばれるご令嬢ということは知っている。
そう、本当に、天使の絵画からぬけだしたようで、輝かんばかりの金髪に、透き通るような青色の瞳をして、顔立ちも彫刻のような美しさ。
ラフィーナ様とは、本当にここで初めてお会いしたのだが、あまりの綺麗さに見惚れてしまう。
しばらくドキドキして目が合わせられなかったくらいに美しくて眩しい。
ラフィーナ様も、このお茶会で遊び相手というか、友達を見つけるようにご両親からいわれたため、参加されていたので、その後、正式に遊び相手に採用してもらえた。

それ以来、ずっと仲良しです!

そんなラフィーナ様と出会って1年後。
ラフィーナ様は、予想通り、13歳になった時に王太子殿下の婚約者になられた。めでたい!
この国で、ラフィーナ様ほど、身分、性格、容姿、聡明さなど、あらゆる点で、未来の王妃に相応しいご令嬢はいらっしゃらない。
それなのに、自分の娘こそ王太子妃にと考えていた愚かな貴族達がいるらしい。
そのせいで、ラフィーナ様は、婚約後から命を狙われるようになった。
もちろん、アリード公爵家では万全の警備体制をとっている。
そして、こういう不穏なトラブルには、ハロル公爵家の方々が調査・対策をして、未然に防ぐことも多々あった。
しかし、何故か捕まるのは小者ばかりで、トカゲのしっぽ切りのような事件ばかり。
もっと大物の黒幕がいそうなのに、なかなか辿り着かない状態が続いた。
そこで、ハロル公爵家から私の父を通して、ラフィーナ様の周辺が落ち着くまで、なるべく私がラフィーナ様の側にいて、予想外の危険に対処するように言いつけられた。

おかげで、天使のようなラフィーナ様の側に沢山いられて、ウハウハのエミリーです!
しおりを挟む

処理中です...