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悪役令嬢でも死んじゃだめぇ~!9

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頭の傷は、順調になおってきたエミリーです。
アリード公爵家の居心地が良すぎて、もう自分のお家に帰りたくないかも。
しかし、時間は無情にも過ぎ、私が自宅に帰る日は、刻一刻と近づいている。
帰宅したら、すぐに地獄の訓練が待っている予定。
何故ならば、私は、あと1年もしないうちに、ラフィーナ様と一緒に王立学院に入学するから。
リマード王国の王侯貴族の子息女達は、14歳から16歳までの3年間、王侯貴族用の王立学院に通うことになっている。
その学院入学までに、私は万が一の際、ラフィーナ様を守るための盾または最後の関門として、修業させられることに決まったそうです。

私の天使、ラフィーナ様のためだ。
しょうがない……。

現在、アリード公爵家の警備強化をしているが、裏切り者の黒幕が、いまだにわかっていない。
もちろん、こういう事態でのハロル公爵家も調査に乗り出したが、敵はかなり巧妙で、いまだに確証がないとのこと。
そのため、警備強化にあたり、ラフィーナ様専属の護衛騎士を増やすだけでなく、側仕えの侍女まで武道を嗜む方々に入れ替えられていた。
それらの人選も、弱味が握られるような弱点がなく、家族にも問題のある人間がいないか徹底的に調べられた上で、選ばれた。
その厳戒体制の中、ラフィーナ様のお父上アリード公爵様が私に正式に依頼をしてきた。
まず、私がラフィーナ様の遊び相手になったのは、採用といっていたけど、無報酬でした。
ルキラ子爵家の目的は、貴族同士の繋がりや情報のためなので、報酬は当然、ない。
ところが、少しでも、信頼足る人材が欲しいアリード公爵様は、無報酬でいいはずの私へも結構な報酬をだすので、プロとして守って欲しいとの依頼でした。

小細工工作員には、荷が重い……。

一応、私よりは腕がたつ我が家の姉達を紹介したが、私が良いそうです。
何でも、ラフィーナ様からのご指名らしく……。

おぉ、何て間違った信頼!

結果、私が信頼通りの実力をつければいいじゃん!っていうことになり、私は我がルキラ子爵家で地獄の訓練、決行予定となった。

私が帰宅する日、来週には会う約束をしているにもかかわらず、ラフィーナ様は、悲しげで、もう一人の天使ロラン様も、涙目だった。

「エミリーちゃん、まだ帰らないで。
僕が大人になるまで、ここにいて?ね?」とロラン様がうるうるおめめで訴えてくる。
「そうよ!エミリーは、この家にずっといればいいわ!」とラフィーナ様まで、ロラン、良いこと言った!的に言ってくる。

二人とも可愛すぎでしょう!!

可愛さにクラクラするエミリーです。
ちなみに、レオン様は、不満気でした。
私の笑顔のために、お菓子やら本やらを散々、貢がせましたが、レオン様の満足する笑顔が向けられなかったから……。

いや、笑っていましたよ?
めっちゃ、笑顔でしたよ!!

レオン様からのプレゼントを笑顔で受け取ったり、ロラン様にデレデレしていたらしい笑顔をレオン様に向けましたが、レオン様に「違う!それじゃない!!」と怒られました。どれだっ!?
私のどんな笑顔を求めているのか、これまた謎だった。

さらに、私ごときの帰宅に、アリード公爵夫婦まで、お見送りしてくださいました。
アリード公爵様は、ロラン様の「エミリーちゃんをお家に!」という涙目、うるうる攻撃に屈していた。

「エミリー、うちの子になっちゃうか?
それなら、帰さなくていいしね」とのたまうアリード公爵様。
「まあ!それがいいわ!
私、娘がもう一人、欲しかったの~」とアリード公爵夫人まで。
「そうしましょう、お母様!私もエミリーみたいな妹が欲しかったの!」とラフィーナ様。

いや、そんな簡単には無理でしょう?
まあ、それだけ気に入っていただいたと思おう。
何て言ったって、一家総出で私をお見送りしてくださるアリード公爵家、素晴らしい!

そんな風に前向きに考えていたら、「だめーー!!」と叫ぶロラン様。

「エミリーちゃんは、僕のお嫁さんになるから、姉弟になったら、だめでしょう?」とプンプンする天使その2のロラン様。

え?プロポーズされた覚えは……。
あ、沢山、あったわ。
まあ、6歳児のいうことだし、どうせ大きくなれば、ラフィーナ様のような美人に心変わりするだろうしね。
どうせ、私は、この子の恋愛シュミレーション相手みたいなものよね。

「……エミリーちゃん?
まさか僕の今までのプロポーズは、本気じゃないなんて、考えていないよね?」と、ロラン様が声を低くくして、脅すように責めてきた。
しかも、あのあどけなさをどこに捨ててきた!?と思うくらい、やけに冷えた感じで……。

え?本気なの?
それより、ロラン様から変な冷気を感じるよ!
天使というより、氷の悪魔な感じ?
どこいった、あの愛らしさ!

私がロラン様の変わりように戸惑っている横で、レオン様が「だろうなっ!通じちゃいないし~」って爆笑しています。レオン様は、まぎれもなく公爵令息だけど、時々、柄が悪いな。悪ぶりたいお年頃?
あーっと、その爆笑のおかげで、ロラン様のターゲットが、レオン様に移りました。グッドジョブ、レオン様!
レオン様、耳元でロラン様に何かを囁かれ、顔色を真っ青にされて、お部屋に駆けていかれました。
ここから、レオン様、退場です。

さいなら~!

アリード公爵家の方々に引き止められる中、ルキラ子爵家の迎えの馬車が到着したので、お世話になったお礼をして、しばしのお別れをしました。

いやー、色々あったけど。
アリード公爵家の滞在は、幸せでした。
さて、ラフィーナ様を死なせないために、不肖エミリー、全力で頑張ります!
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