野猿な悪役令嬢

ルナルオ

文字の大きさ
54 / 64

番外編 IF 野猿な囚人 29-2.(セリウス外ルート)黒幕の正体

しおりを挟む
 ルクレナとルイスは、ゾンビのごとく襲ってくる街の住民達を何とかお互いの怪我も少なくおさえ、住民達がおかしくなった原因と思われる鐘の音をやっと止めた。

「……ようやく、住民達の動きも止まったな」
「あの感じだと、私らを襲ったことなんか、覚えてなさそうだね~。
 あいつら、きょろきょろして、状況把握できてなさそうだ」
「やっぱり、この鐘の音で、操っていたんだな。 
 こんな大勢に、一気に精神へ働きかけられるって、とんだ脅威だな……」
「どんな技術を使ったかは、後で調査だな。
 でも、この鐘の音だけじゃなさそうだぞ?
 あとで、バーナルに分析させるつもりだが、この規模なら薬も使っていそうだ。
 だから、操られた住民とそうでない住民に分けられたんだろう」
「そうか。それなら、この街の井戸や流通した食べ物を調べるように報告しておこう。
 今はまず、リア達と合流しないとな」
「そうだな。まあ、バーナルがいるし、無事だと思うんだが……」

 すぐに、緊急時にリーリア達と落ち合う約束をしていた街の外れへ、ルクレナ達は向かった。
 けれども、そこには、リーリアは見当たらず、怒りに震えるバーナルと、バーナルに殴られたのか、地面でのびている青年がいた。

「おい、バーナル?野猿は?」
「……ルクレナ、ごめん。
 あたし、あの子を守り切れなかった……」
「リアは奴らに捕まったのか!?すぐに助けにいかないと!」とルイスは驚き、焦る。
「待て、ルイス、慌てるな。まずは状況を確認するぞ」
「リアは、奴らに連れていかれたんだろう?無傷か?」
「ええ、そうよ、ルイス。
 あたし共々眠らされて、あの子だけ馬車で連れていかれちゃったの。
 たぶん、無傷だと思う」
「……そうか。お前を眠らせられる程の敵だったのか?」
「野猿は、奴らの本拠地に連れて行かれたんだろう。
 おい、お前を出し抜くなんて、相手も相当だな。
 野猿が何かやらかしたからか?
 それとも、手練れの相手だったのか?」

 そう言いながら、ふと、バーナルにぶっ飛ばされてのびた青年、フェスに気づくルクレナとルイス。

「うおっ!!ちょっと、待て、バーナル!
 そこで、のびている奴って、まさか!?」
「……こいつ、『肉捌き狩人』じゃないか!
 何で奴がこんなところにいる!?」
「野猿ちゃんが捕まっちゃったのは、この子のせいよ~!んもう!!」とバーナルは怒って、のびているフェスをさらにゲシッと蹴る。

「ああ、そういえばこいつ、お前の元相棒か……」と苦い顔でフェスを見るルイス。
「……お前らって、『獲物を狩って肉を捌いては料理する、最強暗殺グルメコンビ』とか言われていたな。
 そんな元相棒なんで、油断したな、バーナル?」ときつい視線を向けるルクレナ。
「そうよ!一瞬の油断をつかれたわ。
 こいつってば、この私でも効く薬を用意していやがったのよ、きぃー!
 あ、でも大丈夫よ、ルクレナ。
 こいつ、野猿ちゃんの居所を知っているって。
 居所を教えるし、救出の手助けもするから、仲間にしろって言われたんだけど、どうする?」
「どうするってなあ……。
 まあ、こいつを仲間にするかはともかく、野猿の連れて行かれた先を吐かせるぞ」

 とりあえず、リーリアの居所がわかり、すぐに追えそうなので、ちょっと安心するルイスであった。
 のびたフェスを叩き起こし、ルクレナ達はリーリアの救出に向かった。

 一方、手練れの暗殺者フェスに眠らされたリーリアは、リアレース教会の馬車に乗せられて、数時間はかかるリアレース教会の本拠地でもある街に着いた。
 その街には小さな宮殿のような建物があり、そこがリアレース教会の本部であった。
 馬車の中で拘束されたリーリアは、そのまま荷物のように抱えられ、本部の中にある小部屋に押し込められた。
 しばらくして、やっと意識を取り戻したリーリア。

「……ぅん、お腹空いた……。
 あれ?ここは……」とリーリアは拘束された身体を何とか起こし、辺りをきょろきょろと見回す。
 すると、リーリアの入れられた小部屋の扉近くに、リーリアの見張りと思われる男二人がいて、リーリアが起きたのに気づいた。

「お!『魔女』様がお気づきになったみたいだ。
 お前、教祖様にすぐに知らせろ!」
「はい!」

 リーリアの見張りの1人は、すぐにリアレース教会のトップへ、リーリアが気づいたことを知らせに行った。
 そして、リーリアが待つこと数分。
 拘束されたリーリアの前に現れたのは、リーリアの母親位の年齢で、確かに桃色の髪、水色の瞳の女性であった。
 リーリアのことを上から下までジロジロ見つめるこの女性に、リーリアは驚く。

 たぶん、この人がリアレース教会のトップで「教祖様」?
 でも、この人って、もしや……。

 偽物ではなく、本物のセリクルド王国王族の特徴を持つこの女性は、リーリアの義妹になったヒロイン、アリーシアに少し似ていて、血縁者ではないかと思われた。
 もっとも、その女性は、アリーシアのように若くもないし、美人でもなかったが……。
 
「ねえ、『アレースの魔女』さん?
 あなた、魔力が凄くて、そう呼ばれているそうね~」
「……いいえ。魔女なんかではありません」
「あら、そうなの?
 言っておくけど、とぼけても無駄よ?」と鼻で笑う。
「いえ、そもそも『魔女』なんて存在はいないですよ。
 私も『効率の魔女』と呼ばれる人物について、本で読んだことがありますが、そんなある一定の事柄に万能な人物は、今ではもう存在しません」
「ふーん、あっそう。
 でも、あなたって、アレースの森を一夜にして街が入る規模で開拓するほどの魔力持ちなのでしょう?
 あと、何とかっていう修道院の強固な結界を一瞬にして消し去ったそうじゃない?
 それでも?」
「へ?えーと?あ、あれは、その……。
 と、とにかく、そんな『魔女』なんかじゃありませんよ!」
「ふっ、人に苦痛を与えるのは趣味じゃないけど、正直に言わないならあなたが痛い目にあうだけよ。
 しかも、あなただけではなく、あなたの大切な人もね……。
 自分の立場、わかっているの?」とその教祖は小ばかにしたような口調でリーリアを脅す。

 その態度に、(あ、バーナル達の言ってた通り、この人、大人しく言うことをきかないと、私に強制的に何かさせる気だ……)とわかり、リーリアが仕出かしたことのせいではあるが、悪者に利用されそうな自分が嫌になってくる。
 あと、彼女の言う「大切な人」とは誰のことを指しているのかがわからない。
 リーリアは、首を傾げて考えてみたが、とにかく、ここから逃げるにしても、相手を捕まえるにしても、ルクレナ様に報告するために、相手が何者か、その大切な人とやらは誰かを確認しておこうと思った。

「……あなたこそ、何者なのですか?
 セリクルド王国の王族の方のようですが、なぜこのランダード王国に?」
「ふふん、何者だと思う?」

 やっぱり、答える気ないのか……。
 じゃあ、面倒くさいから、もういいか。
 とりあえず、本物の隣国王族っぽい悪者だったと、ルクレナ様に報告しよう!

 相手にするのもすぐに面倒になったリーリアは、お腹も空いていたので、逃げる方が楽かな?と拘束を外そうとしながら考える。
 今回は、幸いにして、魔力封じの腕輪などがされていなかったので、リーリアにとっては楽勝であった。

「……」無言で、拘束具に集中するリーリアに、苛立つトップ。
「……ちょっと!無視するとは、いい度胸ね?」
「(ええ~。面倒くさいな、この人)いえ、えっと、何者かわからなくて……」
「ふん!いいわ、教えてあげる。
 私はね、セリクルド王国の元王女よ。現セリクルド国王の妹にあたるわ。
 恋愛小説の題材にもされた、ランダード王国の騎士と駆け落ちしたセリクルド王国の王女の噂を聞いたことがない?
 そう、私こそ、その王女であるユリアリーシア・セリクルドよ!」

 なかなか答えないリーリアにしびれを切らし、自らを誇らしげに名乗る「リアレース教会」のトップ。
 その正体は、どうやら、事故で亡くなったとされたセリクルド王国の元王女で、あの義妹アリーシアの母親であった。

 へ?確かその元王女って、元騎士の方と一緒に亡くなったんじゃなかったのかな?
 だから、その微妙な血筋のアリーシアは、孤児になっても難しい立場だからとメナード公爵家に引き取られたのに……。
 でも、本当は生きていたの?
 なんで?どうやって?
 実はゾンビなの?

 名乗られても、むしろ困惑するばかりのリーリアであった。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

本の通りに悪役をこなしてみようと思います

Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。 本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって? こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。 悪役上等。 なのに、何だか様子がおかしいような?

処理中です...