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英雄の奥様と夜会
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マリロード王国の英雄サイラスは奥様のスーザンが大好きで有名であった。
いつもは、着るものを含めて、スーザンのセンスの良さを褒めまくるサイラスであったが、最近は、スーザンの来ている服にやたらと駄目出しをすることがあった。
「スーザン!その服では露出が多いぞ!しかも、何でこの色にするのだ!?私はこんな男共が好きそうな色はスーザンに合わないと思うぞ!!」
「ええっと、サイラス様?」
「いいかい?君はこの国の将軍である私の妻としてだな……」
「あの、いつもよく着ている色合いと同じなのですが……?」
「えーっ、そうか~!?
……もしそうなら、もっと地味な色のものにしなさい!!」といって、まるで不機嫌でふてくされた時のぶちゃっとしたタチアナのような顔で文句をつけるサイラス。
あらあら。
サイラス様にタチアナは本当にそっくりなのね~。
ぶちゃっとした顔まで似ているなんて!
……いえ、それどころではなかった。
一体、どうされたのかしら、サイラス様ったら。
まるで口うるさい意地悪侍女顔負けの絡み方ですわ……。
スーザンの服に対するサイラスの過敏な反応に首を傾けるスーザン。
実は、サイラスがスーザンの恰好にやたらと口うるさくするのは、先日の夜会での出来事が原因であった。
いつもはあまり夜会に出席しないスーザンであったが、その日の夜会は王宮にて国王主催で行われるため、サイラスと共に出席しないといけなかった。
しかも、王宮で新しく雇った侍女の化粧技術が素晴らしいと評判のため、王妃の計らいで王妃や王妹のカーラなどの王族に連なる女性達は、その侍女の化粧技術を最大限に生かして美しく装おうということになった。もちろん、スーザンもその中に含まれてしまい、スーザンも特別に王宮で夜会の身支度を行った。
そして、王宮でスーザンと合流したサイラスは驚いたのであった。
本当にこれが私のスーザンなのかっ!?
サイラスの元に現れた女性は、いつもの地味顔はどこにもなく、社交界一の美女にも負けないかと思われるレベルの美女に見えた。
スーザンは、全体的に見ると地味な造りの顔であるが、一つ一つのパーツにさほど欠点はなく整っており、さらに、王妃付きになった侍女の高度な化粧技術により、別人のように美しく、化粧映えする顔ということが判明した。
おまけに、髪も女神像のような優雅な髪型を結われており、着ているものもいつもと異なっていた。
普段の地味さはどこにいったか思う位に華やかで、また、とても二人の子供がいるようにも見えないほど若々しく、清廉で品のある様子をしているスーザン。さらに、そのスーザンが男の視線がいくような肩や背中が見えるドレスを着ることで、なめらかな白く輝く美しい肌が露出されて、ドレスの鮮やかな色合いも着ている者を華麗にみせて、肌の美しさをより一層、際立てていた。
「もう~、今回はスーザンの普段との差がすごすぎて、驚いたわ!」
「やはりあの侍女の技術は素晴らしいわね!スーザンの素材が良いのもあるけどね~。
今日のスーザン、とってもきれいよ!!」と王妃のクリスティーナやカーラはスーザンの出来栄えを賞賛していた。
しかし、サイラスの心は穏やかではなかった。
「な、何でそんなに肌を露出しているのだ、スーザン!
駄目だ!絶対に駄目だ!!すぐに、肌をきちんと隠したドレスに変えなさい!!」と怒るサイラス。
ああ!こんなにスーザンの肌をさらしたら、危険だろう!?
しかも、いつもの化粧でも、私を魅了してやまないのに、こんな元の顔がよくわからん化粧をして、他の男の受けを良くする必要なんてないだろう!?
母上も伯母上も何を考えているのだ!!
他の男どもがスーザンに夢中になったら、ますます危険だろう!?
サイラスはこの目の前の美女になったスーザンが綺麗すぎて気に入らず、また、そんな姿のスーザンが他の男達の目にさらされることにもイライラとしてしまった。
その苛ついた様子のサイラスにしょんぼりするスーザン。
サイラスのことなので、スーザンが恥ずかしくなるくらいに大絶賛するか、少なくとも心からほめてくれると思っていた。それがこんなに怒り、苛立つとは、そんなにこの装いは似合っていないのかと、サイラスと結婚してからおさまっていたスーザンの容姿コンプレックスが再発してしまうのであった。
サイラスにエスコートされながら、しょんぼりしたスーザンが夜会の開かれている場に入ると、見事な美男美女カップルの登場に、その場にいる皆が息をのんだ。
「おい!サイラス将軍が奥様以外の女性をエスコートしているのか!?」
「珍しいな?親戚か?」
「び、美人だ……」
「おまけに、あの美人、英雄にエスコートされているのに全然嬉しそうじゃないなんて!」
「ああ、何だか憂いを帯びて……。守ってあげたい……」
その場のほとんどの者達が、サイラスの連れてきた女性がスーザンとわからなかった。
口々にサイラスの横にいる女性が誰かと囁かれ、その美しさを絶賛されていたが、誰かが英雄の奥様であるスーザンでは?と言っても信じない者達が多かった。
そこへ、無事にセドリックと婚約したエリザベスが、スーザン達を見つけて駆け寄った。
「スーザンお姉様!」
「まあ、エリザベス!セドリック様といらっしゃったの?」
「はい!セドリック様にエスコートされて来ました。
それよりも、スーザンお姉様、今日は一段とお綺麗ですね!初めは、どなたかわからない位でしたよ。何だか特別な感じ!!」と言って、エリザベスは化粧して別人のように美しくなったスーザンの姿をうっとりと眺めた。
「……ええっと、ありがとうエリザベス。王妃様の侍女に今日は特別に装いを手伝っていただいたの」とスーザンがエリザベスの素直な賞賛にちょっと気持ちが浮上してきたが、スーザンの手を握っていたサイラスの力がぐっと強くなり、ぎりっと奥歯をかみしめる音が聞こえる位に苛立つサイラスにちょっと怯えるスーザン。
「奥様、お久しぶりです。エリザベスの言う通り、今日はいつも以上に可憐ですね。
……どおりで、サイラス将軍の機嫌が悪いわけですね」とスーザンに挨拶をしながら、隣のサイラスの苛立ちを理解するセドリック。
「セドリックも今日のスーザンは目を引くと思うか?」と苛立ちながらセドリックに確認するサイラス。
「そうですね。いつもの装いも素敵ですけど、今夜は一段とお美しいですね」と素直に答えるセドリック。
「……スーザン、もう帰ろう。いつも辛辣なセドリックですら君をこんなに褒めるなんて。これ以上、君を他の男の目にさらすのは私が許せない」
「サ、サイラス様。せめて国王陛下達にご挨拶した後でないと、不敬ですよ!」
「ちっ、伯父上にすらこの姿のスーザンを見せるのが嫌だな。とぼけて帰ろう、スーザン」
「駄目ですよ。きちんと挨拶に参りましょう。それで早めに帰りましょうね」と言って、スーザンもサイラスの様子から早く化粧を落としたくて、今日はもう早めにこの夜会を退出したかった。
サイラスは、スーザンが綺麗すぎて、下心のある男どもの目にさらされ、以前のようにスーザンに惚れる輩が出てこないかと心配や不安で苛立っていた。
一方、容姿コンプレックスが再発したスーザンは、サイラス以外の者からいくらほめられても、サイラスの否定的な態度により、しょんぼりと落ち込む一方であった。
何とか国王、王妃に挨拶をした後、サイラスとスーザンはすぐに退出しようとしたが、その前に、サイラスの隣にいる美女が誰なのか知りたがった貴族達が、二人に群がった。
それは、単なる好奇心だけではなく、サイラスの隣にいる美女がスーザンなら今まで通りで問題がないが、もしサイラスがどこかの家の美女をわざわざ国王主催の夜会に連れてきたとなれば、パワーバランスにも影響しかねないからでもあった。
「サイラス将軍!お久しぶりです。お隣の美女は初めてお会いしたと思うのですが、是非、ご紹介を……」と群がってきた貴族達は、近くで見ることで、その美女がスーザン本人だと気づくと、皆、ひどく驚愕した。そしてすぐに、弁解のようにその美しさを絶賛し、謝るのであった。
彼らに絶賛なのか、謝罪なのかよくわからない言葉をかけられたスーザンは、それらに対してお礼を言うべきなのか、謝罪に対して気にしていない旨を伝えるべきなのかと戸惑どった。
サイラスは不機嫌オーラを隠しもせず、とうとう群がる貴族達の輪から強引に抜け出て、スーザンをぐいぐいと引っ張り、二人で夜会を退出することができた。
やっと自宅に帰れたサイラスとスーザンは、今回の件でお互いにぐったりしてしまった。
それでも、自宅に着くとすぐに化粧を落とし、いつもの地味顔に戻ったスーザン。
その地味顔のスーザンをみて、ほっとするサイラス。
「……スーザン。今日の夜会での君はとても綺麗だったけど、綺麗すぎて、一緒にいてすごく疲れてしまったよ。今のような素の君の方が、ずっと魅力的だから、もうあんな化粧は二度しないでおくれ」
「……わかりました。王妃様には今後、きちんとお断りしますので」と言って、スーザンはまたさらに落ち込んだ。
えーっと。
一応、綺麗とおっしゃっていただきましたが、一緒にいて疲れてしまうのですか?
しかも、すごく?
何故?見ていて疲れるのかしら?
本当はそんなに似合っていなかったのかも。
自分としてはいつもよりずっと見栄えがいいと思ったのですけどね……。
英雄の奥様は、英雄のせいであの化粧顔が似合わないと思い込み、二度としないと決意する!
一方、英雄は、奥様の良さは自分だけがわかっていればいいと思うくらいに、嫉妬深かった!
ちなみに、サイラスは、あの時に夜会で奥様の姿を目撃した知り合いの絵師に、美しい奥様の姿をきっちり肖像画に残すように依頼していた。
たとえ気にくわなくても、これも大事な奥様の姿のひとつとして記録に抜かりはないサイラスであった。
あの夜会での幻のように麗しかった美男美女風の英雄夫婦の姿が、嫉妬深いサイラスのせいで、もう二度と見られないことを察して、残念に思う貴族達が多かった。
そして、サイラスの危惧した通り、今回の件で化粧美女顔のスーザンに一目ぼれした愚かな貴族の男達を、サイラスはスーザン危機察知能力で見つけ出し、駆除するために奔走することになった。
しかも、サイラスはそれ以来、スーザンがセクシーに見えることや、綺麗になることに対して、過敏になるのであった。
いつもは、着るものを含めて、スーザンのセンスの良さを褒めまくるサイラスであったが、最近は、スーザンの来ている服にやたらと駄目出しをすることがあった。
「スーザン!その服では露出が多いぞ!しかも、何でこの色にするのだ!?私はこんな男共が好きそうな色はスーザンに合わないと思うぞ!!」
「ええっと、サイラス様?」
「いいかい?君はこの国の将軍である私の妻としてだな……」
「あの、いつもよく着ている色合いと同じなのですが……?」
「えーっ、そうか~!?
……もしそうなら、もっと地味な色のものにしなさい!!」といって、まるで不機嫌でふてくされた時のぶちゃっとしたタチアナのような顔で文句をつけるサイラス。
あらあら。
サイラス様にタチアナは本当にそっくりなのね~。
ぶちゃっとした顔まで似ているなんて!
……いえ、それどころではなかった。
一体、どうされたのかしら、サイラス様ったら。
まるで口うるさい意地悪侍女顔負けの絡み方ですわ……。
スーザンの服に対するサイラスの過敏な反応に首を傾けるスーザン。
実は、サイラスがスーザンの恰好にやたらと口うるさくするのは、先日の夜会での出来事が原因であった。
いつもはあまり夜会に出席しないスーザンであったが、その日の夜会は王宮にて国王主催で行われるため、サイラスと共に出席しないといけなかった。
しかも、王宮で新しく雇った侍女の化粧技術が素晴らしいと評判のため、王妃の計らいで王妃や王妹のカーラなどの王族に連なる女性達は、その侍女の化粧技術を最大限に生かして美しく装おうということになった。もちろん、スーザンもその中に含まれてしまい、スーザンも特別に王宮で夜会の身支度を行った。
そして、王宮でスーザンと合流したサイラスは驚いたのであった。
本当にこれが私のスーザンなのかっ!?
サイラスの元に現れた女性は、いつもの地味顔はどこにもなく、社交界一の美女にも負けないかと思われるレベルの美女に見えた。
スーザンは、全体的に見ると地味な造りの顔であるが、一つ一つのパーツにさほど欠点はなく整っており、さらに、王妃付きになった侍女の高度な化粧技術により、別人のように美しく、化粧映えする顔ということが判明した。
おまけに、髪も女神像のような優雅な髪型を結われており、着ているものもいつもと異なっていた。
普段の地味さはどこにいったか思う位に華やかで、また、とても二人の子供がいるようにも見えないほど若々しく、清廉で品のある様子をしているスーザン。さらに、そのスーザンが男の視線がいくような肩や背中が見えるドレスを着ることで、なめらかな白く輝く美しい肌が露出されて、ドレスの鮮やかな色合いも着ている者を華麗にみせて、肌の美しさをより一層、際立てていた。
「もう~、今回はスーザンの普段との差がすごすぎて、驚いたわ!」
「やはりあの侍女の技術は素晴らしいわね!スーザンの素材が良いのもあるけどね~。
今日のスーザン、とってもきれいよ!!」と王妃のクリスティーナやカーラはスーザンの出来栄えを賞賛していた。
しかし、サイラスの心は穏やかではなかった。
「な、何でそんなに肌を露出しているのだ、スーザン!
駄目だ!絶対に駄目だ!!すぐに、肌をきちんと隠したドレスに変えなさい!!」と怒るサイラス。
ああ!こんなにスーザンの肌をさらしたら、危険だろう!?
しかも、いつもの化粧でも、私を魅了してやまないのに、こんな元の顔がよくわからん化粧をして、他の男の受けを良くする必要なんてないだろう!?
母上も伯母上も何を考えているのだ!!
他の男どもがスーザンに夢中になったら、ますます危険だろう!?
サイラスはこの目の前の美女になったスーザンが綺麗すぎて気に入らず、また、そんな姿のスーザンが他の男達の目にさらされることにもイライラとしてしまった。
その苛ついた様子のサイラスにしょんぼりするスーザン。
サイラスのことなので、スーザンが恥ずかしくなるくらいに大絶賛するか、少なくとも心からほめてくれると思っていた。それがこんなに怒り、苛立つとは、そんなにこの装いは似合っていないのかと、サイラスと結婚してからおさまっていたスーザンの容姿コンプレックスが再発してしまうのであった。
サイラスにエスコートされながら、しょんぼりしたスーザンが夜会の開かれている場に入ると、見事な美男美女カップルの登場に、その場にいる皆が息をのんだ。
「おい!サイラス将軍が奥様以外の女性をエスコートしているのか!?」
「珍しいな?親戚か?」
「び、美人だ……」
「おまけに、あの美人、英雄にエスコートされているのに全然嬉しそうじゃないなんて!」
「ああ、何だか憂いを帯びて……。守ってあげたい……」
その場のほとんどの者達が、サイラスの連れてきた女性がスーザンとわからなかった。
口々にサイラスの横にいる女性が誰かと囁かれ、その美しさを絶賛されていたが、誰かが英雄の奥様であるスーザンでは?と言っても信じない者達が多かった。
そこへ、無事にセドリックと婚約したエリザベスが、スーザン達を見つけて駆け寄った。
「スーザンお姉様!」
「まあ、エリザベス!セドリック様といらっしゃったの?」
「はい!セドリック様にエスコートされて来ました。
それよりも、スーザンお姉様、今日は一段とお綺麗ですね!初めは、どなたかわからない位でしたよ。何だか特別な感じ!!」と言って、エリザベスは化粧して別人のように美しくなったスーザンの姿をうっとりと眺めた。
「……ええっと、ありがとうエリザベス。王妃様の侍女に今日は特別に装いを手伝っていただいたの」とスーザンがエリザベスの素直な賞賛にちょっと気持ちが浮上してきたが、スーザンの手を握っていたサイラスの力がぐっと強くなり、ぎりっと奥歯をかみしめる音が聞こえる位に苛立つサイラスにちょっと怯えるスーザン。
「奥様、お久しぶりです。エリザベスの言う通り、今日はいつも以上に可憐ですね。
……どおりで、サイラス将軍の機嫌が悪いわけですね」とスーザンに挨拶をしながら、隣のサイラスの苛立ちを理解するセドリック。
「セドリックも今日のスーザンは目を引くと思うか?」と苛立ちながらセドリックに確認するサイラス。
「そうですね。いつもの装いも素敵ですけど、今夜は一段とお美しいですね」と素直に答えるセドリック。
「……スーザン、もう帰ろう。いつも辛辣なセドリックですら君をこんなに褒めるなんて。これ以上、君を他の男の目にさらすのは私が許せない」
「サ、サイラス様。せめて国王陛下達にご挨拶した後でないと、不敬ですよ!」
「ちっ、伯父上にすらこの姿のスーザンを見せるのが嫌だな。とぼけて帰ろう、スーザン」
「駄目ですよ。きちんと挨拶に参りましょう。それで早めに帰りましょうね」と言って、スーザンもサイラスの様子から早く化粧を落としたくて、今日はもう早めにこの夜会を退出したかった。
サイラスは、スーザンが綺麗すぎて、下心のある男どもの目にさらされ、以前のようにスーザンに惚れる輩が出てこないかと心配や不安で苛立っていた。
一方、容姿コンプレックスが再発したスーザンは、サイラス以外の者からいくらほめられても、サイラスの否定的な態度により、しょんぼりと落ち込む一方であった。
何とか国王、王妃に挨拶をした後、サイラスとスーザンはすぐに退出しようとしたが、その前に、サイラスの隣にいる美女が誰なのか知りたがった貴族達が、二人に群がった。
それは、単なる好奇心だけではなく、サイラスの隣にいる美女がスーザンなら今まで通りで問題がないが、もしサイラスがどこかの家の美女をわざわざ国王主催の夜会に連れてきたとなれば、パワーバランスにも影響しかねないからでもあった。
「サイラス将軍!お久しぶりです。お隣の美女は初めてお会いしたと思うのですが、是非、ご紹介を……」と群がってきた貴族達は、近くで見ることで、その美女がスーザン本人だと気づくと、皆、ひどく驚愕した。そしてすぐに、弁解のようにその美しさを絶賛し、謝るのであった。
彼らに絶賛なのか、謝罪なのかよくわからない言葉をかけられたスーザンは、それらに対してお礼を言うべきなのか、謝罪に対して気にしていない旨を伝えるべきなのかと戸惑どった。
サイラスは不機嫌オーラを隠しもせず、とうとう群がる貴族達の輪から強引に抜け出て、スーザンをぐいぐいと引っ張り、二人で夜会を退出することができた。
やっと自宅に帰れたサイラスとスーザンは、今回の件でお互いにぐったりしてしまった。
それでも、自宅に着くとすぐに化粧を落とし、いつもの地味顔に戻ったスーザン。
その地味顔のスーザンをみて、ほっとするサイラス。
「……スーザン。今日の夜会での君はとても綺麗だったけど、綺麗すぎて、一緒にいてすごく疲れてしまったよ。今のような素の君の方が、ずっと魅力的だから、もうあんな化粧は二度しないでおくれ」
「……わかりました。王妃様には今後、きちんとお断りしますので」と言って、スーザンはまたさらに落ち込んだ。
えーっと。
一応、綺麗とおっしゃっていただきましたが、一緒にいて疲れてしまうのですか?
しかも、すごく?
何故?見ていて疲れるのかしら?
本当はそんなに似合っていなかったのかも。
自分としてはいつもよりずっと見栄えがいいと思ったのですけどね……。
英雄の奥様は、英雄のせいであの化粧顔が似合わないと思い込み、二度としないと決意する!
一方、英雄は、奥様の良さは自分だけがわかっていればいいと思うくらいに、嫉妬深かった!
ちなみに、サイラスは、あの時に夜会で奥様の姿を目撃した知り合いの絵師に、美しい奥様の姿をきっちり肖像画に残すように依頼していた。
たとえ気にくわなくても、これも大事な奥様の姿のひとつとして記録に抜かりはないサイラスであった。
あの夜会での幻のように麗しかった美男美女風の英雄夫婦の姿が、嫉妬深いサイラスのせいで、もう二度と見られないことを察して、残念に思う貴族達が多かった。
そして、サイラスの危惧した通り、今回の件で化粧美女顔のスーザンに一目ぼれした愚かな貴族の男達を、サイラスはスーザン危機察知能力で見つけ出し、駆除するために奔走することになった。
しかも、サイラスはそれ以来、スーザンがセクシーに見えることや、綺麗になることに対して、過敏になるのであった。
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