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2.マッチング
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拘束されている元同級生に弥生が掛けたのは一言「一昨日来やがれ」そして、暁はそのまま自分の親と、役場職員に引きずられて退場していった。
「柊さん大丈夫ですか?」
心配そうに声を掛けてきたのは弥生専属役場職員の飯塚和葉だった。
「ああ、大丈夫も何も、あの男のゲスぶりには慣れてるから」
苦笑いしつつ、「打ち合わせしよ」と談話室に入って行った。
飯塚が急いで追いかけると、既に面談室のパソコンの前に座っていた。
設置されているパソコンの電源を入れつつ、飯塚が怒り冷めやらぬ様子で向かい側に座ると、「あの人ってなんなんですか? 失礼以上ですよ!!」と、きれいな顔を真っ赤にして怒ってくれている。
「あはは、17年前のこの町唯一のアルファ。と言っても高校を東京に行って向こうで就職、今に至るだけどな。」
「かなり優秀だったんですか?」
「んー、どちらかと言うと普通より上って感じかな、昔はこんな田舎にアルファなんて居なくて珍しいのもあったから、あいつは周りにちやほやされて育ったんだよ。ご両親はまともで教育には力を入れてたんだけど」
「ああ、なるほどそれ以上に周りが甘やかしたんですね。」
「よく分かったね。」
「まぁ、珍しくない事例なんで。」
「へぇー」
アルファといえど”知らないこと”を習いもせずに知る事はまず無い。
閃きを持って新しいものを作る人もいるが根底にあるのは、育って行く上での学びがもとになる。
それが分かっている親は教育熱心になる。
ところが、そうは思わない人間も多いのが現実で、アルファだから何でもできて、何でも知っている。
だから勉強なんて必要ないと、甘やかし、知識を与えず、厳しく教育する親を糾弾して引き剥がしに掛かるのだそうだ。
「なんか、どこも似たようなのがいるんだね。」
「まぁ、わからなくもないですけど。」
「そうなの?」
「アルファっていってもピンキリなんです。佐藤(弥生専属役場職員・結婚済み)クラスのアルファだと普通クラス、さっきの男は言い方悪いですけど、下の下って所です。ところが、中にはとんでもないアルファっているんです。能力はもちろん雰囲気っていうのかな。存在感が半端なくて神々しくて他を圧倒しちゃう。」
「そんな神々しいアルファがいんの?」
「いちゃうんです。」
いつも受け答えは慎重な飯塚さんが間髪容れずに断言するのが珍しい
あれ?断言するって事は……
「もしかして、会ったことある?」
飯塚さんは、はぁとため息を漏らすと「あります」と小さく言った。
「あんな人を見ちゃうと、アルファって何でも出来るのが当たり前って思っても仕方ないって思っちゃったんですよね。」
「マジか」
「マジです。」
どんな人なのか気になるが、そんなアルファと会う事さえないので話はここで切り上げてマッチングの相手を決める事にする。
「ここ何年か中四国関西の方のマッチングが多くて苦情が来てるんですよね。」
「あ~、確かに地域希望なしで回しちゃうとそうなるか。」
弥生のマッチングの決め方は他の登録者とは違う方法で行われる。
他の登録者は自分のプロフィールと相手のプロフィールから相性のいい相手をマッチング担当者と本人が選んでお見合いするのに対して、弥生の場合は自分のというより、お見合い相手の成婚率を上げる事が目的の為PCがランダムに選出して、相手のプロフィールは選出されてから分かるシステムになっている。
一応、希望入力欄があるのだが、いつも空白のままEnterをポンポンと押してしまう事で、近隣方面でマッチングが成立してしまうのだ。
ちなみに、無機質な音がしてポンと相手を映し出すだけというのが面白くないとだだをこねて、視覚的刺激要素としてルーレットを回す様な画面が表示されるようになった。画像的にはルーレットが回り弥生がEnterを押すと止まるだけで、PCが勝手に選出するためはっきり言って意味はない。それでも、住んでいるところを中心にセッティングされているのか余程の事がない限り遠く離れた場所を指定してくることがない。
「仕方ない、今回から各方面ばらけさせて地域指定入れて回すか~。」
「どこ指定します?」
「ん~、どこって関東の方がいいんじゃない?」
「いいんですか?」
「はは、だって苦情いっぱい来てるのって多分関東、しかも東京あたりだよね。違う?」
「う~~、そうなんですけど。」
関東方面を嫌うのは、さっきの押しかけゲス同級生のせいで、関東の方に恨みがあるわけではない。第一、会ってその日で終わり、長くても3日程度で終わるのだから特に問題はない。
ホテルに泊まるのが好きな弥生にとってはちょっとした観光気分だ。
まさか、ピンポイントであのゲスに会うことはないだろう。
「なんで、東京と大阪って張り合うんですかね。」
後ろから突然聞こえた声に振り向くと、ゲス同級生を放り出した弥生専属役場職員、佐藤 一瑠《いちる》がいた。
「張り合ってんの?」
「張り合ってるでしょう?ここんとこ大阪中心の見合いが多くてその都度苦情入れてくるんですよ、しかも、東京が首都なのにってよくわかんないへりくつ言って、長時間グチグチグチグチと。」
どうやら、かなりイライラさせられたらしい。
「なんかごめんな。」
「弥生さんのせいじゃないんですけど!腹立つのは上の連中です。」
「ははは。」
「佐藤、弥生さんじゃなくて”柊さん”でしょ!」
注意されても何のその、「そうでしたー」と棒読みのセリフで飯塚の横の席に腰掛ける。
「まぁ、とりあえずやっちゃいます?」
「そうだね。」
飯塚が希望欄に広範囲の関東ではなく、東京と入力したのを確認して、弥生がルーレットを回す。
出てきた写真に「「「えっ?」」」と三人の声が重なる。
出てきたのは若い男だった、アルファだから容姿はもちろんいい。
ただちょっと気になる点があった。
「これ、隠し撮り?」
そう、明らかに仕事中の所を写真に撮っている。
マッチングでは本人が希望しない限り登録はされないが、これはいいのだろうか?
2人を見ると2人共困惑していた。
今までにない珍事だ。
「もう一回、回してみます?」
佐藤の案に賛成して回してみたが、既にPCのなかで決定事項なのか覆ることなく同じ男が表示された。
「ちょっと確認してきます。」
飯塚が席を離れている間に、佐藤と一緒に相手のプロフィールをチェックしていく。
>>
西園寺 蒼紫
27歳
身長187cm
職業 会社員
趣味 仕事
特技 仕事
PR
相手の事に口を出さない静かな性格。穏やかな結婚を希望、子供は最低スペアを考え2人希望。自分を立て、前に出過ぎず、文句を言わず、家事育児をこなし、節約を心がけ、こちらの事に口出ししない、結婚後は家庭に入り外には出ない大和撫子希望。仕事をしているので生活面の心配は不要。
>>>>>
読み上げていく佐藤の頬は引きつり、こめかみがピクピクと痙攣する。
わかるわかるぞ、流石にこのプロフィールはない。
普通のマッチングでもありえない。
断言するがまず相手が見つからないだろう。
そのうえ、弥生が関わるマッチングを希望しているにしてはちょっと……いや、だいぶおかしい。
基本的に見合いをするのは弥生だが、結婚相手として会うわけじゃなく、あくまでその後の運命のオメガに出会う確率を上げる為の見合いだ。
オメガの安全の為、事細かな規約を読み、理解し、オメガ保護(基本的に弥生の保護)を掲げるMへの加入の有無も聞かれるはずだ。
その中には、結婚相手の人格否定、拘束、強制等の禁止、理想の押し付けの禁止、そんな事を行わないと言う誓約書まで書かされる上、Mの事も細かく説明を受ける。
規約に反した場合、富裕層でも払いきれないほどの高額の慰謝料と2度と運命と会えなくなるリスクを背負う事になる。
「これ、規約読んでるか?」
「読んでようとなかろうと関係ありませんよ!こんなやつ破棄です破棄。」
「まぁ確かにこんな事書くような奴にまかり間違えて大人しいオメガが出会ったら悲劇にしかなんないしなぁ。」
下手をすれば都合のいい奴隷の完成であり、吹聴されようものなら今後のマッチングが悪い方に傾きかねない。
Mの抑止力があるとはいえそれだって万全ではなく、家庭内でDVなんて起こっても、被害者が大丈夫と言えば手が出せない。
ただMは弥生専用保護団体なので、基本的に他のオメガ保護はしていないが、弥生の安全に繋がるという事で非常時に動いてくれるだけだ。
弥生が不可解なプロフィールを前に首をひねっていると、飯塚が帰って来た。
「問題ないそうです。Mへの加入も済み、誓約書もサイン済みだそうです。」
2人は驚きのあまり言葉を失った。
「柊さん大丈夫ですか?」
心配そうに声を掛けてきたのは弥生専属役場職員の飯塚和葉だった。
「ああ、大丈夫も何も、あの男のゲスぶりには慣れてるから」
苦笑いしつつ、「打ち合わせしよ」と談話室に入って行った。
飯塚が急いで追いかけると、既に面談室のパソコンの前に座っていた。
設置されているパソコンの電源を入れつつ、飯塚が怒り冷めやらぬ様子で向かい側に座ると、「あの人ってなんなんですか? 失礼以上ですよ!!」と、きれいな顔を真っ赤にして怒ってくれている。
「あはは、17年前のこの町唯一のアルファ。と言っても高校を東京に行って向こうで就職、今に至るだけどな。」
「かなり優秀だったんですか?」
「んー、どちらかと言うと普通より上って感じかな、昔はこんな田舎にアルファなんて居なくて珍しいのもあったから、あいつは周りにちやほやされて育ったんだよ。ご両親はまともで教育には力を入れてたんだけど」
「ああ、なるほどそれ以上に周りが甘やかしたんですね。」
「よく分かったね。」
「まぁ、珍しくない事例なんで。」
「へぇー」
アルファといえど”知らないこと”を習いもせずに知る事はまず無い。
閃きを持って新しいものを作る人もいるが根底にあるのは、育って行く上での学びがもとになる。
それが分かっている親は教育熱心になる。
ところが、そうは思わない人間も多いのが現実で、アルファだから何でもできて、何でも知っている。
だから勉強なんて必要ないと、甘やかし、知識を与えず、厳しく教育する親を糾弾して引き剥がしに掛かるのだそうだ。
「なんか、どこも似たようなのがいるんだね。」
「まぁ、わからなくもないですけど。」
「そうなの?」
「アルファっていってもピンキリなんです。佐藤(弥生専属役場職員・結婚済み)クラスのアルファだと普通クラス、さっきの男は言い方悪いですけど、下の下って所です。ところが、中にはとんでもないアルファっているんです。能力はもちろん雰囲気っていうのかな。存在感が半端なくて神々しくて他を圧倒しちゃう。」
「そんな神々しいアルファがいんの?」
「いちゃうんです。」
いつも受け答えは慎重な飯塚さんが間髪容れずに断言するのが珍しい
あれ?断言するって事は……
「もしかして、会ったことある?」
飯塚さんは、はぁとため息を漏らすと「あります」と小さく言った。
「あんな人を見ちゃうと、アルファって何でも出来るのが当たり前って思っても仕方ないって思っちゃったんですよね。」
「マジか」
「マジです。」
どんな人なのか気になるが、そんなアルファと会う事さえないので話はここで切り上げてマッチングの相手を決める事にする。
「ここ何年か中四国関西の方のマッチングが多くて苦情が来てるんですよね。」
「あ~、確かに地域希望なしで回しちゃうとそうなるか。」
弥生のマッチングの決め方は他の登録者とは違う方法で行われる。
他の登録者は自分のプロフィールと相手のプロフィールから相性のいい相手をマッチング担当者と本人が選んでお見合いするのに対して、弥生の場合は自分のというより、お見合い相手の成婚率を上げる事が目的の為PCがランダムに選出して、相手のプロフィールは選出されてから分かるシステムになっている。
一応、希望入力欄があるのだが、いつも空白のままEnterをポンポンと押してしまう事で、近隣方面でマッチングが成立してしまうのだ。
ちなみに、無機質な音がしてポンと相手を映し出すだけというのが面白くないとだだをこねて、視覚的刺激要素としてルーレットを回す様な画面が表示されるようになった。画像的にはルーレットが回り弥生がEnterを押すと止まるだけで、PCが勝手に選出するためはっきり言って意味はない。それでも、住んでいるところを中心にセッティングされているのか余程の事がない限り遠く離れた場所を指定してくることがない。
「仕方ない、今回から各方面ばらけさせて地域指定入れて回すか~。」
「どこ指定します?」
「ん~、どこって関東の方がいいんじゃない?」
「いいんですか?」
「はは、だって苦情いっぱい来てるのって多分関東、しかも東京あたりだよね。違う?」
「う~~、そうなんですけど。」
関東方面を嫌うのは、さっきの押しかけゲス同級生のせいで、関東の方に恨みがあるわけではない。第一、会ってその日で終わり、長くても3日程度で終わるのだから特に問題はない。
ホテルに泊まるのが好きな弥生にとってはちょっとした観光気分だ。
まさか、ピンポイントであのゲスに会うことはないだろう。
「なんで、東京と大阪って張り合うんですかね。」
後ろから突然聞こえた声に振り向くと、ゲス同級生を放り出した弥生専属役場職員、佐藤 一瑠《いちる》がいた。
「張り合ってんの?」
「張り合ってるでしょう?ここんとこ大阪中心の見合いが多くてその都度苦情入れてくるんですよ、しかも、東京が首都なのにってよくわかんないへりくつ言って、長時間グチグチグチグチと。」
どうやら、かなりイライラさせられたらしい。
「なんかごめんな。」
「弥生さんのせいじゃないんですけど!腹立つのは上の連中です。」
「ははは。」
「佐藤、弥生さんじゃなくて”柊さん”でしょ!」
注意されても何のその、「そうでしたー」と棒読みのセリフで飯塚の横の席に腰掛ける。
「まぁ、とりあえずやっちゃいます?」
「そうだね。」
飯塚が希望欄に広範囲の関東ではなく、東京と入力したのを確認して、弥生がルーレットを回す。
出てきた写真に「「「えっ?」」」と三人の声が重なる。
出てきたのは若い男だった、アルファだから容姿はもちろんいい。
ただちょっと気になる点があった。
「これ、隠し撮り?」
そう、明らかに仕事中の所を写真に撮っている。
マッチングでは本人が希望しない限り登録はされないが、これはいいのだろうか?
2人を見ると2人共困惑していた。
今までにない珍事だ。
「もう一回、回してみます?」
佐藤の案に賛成して回してみたが、既にPCのなかで決定事項なのか覆ることなく同じ男が表示された。
「ちょっと確認してきます。」
飯塚が席を離れている間に、佐藤と一緒に相手のプロフィールをチェックしていく。
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西園寺 蒼紫
27歳
身長187cm
職業 会社員
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相手の事に口を出さない静かな性格。穏やかな結婚を希望、子供は最低スペアを考え2人希望。自分を立て、前に出過ぎず、文句を言わず、家事育児をこなし、節約を心がけ、こちらの事に口出ししない、結婚後は家庭に入り外には出ない大和撫子希望。仕事をしているので生活面の心配は不要。
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読み上げていく佐藤の頬は引きつり、こめかみがピクピクと痙攣する。
わかるわかるぞ、流石にこのプロフィールはない。
普通のマッチングでもありえない。
断言するがまず相手が見つからないだろう。
そのうえ、弥生が関わるマッチングを希望しているにしてはちょっと……いや、だいぶおかしい。
基本的に見合いをするのは弥生だが、結婚相手として会うわけじゃなく、あくまでその後の運命のオメガに出会う確率を上げる為の見合いだ。
オメガの安全の為、事細かな規約を読み、理解し、オメガ保護(基本的に弥生の保護)を掲げるMへの加入の有無も聞かれるはずだ。
その中には、結婚相手の人格否定、拘束、強制等の禁止、理想の押し付けの禁止、そんな事を行わないと言う誓約書まで書かされる上、Mの事も細かく説明を受ける。
規約に反した場合、富裕層でも払いきれないほどの高額の慰謝料と2度と運命と会えなくなるリスクを背負う事になる。
「これ、規約読んでるか?」
「読んでようとなかろうと関係ありませんよ!こんなやつ破棄です破棄。」
「まぁ確かにこんな事書くような奴にまかり間違えて大人しいオメガが出会ったら悲劇にしかなんないしなぁ。」
下手をすれば都合のいい奴隷の完成であり、吹聴されようものなら今後のマッチングが悪い方に傾きかねない。
Mの抑止力があるとはいえそれだって万全ではなく、家庭内でDVなんて起こっても、被害者が大丈夫と言えば手が出せない。
ただMは弥生専用保護団体なので、基本的に他のオメガ保護はしていないが、弥生の安全に繋がるという事で非常時に動いてくれるだけだ。
弥生が不可解なプロフィールを前に首をひねっていると、飯塚が帰って来た。
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