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15.再マッチング
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ホテル常駐の医者に診てもらい、首に残った手形を隠す為に包帯が巻かれた以外が特に処置はなく、ただ、帰り際に心療内科を受ける様にと言われた。
ただ、不思議と恐怖はなく無性に蒼紫に会いたい、たった一度触れただけの温もりに包まれたい思いが強く、それに戸惑う。
「弥生さん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫、なんか不思議と頭はっきりしてて。」
何かピンと張っているような緊張感があるが、不快な感じとも違う気がする。
「弥生、今は興奮状態にあるから恐怖を感じてないように思うだけだ。」
「そうですよ、あんなこわい思いして平気なんて事ないですから。」
板垣の携帯がなり、通話の為に離れる。
「佐藤君ごめんな、佐藤君の言う通り部屋に戻ってたらこんな事にならなかったのに。」
「いえ、今回の事は誰も予想がつきませんでした。遅いと感じて駆けつけた時に想定してたのは,”廊下”でのトラブルでした。部屋のなかは安全と確認を怠ったこちらの責任です。」
「でも、受け付けから先は宿泊客しか駄目っていってたし、確認のしようがないって。」
「弥生、明日の護衛だが引き続き私が担当する事になった。」
「え?本当ですか?」
いつも1日毎に変わっていた護衛役が八重垣に引き続き板垣にも連続で担当して貰えるとは思わず、笑顔が溢れる。
「ああ、それでもう一人いるんだが。」
「?」
「私のパートナーも一緒だ。」
「えっ!」
「パートナーの方に初めて会いますね!」
「板垣さん、パートナーってオメガでしょう、何しに来るんです?」
佐藤の疑問も最もだった。
守る対象が2人になるのを懸念しているのは分かるが、もう少しオブラートに包んで欲しい。
「心配しなくても大丈夫だよ、私のパートナーはうちの会社でもNo.2の実力者でガードのプロだ、自分の身くらい自分で守れるよ。」
「え~と会社って?」
「うちは警備の会社だよ、ただ、戦闘関係のプロフェッショナルを取りまとめていてね。主にVIPの身辺警護や要人警護にも駆り出される事が多いね。」
「え?パートナーですよね。」
「おや、おかしいかい?」
佐藤が疑問に思うのも最もだった。
アルファのオメガに対する執着は一般人には想像出来ないくらい激しい。
人によっては外に出すことだけでなく、家政婦とも口をきいてほしくないと閉じ込めるアルファが多数いる。
Mのメンバーの中にもいないとは言わないが、殆どはパートナーが自由にする事を許容しているアルファが多い。
「佐藤君、Mのパートナーってほとんど外で働いてるんだ。ちなみに八重垣さん所の奥さんは第二秘書だよ。」
「えー、大丈夫なんですかそれ?」
「?」
「仕事中にムラムラしたり、あ、実録!?秘書としゃ!っっっ」
全部言う前に思いっきり板垣に足を踏みつけられた。
佐藤が悶絶しているが、流石に庇う気はない。
なんだか、話をしていることで緊張感が消えてきて、やけに研ぎ澄まされたような感覚が和らいだ。
「しかし、運動どころではなくなってしまったな。」
「いえ、あの男には業腹ですが汗も思いがけずかきましたし、いい経験になりました。」
しまったと痛ましそうな視線を送る板垣に、弥生は笑顔で続ける。
「ずっと何事もなくすごす事が多かったので、防衛意識が疎かになってるって気づけました。」
心配そうな板垣を安心させたくて対策を提案してみる。
「まぁ、今日みたいなわがままを言わない方がいいという教訓になりましたね。」
板垣はしずかに首を振り、手を取り優しく包み込む。
「弥生それは違う。本来君は自由に生きるべきなんだ、今日のことだってわがままでも何でもない、人として普通の欲求だよ。」
「でも。」
「君は特別なオメガだ、もう気が付いていると思うが手に入れたいと思ってる連中がいて虎視眈々と狙っている、それでも、自由に人生を楽しんで生きて欲しい、これはM全体の総意だ。諦める事等何一つないんだよ。」
言ってる事はわかる、わかるけど……護衛さえ入れない所だと分かった時点で諦めていればこんな事にはならなかった。
黙り込んでしまった弥生に、板垣は怒るような事はない。
「すぐに分かる必要はないよ、今までの価値観を変える事は難しいのは経験上よく分かっているからね。」
「……すみません。」
「謝る必要もない、それに君はそう遠くない未来欲しいものを手に入れるしね。」
「?」
予言の様な言葉をどういう事か聞き返そうと思ったら佐藤のえっという声に遮られた。
「はい………はい、分かりました。」
「何かあったのかい?」
神妙な顔の佐藤は「弥生さん」といつになく真剣な声で「明日なんですが、急遽マッチングがくまれました。」
「そっか………」
ショックだった。
ショックを受けてる自分に驚きながらそれでも顔を上げる、笑顔で。
「今度はどんな人だろうな。」
「……西園寺蒼紫」
「………」
「西園寺蒼紫がねじ込んできました。」
「本人がねじ込んできたのかい?本家を使わず?」
「本人がです。」
ぽかんとした後、徐々に顔が熱くなってくるのがわかる。
「くっくく、ふっふふ、あはははは!」
「板垣さん!笑い事じゃないですよ!」
「いいじゃないか!ふっ、はははっ!今日の今日でか、会いにくる前に既に手は打っていたということか!」
「まったくあの男!待てが出来ないんですか!?円滑に事が運ぶように手を回してる最中なのに!」
「何言ってるんだい、本気を出したアルファの恐ろしさは自身が実証済みだろう。」
惚れたオメガを全力で囲い込むのはアルファの本能だ。
それはどんなに穏やかなアルファでも同じ。
「弥生さん!っっ!」
「あ、な、なに?」
真っ赤になってる弥生を見て佐藤は言葉を詰まらせた。
「番犬君、馬に蹴られたくはないだろう、さっさと予定を組んでしまいたまえ。」
「くっそっ。」
「さあ、弥生明日は美しく整えないとね。自分で選ぶかい?」
普段おしゃれとは縁遠い弥生には難題だった、「うー、無理ですー。」と早々に白旗を上げる。
「私が選ぶと彼の琴線に触れてしまうが……、まあいいだろう。」
「弥生さん、明日10時にラウンジのカフェで待ち合わせです。」
「マッチングでその時間とは珍しいね。」
大体、11時位で昼食を取りながらが多い。
「何言ってるんです、向こうが9時とか言いやがるからこれでも時間ずらさせたんですよ。」
「ほお、よく納得したね。」
「身支度に時間がかかると言ったら了承しましたよ。」
「ああ、なる程、流石にそこは朴念仁ではなかったか。」
「弥生さん……」
「佐藤君……、明日はよろしく!」
にっこり微笑むと胸を押さえてへたりこんだ。
「うぅぅぅ~。」
「え?大丈夫?」
何が起こったのかと駆け寄るが、「弥生さんが、弥生さんが~」と意味不明な事を言っていたのでそのまま放置した。
「さあ、バカはほっといて服をチェックしておこうか。」
「はい!よろしくお願いします!」
クローゼットを開ければずらりと並ぶブランドのスーツからカジュアルまで幅広いラインナップの洋服達、そこから弥生に合う洋服をチョイスしていく。
小物も選び終える頃には随分遅い時間になっていたので板垣にお詫びを言うと笑顔で大丈夫と言われた。
明日朝6時に支度を手伝いにくるというのを断ったがあげられる準備の多さに折れて、板垣にお願いした。
一人になって思い返せば”今日は色々な事があったなぁ”の一言につきる。
一番に思い出すのは蒼紫の温かさ。
言ってくれた言葉から沸き起こった歓喜
彼と改めてマッチングをすれば、きっと運命の人は現れるだろう。
それでも、彼から贈られた言葉と温もりを糧にきっと生きていけるから、運命が現れるその瞬間までは一緒にいてもいいだろうか。
弥生は無意識に手を組み神に祈った。
ただ、不思議と恐怖はなく無性に蒼紫に会いたい、たった一度触れただけの温もりに包まれたい思いが強く、それに戸惑う。
「弥生さん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫、なんか不思議と頭はっきりしてて。」
何かピンと張っているような緊張感があるが、不快な感じとも違う気がする。
「弥生、今は興奮状態にあるから恐怖を感じてないように思うだけだ。」
「そうですよ、あんなこわい思いして平気なんて事ないですから。」
板垣の携帯がなり、通話の為に離れる。
「佐藤君ごめんな、佐藤君の言う通り部屋に戻ってたらこんな事にならなかったのに。」
「いえ、今回の事は誰も予想がつきませんでした。遅いと感じて駆けつけた時に想定してたのは,”廊下”でのトラブルでした。部屋のなかは安全と確認を怠ったこちらの責任です。」
「でも、受け付けから先は宿泊客しか駄目っていってたし、確認のしようがないって。」
「弥生、明日の護衛だが引き続き私が担当する事になった。」
「え?本当ですか?」
いつも1日毎に変わっていた護衛役が八重垣に引き続き板垣にも連続で担当して貰えるとは思わず、笑顔が溢れる。
「ああ、それでもう一人いるんだが。」
「?」
「私のパートナーも一緒だ。」
「えっ!」
「パートナーの方に初めて会いますね!」
「板垣さん、パートナーってオメガでしょう、何しに来るんです?」
佐藤の疑問も最もだった。
守る対象が2人になるのを懸念しているのは分かるが、もう少しオブラートに包んで欲しい。
「心配しなくても大丈夫だよ、私のパートナーはうちの会社でもNo.2の実力者でガードのプロだ、自分の身くらい自分で守れるよ。」
「え~と会社って?」
「うちは警備の会社だよ、ただ、戦闘関係のプロフェッショナルを取りまとめていてね。主にVIPの身辺警護や要人警護にも駆り出される事が多いね。」
「え?パートナーですよね。」
「おや、おかしいかい?」
佐藤が疑問に思うのも最もだった。
アルファのオメガに対する執着は一般人には想像出来ないくらい激しい。
人によっては外に出すことだけでなく、家政婦とも口をきいてほしくないと閉じ込めるアルファが多数いる。
Mのメンバーの中にもいないとは言わないが、殆どはパートナーが自由にする事を許容しているアルファが多い。
「佐藤君、Mのパートナーってほとんど外で働いてるんだ。ちなみに八重垣さん所の奥さんは第二秘書だよ。」
「えー、大丈夫なんですかそれ?」
「?」
「仕事中にムラムラしたり、あ、実録!?秘書としゃ!っっっ」
全部言う前に思いっきり板垣に足を踏みつけられた。
佐藤が悶絶しているが、流石に庇う気はない。
なんだか、話をしていることで緊張感が消えてきて、やけに研ぎ澄まされたような感覚が和らいだ。
「しかし、運動どころではなくなってしまったな。」
「いえ、あの男には業腹ですが汗も思いがけずかきましたし、いい経験になりました。」
しまったと痛ましそうな視線を送る板垣に、弥生は笑顔で続ける。
「ずっと何事もなくすごす事が多かったので、防衛意識が疎かになってるって気づけました。」
心配そうな板垣を安心させたくて対策を提案してみる。
「まぁ、今日みたいなわがままを言わない方がいいという教訓になりましたね。」
板垣はしずかに首を振り、手を取り優しく包み込む。
「弥生それは違う。本来君は自由に生きるべきなんだ、今日のことだってわがままでも何でもない、人として普通の欲求だよ。」
「でも。」
「君は特別なオメガだ、もう気が付いていると思うが手に入れたいと思ってる連中がいて虎視眈々と狙っている、それでも、自由に人生を楽しんで生きて欲しい、これはM全体の総意だ。諦める事等何一つないんだよ。」
言ってる事はわかる、わかるけど……護衛さえ入れない所だと分かった時点で諦めていればこんな事にはならなかった。
黙り込んでしまった弥生に、板垣は怒るような事はない。
「すぐに分かる必要はないよ、今までの価値観を変える事は難しいのは経験上よく分かっているからね。」
「……すみません。」
「謝る必要もない、それに君はそう遠くない未来欲しいものを手に入れるしね。」
「?」
予言の様な言葉をどういう事か聞き返そうと思ったら佐藤のえっという声に遮られた。
「はい………はい、分かりました。」
「何かあったのかい?」
神妙な顔の佐藤は「弥生さん」といつになく真剣な声で「明日なんですが、急遽マッチングがくまれました。」
「そっか………」
ショックだった。
ショックを受けてる自分に驚きながらそれでも顔を上げる、笑顔で。
「今度はどんな人だろうな。」
「……西園寺蒼紫」
「………」
「西園寺蒼紫がねじ込んできました。」
「本人がねじ込んできたのかい?本家を使わず?」
「本人がです。」
ぽかんとした後、徐々に顔が熱くなってくるのがわかる。
「くっくく、ふっふふ、あはははは!」
「板垣さん!笑い事じゃないですよ!」
「いいじゃないか!ふっ、はははっ!今日の今日でか、会いにくる前に既に手は打っていたということか!」
「まったくあの男!待てが出来ないんですか!?円滑に事が運ぶように手を回してる最中なのに!」
「何言ってるんだい、本気を出したアルファの恐ろしさは自身が実証済みだろう。」
惚れたオメガを全力で囲い込むのはアルファの本能だ。
それはどんなに穏やかなアルファでも同じ。
「弥生さん!っっ!」
「あ、な、なに?」
真っ赤になってる弥生を見て佐藤は言葉を詰まらせた。
「番犬君、馬に蹴られたくはないだろう、さっさと予定を組んでしまいたまえ。」
「くっそっ。」
「さあ、弥生明日は美しく整えないとね。自分で選ぶかい?」
普段おしゃれとは縁遠い弥生には難題だった、「うー、無理ですー。」と早々に白旗を上げる。
「私が選ぶと彼の琴線に触れてしまうが……、まあいいだろう。」
「弥生さん、明日10時にラウンジのカフェで待ち合わせです。」
「マッチングでその時間とは珍しいね。」
大体、11時位で昼食を取りながらが多い。
「何言ってるんです、向こうが9時とか言いやがるからこれでも時間ずらさせたんですよ。」
「ほお、よく納得したね。」
「身支度に時間がかかると言ったら了承しましたよ。」
「ああ、なる程、流石にそこは朴念仁ではなかったか。」
「弥生さん……」
「佐藤君……、明日はよろしく!」
にっこり微笑むと胸を押さえてへたりこんだ。
「うぅぅぅ~。」
「え?大丈夫?」
何が起こったのかと駆け寄るが、「弥生さんが、弥生さんが~」と意味不明な事を言っていたのでそのまま放置した。
「さあ、バカはほっといて服をチェックしておこうか。」
「はい!よろしくお願いします!」
クローゼットを開ければずらりと並ぶブランドのスーツからカジュアルまで幅広いラインナップの洋服達、そこから弥生に合う洋服をチョイスしていく。
小物も選び終える頃には随分遅い時間になっていたので板垣にお詫びを言うと笑顔で大丈夫と言われた。
明日朝6時に支度を手伝いにくるというのを断ったがあげられる準備の多さに折れて、板垣にお願いした。
一人になって思い返せば”今日は色々な事があったなぁ”の一言につきる。
一番に思い出すのは蒼紫の温かさ。
言ってくれた言葉から沸き起こった歓喜
彼と改めてマッチングをすれば、きっと運命の人は現れるだろう。
それでも、彼から贈られた言葉と温もりを糧にきっと生きていけるから、運命が現れるその瞬間までは一緒にいてもいいだろうか。
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