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60.格好いい人
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「ああ、弥生明日、お隣引っ越してきた人が挨拶に来られるから。」
「お隣?」
そう言えば新しい家が隣に建ってたけど。
「まだ建築中じゃなかった?」
「うちの隣じゃないのよ。」
「ん?」
「アパートの方の隣。」
「へぇ、あの部屋人が入ったんだ。」
2階建てのアパート、弥生の隣は実は事故物件だ。
一人暮らしの老人がそこで亡くなってからというもの借り手が見つかっていない。
地元では有名な話で勿論弥生も知っているが防犯上の理由で隣の角部屋を希望したのだ。
「もしかして、町外の人?」
「そうそう、東京から来たんですって。」
「へぇ。」
最近は色んな所から移住が増えているが、そのほとんどは家を買ってる場合が多い。
「出張かな。」
「違うの、マンションに入居予定らしいのよ。早目にこちらに慣れておきたいからってこちらに来たらしいわ。」
「こんな田舎にマンションなんてあったっけ?」
「まだ、建ちもしてないわ。」
「建ちもしてないのに入居予定なの?」
「もう抽選がはじまってて申込み済みですって。」
「その人騙されてない?」
マンションともなると建築の申請時に地元民の耳に入らないわけもないのにそんな話聞いたこともない。
しかもまだ、建築もはじまってない。
なのに抽選って。
あきらかに詐欺の匂いが漂っている。
「それがねぇ、どうもほんとにマンションが建つらしいの。」
「そうなの?どこに?」
「高原から市内に行く途中に元研究施設があったでしょう。」
「ああ、医療品の研究所。」
確かガン等の病気に効く医薬関係の研究所だった、研究ではかなり有名だったが経営面が駄目で経営破綻した所だったはずだ。
他の同系列に吸収されて研究所は閉められた。
市内から伸びる道から横道に入って奥に入るので道からも高原の住宅地からも見えないが、高原内の青空市やマーケットからも近く、市内に行くにも車をまっすぐ走らせればいいので立地的にはいいかもしれない。
「どんなマンションだろうね。」
多分入ることはないだろうけど、野次馬根性がうずく。
「お母さんも気になってるの。」
「ちなみに隣の建築中のって?」
「あそこは美穂ちゃんの所。」
「え?」
「美穂ちゃん3人目妊娠中なのよ。それで佐藤君が隣に引っ越しますって東京にいるときに教えてくれて。聞いてない?」
「え?聞いてない。」
佐藤の事だ、絶対面白がって教えなかっただけだろう。
「美穂ちゃんこんな遅くまで大丈夫?」
もう11時も近い時間帯だ。
妊婦さんには辛い時間じゃないだろうか。
「大丈夫、大丈夫。まだつわりもないし普通と変わらないの。」
「そっか、でも3人目か。」
あんなに可愛い天使がもう一人増えるという事実に自然と笑顔になる。
「美穂ちゃん、おめでとう。」
「ありがとう。………ごめんね。」
「何が?」
謝る必要なんてあるだろうか?
「弥生ちゃんの実家なのに、一瑠が心配症で弥生さんのご両親の近くならあたしが安心出来るだろうって。勝手に家建てちゃって。」
「気にしないで、美穂ちゃんが近くに来てくれると俺も嬉しいよ。」
実は弥生は美穂の家族について何も知らない。
それとなく、佐藤が美穂ちゃんが辛い環境だったと言っていたので自然とその話題から遠ざかっていたというのもある。
それに過去のことなのだ、知ったところで弥生がどうこう出来る事はないだろう。
それより近くで親しい人が幸せになってくれるのが嬉しい。
「美穂ちゃんも家族同然だから遠慮なんてしないでよ、遠慮される方が悲しいよ」
「うん、うん。ありがとう。」
「あ!一瑠君には美穂ちゃんが知ってるって内緒ね。」
「え?なんで?」
「一瑠君、美穂ちゃんに内緒で家建てたのよ。美穂ちゃん知らなくて一瑠君が意味深なこと言って不安がらせてたのよ。」
「意味深って?」
「異動でどこ行くか分からないって、まあ確かに公務員ですもの、異動はあるけどどこに行くか、いつ行くかも分からないって。でも、たぶん知ってたのよ。じゃあなきゃうちの横に家なんて建てるわけないんだから。」
「あれ、でもどこに行くかは発表まで分からないんじゃない?」
「内示は1、2週間前に出るの。でも、今回は特殊な異動だから異動先と時期はまだ開示されてないって。」
佐藤の事だ、すでに色々手を回して、絶対家が建ち次第、希望したところに異動になるだろうな。
今のまま本所勤めになるか、支所勤めになるかは分からないが、美穂ちゃんが不安に思うように誘導した可能性もあるから、ちょっと黙っているくらいなら、軽いお灸をすえたくらいになるだろう。
「分かった。俺から言うことはないから安心して。」
「ありがとう、弥生ちゃん。」
「話は戻るけど、お隣さんなんだけど。」
「ああ、挨拶だっけ?」
「そうそう、明日ランチでもどうかって言われててね。」
「あいさつに来るって話じゃなかったっけ?」
「そのついでにランチの話も出たのよ。」
なぜ、挨拶に来てランチの話になるのかさっぱりわからないが。
「もう、会社も辞めたしいいわよね。」
まぁ、もうフェロモンも出てないしベータには効かないというのも判明したから問題はないか。
「いいよ。」
「ほんと!やったわ、明日何着ていこうかしら。美穂ちゃん、ちゃんと用意してきてる?」
「ばっちりです!弥生ちゃんなら絶対そう言ってくれるって思って用意してきてます。」
……何か、おかしい気がする。
「弥生、明日桜ちゃんと美也子ちゃんを送って行ってね。」
「そりゃ、いいけど。」
明日の用意の事で盛り上がる二人に確実に二人も一緒だな、と確信した。
普通に考えてそれがおかしいことだとわかる二人がその事を受け入れているので、相手から申し出があった可能性も高い。
まあ、相手が気まずそうにしたらさっさと引き上げればいいし、何とかなるだろう。
「ちなみに、明日って何時?」
「11時半に待ち合わせてるの。」
じゃあ、ゆっくりできるか。
「了解。」
「あ、明日美容院予約してあるから。」
「そうなの?送り必要?」
「何言ってるの?あなたもしてもらうのよ。」
「え?」
「先に行ってやってもらってるから、二人を送ったら来てね。いつものところだから。あ、一番いい服着て来てね。」
「えー、そこまで必要?」
「弥生ちゃん!」
やけに力の入った声で美穂は真剣にこちらをみる。
「どうしたの?美穂ちゃん。」
「かっこいいの!」
「え?」
「そうなの、すごくかっこいいのよ。」
「芸能人も真っ青なくらいかっこいいの。」
力説する2人が実はミーハーだと判明した瞬間だった。
「お隣?」
そう言えば新しい家が隣に建ってたけど。
「まだ建築中じゃなかった?」
「うちの隣じゃないのよ。」
「ん?」
「アパートの方の隣。」
「へぇ、あの部屋人が入ったんだ。」
2階建てのアパート、弥生の隣は実は事故物件だ。
一人暮らしの老人がそこで亡くなってからというもの借り手が見つかっていない。
地元では有名な話で勿論弥生も知っているが防犯上の理由で隣の角部屋を希望したのだ。
「もしかして、町外の人?」
「そうそう、東京から来たんですって。」
「へぇ。」
最近は色んな所から移住が増えているが、そのほとんどは家を買ってる場合が多い。
「出張かな。」
「違うの、マンションに入居予定らしいのよ。早目にこちらに慣れておきたいからってこちらに来たらしいわ。」
「こんな田舎にマンションなんてあったっけ?」
「まだ、建ちもしてないわ。」
「建ちもしてないのに入居予定なの?」
「もう抽選がはじまってて申込み済みですって。」
「その人騙されてない?」
マンションともなると建築の申請時に地元民の耳に入らないわけもないのにそんな話聞いたこともない。
しかもまだ、建築もはじまってない。
なのに抽選って。
あきらかに詐欺の匂いが漂っている。
「それがねぇ、どうもほんとにマンションが建つらしいの。」
「そうなの?どこに?」
「高原から市内に行く途中に元研究施設があったでしょう。」
「ああ、医療品の研究所。」
確かガン等の病気に効く医薬関係の研究所だった、研究ではかなり有名だったが経営面が駄目で経営破綻した所だったはずだ。
他の同系列に吸収されて研究所は閉められた。
市内から伸びる道から横道に入って奥に入るので道からも高原の住宅地からも見えないが、高原内の青空市やマーケットからも近く、市内に行くにも車をまっすぐ走らせればいいので立地的にはいいかもしれない。
「どんなマンションだろうね。」
多分入ることはないだろうけど、野次馬根性がうずく。
「お母さんも気になってるの。」
「ちなみに隣の建築中のって?」
「あそこは美穂ちゃんの所。」
「え?」
「美穂ちゃん3人目妊娠中なのよ。それで佐藤君が隣に引っ越しますって東京にいるときに教えてくれて。聞いてない?」
「え?聞いてない。」
佐藤の事だ、絶対面白がって教えなかっただけだろう。
「美穂ちゃんこんな遅くまで大丈夫?」
もう11時も近い時間帯だ。
妊婦さんには辛い時間じゃないだろうか。
「大丈夫、大丈夫。まだつわりもないし普通と変わらないの。」
「そっか、でも3人目か。」
あんなに可愛い天使がもう一人増えるという事実に自然と笑顔になる。
「美穂ちゃん、おめでとう。」
「ありがとう。………ごめんね。」
「何が?」
謝る必要なんてあるだろうか?
「弥生ちゃんの実家なのに、一瑠が心配症で弥生さんのご両親の近くならあたしが安心出来るだろうって。勝手に家建てちゃって。」
「気にしないで、美穂ちゃんが近くに来てくれると俺も嬉しいよ。」
実は弥生は美穂の家族について何も知らない。
それとなく、佐藤が美穂ちゃんが辛い環境だったと言っていたので自然とその話題から遠ざかっていたというのもある。
それに過去のことなのだ、知ったところで弥生がどうこう出来る事はないだろう。
それより近くで親しい人が幸せになってくれるのが嬉しい。
「美穂ちゃんも家族同然だから遠慮なんてしないでよ、遠慮される方が悲しいよ」
「うん、うん。ありがとう。」
「あ!一瑠君には美穂ちゃんが知ってるって内緒ね。」
「え?なんで?」
「一瑠君、美穂ちゃんに内緒で家建てたのよ。美穂ちゃん知らなくて一瑠君が意味深なこと言って不安がらせてたのよ。」
「意味深って?」
「異動でどこ行くか分からないって、まあ確かに公務員ですもの、異動はあるけどどこに行くか、いつ行くかも分からないって。でも、たぶん知ってたのよ。じゃあなきゃうちの横に家なんて建てるわけないんだから。」
「あれ、でもどこに行くかは発表まで分からないんじゃない?」
「内示は1、2週間前に出るの。でも、今回は特殊な異動だから異動先と時期はまだ開示されてないって。」
佐藤の事だ、すでに色々手を回して、絶対家が建ち次第、希望したところに異動になるだろうな。
今のまま本所勤めになるか、支所勤めになるかは分からないが、美穂ちゃんが不安に思うように誘導した可能性もあるから、ちょっと黙っているくらいなら、軽いお灸をすえたくらいになるだろう。
「分かった。俺から言うことはないから安心して。」
「ありがとう、弥生ちゃん。」
「話は戻るけど、お隣さんなんだけど。」
「ああ、挨拶だっけ?」
「そうそう、明日ランチでもどうかって言われててね。」
「あいさつに来るって話じゃなかったっけ?」
「そのついでにランチの話も出たのよ。」
なぜ、挨拶に来てランチの話になるのかさっぱりわからないが。
「もう、会社も辞めたしいいわよね。」
まぁ、もうフェロモンも出てないしベータには効かないというのも判明したから問題はないか。
「いいよ。」
「ほんと!やったわ、明日何着ていこうかしら。美穂ちゃん、ちゃんと用意してきてる?」
「ばっちりです!弥生ちゃんなら絶対そう言ってくれるって思って用意してきてます。」
……何か、おかしい気がする。
「弥生、明日桜ちゃんと美也子ちゃんを送って行ってね。」
「そりゃ、いいけど。」
明日の用意の事で盛り上がる二人に確実に二人も一緒だな、と確信した。
普通に考えてそれがおかしいことだとわかる二人がその事を受け入れているので、相手から申し出があった可能性も高い。
まあ、相手が気まずそうにしたらさっさと引き上げればいいし、何とかなるだろう。
「ちなみに、明日って何時?」
「11時半に待ち合わせてるの。」
じゃあ、ゆっくりできるか。
「了解。」
「あ、明日美容院予約してあるから。」
「そうなの?送り必要?」
「何言ってるの?あなたもしてもらうのよ。」
「え?」
「先に行ってやってもらってるから、二人を送ったら来てね。いつものところだから。あ、一番いい服着て来てね。」
「えー、そこまで必要?」
「弥生ちゃん!」
やけに力の入った声で美穂は真剣にこちらをみる。
「どうしたの?美穂ちゃん。」
「かっこいいの!」
「え?」
「そうなの、すごくかっこいいのよ。」
「芸能人も真っ青なくらいかっこいいの。」
力説する2人が実はミーハーだと判明した瞬間だった。
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