縁結びオメガと不遇のアルファ

くま

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62.不安

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 家庭料理と聞いていただけあって、馴染みの料理がテーブルに並ぶ。
 ただ、どれも一味工夫がされてこのあたりのお店では同じものはないだろう。

 弥生は気に入った料理を満喫していたが、他の3人は器用に料理を食べながら話が途切れることはない。
 話に加わったところで弥生がいう事は何もないと話を聞き流していた。

「柊さんは」
「はい!」
 突然話しかけられて勢いよく返事をしてしまう。
 篠宮はびっくりはしたようだが、すぐににこやかな表情になった。
「柊さんは、私に会いたいと思ってくださっていたと自惚れていいんでしょうか?」
 なぜ、そんな話になったのか。
 正面に座った2人を見るとやりきった感満載で頷いていた。
 ……聞き流さず、きちんと聞き、どんな返事をするべきか考えておくんだった。
「ええ、まあ。」
「本当ですか!」
 え?ちょっと待ってそこまで喜ばれる事?
 パァァァと見るからに明るくなった篠宮に焦る。焦るあまり余計なことを言ってしまう。
「会いたいなぁとは思ってました。」
 実際、中庭には何度も行った。
 そのたびに、諦めないとと強く思って、次の日も気が付けばあのベンチに行っていた。
 さらに増した笑顔に苦笑する。
「でも、ほらお互いの事って何も知らないでしょう。」
 だから、ここで諦め……
「これからお互いを知っていきましょう。」
「いえ、ほら篠宮さんはまだお若いですし。」
「私では駄目ですか?」
 しゅうんとなった篠宮の頭に垂れたケモミミが見えた気がした。
「いや、ちが、……そうなるのかな?」
 とっさに違うと言いかかったがなんとか軌道修正するとあきらかにがっくりしている。
 ただ、ここで期待を持たせる事は今後彼の為にならない。
 見てられなくて視線をずらすと目の前の母と美穂が目に入った。
 2人とも信じられないものを見る目で弥生を凝視していた、いたたまれなくなって視線を戻す。

「えっと、ほら俺はオメガじゃないし。」
 オメガだけどオメガじゃない、というなんとも中途半端な状態だけど、もうフェロモンもでないし断言してもいいだろう。
「オメガだから好きになったわけではありません。」
「子供、産めないし」
「問題ありません。」
「歳の差が」
「失礼ですが、柊さんはおいくつですか?」
「32、もうすぐ33になります。」
「私は27です。たった、5歳差ですね。気にしません。」
「ほら、俺の方がおじいちゃんになるのが早くて。」
「柊さんなら可愛いおじいちゃんになるでしょうね。」
「介護しないといけなくなるでしょう?」
「若いぶん、支えていけると思います。」
「俺、今無職で。」
「任せて下さい、柊さんだけでなくご両親も支えていける程の収入ならあります。」
「………。」
 なんだろう、この押しの強さ。
「篠宮さんはなんのお仕事を?」
 弥生が篠宮の事に興味を示した事で、垂れていた耳がピンと立った様な気がした。
「経営コンサルタントをしてます。こちらも私が携わって企画を進行させてます。」
「そうなんですか、すごいですね。」
「ご興味があるようでしたら、一緒にしてみられませんか?」
「え?」
「お仕事をされてないことを気にされるのでしたら、一緒にどうでしょうか?」
「いえいえ、ほら篠宮さんがそう言ってくれても会社の方々はそうは一緒にとはいかないでしょう。」
 さすがに好意を寄せてもらってもそれはないとわかる。
「大丈夫です。コンサルタント業は自営ですから柊さんは私が雇う事になります。」
 なんだか逃げられなくなりそうです。
「いえ、仕事はゆっくり探していきたいです。」
「そうですか。」
 残念です。としおれた。
 かなり罪悪感が刺激される。
 どうしようと途方に暮れているとコホンと母が咳払いをした。
「ここも篠宮さんが関わっているんですね。」
「はい。若輩ながら任せていただいています。」
「弥生、案内してもらったら?」
「え?」
「あなたこういうところ好きでしょ。」
 さすが母、弥生がこういった公園のような場所が好きなのを把握している。
「そろそろ、か!?っっっ!」
 正面から蹴りを入れられた。
「案内してもらいなさい。」
「………はい。」
 母は強かった。
「篠宮さん、お願いしてもいいですか?」
「勿論です。」
 篠宮は席を立つと、手を差し出してきた。
 エスコートをしてくれるつもりだろうが一瞬躊躇するが、2人からの”断るな”という強い視線に負けてその手をとった。

 外は少し汗ばむ温度だが空は青く、過ごしやすい天気だ。
 改めて見回してみるとただ木が植えてあるだけではなく、花壇や芝生、歩道まで計算され過ごしやすくなっている。
 ベンチも風景に溶け込むように置かれていて休むだけでなく、そこで過ごす時間を楽しめるようになっていた。
 二人で散策中に質問をするが、さすがここの開発に携わっていると言っていただけあって詳しかった。
 植えられている木の種類もきちんと把握していた。

「篠宮さんは。」
「はい。」
「俺のどこがいいと思いますか?」
「それはお付き合いを前提に考えた時ですか?」
「はい。」
「全部、でしょうか。」
 昨日、自分が母と美穂に答えた内容と一緒で笑いがこみ上げる。
「全部。」
「はい、全部です。」
「柊さんは私と付き合うのに何が障害だと思いますか?」
 まるで、それを取り除けば付き合えるとでも言いたそうな質問に全部話そうと思った。
 弥生とそういった付き合いを望んでくれている事がわかるだけに、今抱えている問題を打ち明け、どうにもならない事を知ってもらった上で諦めてもらおう。

「そうですね、さっき俺はオメガじゃないと言いましたが問題を抱えたオメガです。」
「問題?」
「はい、フェロモン異常を起こしてオメガの機能をなくしたオメガなのでベータと同じなんです。」
「それが、問題ですか?」
 違う。
 そこが根本だが、ベータと同じになった事が問題じゃないとわかってる。
 口に出すのも恐ろしい考えだ、医者からこうだとはっきり言われたわけでもない。

「……俺はおそらくそんなに長く生きられません。」
「誰にそんなことを言われたんです?」
「はっきり、言われたわけではありませんが、おそらくそうです。」
「はっきり言われてないという事は確証はないという事ですね。」
「確証……そうですね。でも確信は持ってるかもしれません。」
 篠宮が理解できない様に眉を寄せる。
 それはそうだろうなと思う。
 医者にはっきり言われたわけでもなく、医者から言われたことから推測したことだ。
 確証なんてないし、きっと医者には心配のしすぎだと笑い飛ばされる可能性だってある。
「医者には年齢的にまた、発情期が来る可能性があるといわれました。発情期が来たらすぐ抑制剤を使用して医者にかかるようにと。その際どういった状態になるかは男オメガの場合症例が見つからなかったんでしょうね、わからないと言われました。」
「それだけで何か起こると判断する事はないでしょう。」
「篠宮さん、俺自分に当てはめて考えてみたんです。自分がもし発情期が来て放っておいたら死ぬかもしれない状況になった時に医者にかかって延命を望むか。」
 弥生は改めて篠宮に視線を合わせる。

「答えはNOです。」
「柊さん。」
「もし発情期が来たら今まで以上のつらい時期を迎えると思います、俺は医者にさえそんな姿を見られたくない。」
「やめてください。」
「今まで男性オメガで俺のような状態になった人が全くいない事はないと思います。なのに症例が一切ないのは発情期がなくなったことで喜び、再度来たことで絶望したのではないでしょうか。」

「柊さん、あなたは死を望むんですか?」
「いいえ、俺は死にたくないです。」
「では、一緒に生きてくれませんか?」
 黙り込んだ弥生に構わず篠宮は続ける。
「俺はあなたに好意を寄せています、いえ、はっきり言えばずっと一緒にいたい、笑って、泣いて、喧嘩もいいですね。二人でいろいろなことを経験して積み重ねていきたい。」
「よく、わかりません。」
「わからなくてもいいです。あなたが死ぬといえば私の未来もないと思ってください。」
「なにを!言ってるんです!」
「愛しい人を亡くしたアルファに未来はありません、あるのは緩やかな死です。」

「アルファ?」
「はい、俺はベータによく間違われますがアルファです。」
 弥生はとっさに離れようとしたが篠宮は弥生の腕を引き抱き込んだ。
「あなたを愛してます。そんなに生きられないというなら残りの人生を私に下さい。その代わり、私はあなたのものです。」
 抱き込まれているのに、すがられているような錯覚が起こるような抱擁に弥生はためらいながらも篠宮の背に手をまわした。

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感想 22

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