1 / 1
特オタ、異世界へ行く
しおりを挟む
子供の頃、何にでもなれると信じて疑わなかったあの頃。
皆がヒーローに憧れ、変身ポーズや技を真似していた。
だけど年齢を重ねるごとに皆空想から卒業して現実と向き合い、社会の一員として立派に人生を送っている。
ーそう、俺以外は。
「おい三条!なんだこの書類、寝ながら作ったのか?」
「いえ、新田課長に言われたようにデータを入れましたし、それに...」
「あぁ!?俺がいつそんなこと言ったよ!?とにかくこれ今すぐ仕上げろ!できるまで帰るんじゃねぇぞ!」
三条、と呼ばれた男の言葉を遮り新田が怒鳴り散らす。時刻はまもなく16時を過ぎようとした頃だった。
課長の説教が終わり、俺はようやく席についた。
「お疲れ様、大変だったね」
そう言って隣の席の九里さんが優しく微笑みつつチョコレートを一つ渡してくる。
同期入社のよしみか、彼女はいつも俺を気にかけてくれる。
お礼を言いつつ課長に言われた仕事に取り掛かる。さて、終電までに帰れるといいな...
「よーし、ようやく終わった」
時計を見ると22時を指していた。
うん、今日は早い方だな。
無人となりほぼ電気の消えたフロアを見まわし、帰宅の準備を急ぐ。
あのあと課長は定時で帰宅したためその分の仕事を押し付けられた。
「今日も夕食はカップ麺だな...」
電気を消し、真っ暗となったオフィスから早足で退出する。
「2,000円飲み放題、どうですか?」
駅へ向かう道中では客引きが誰彼構わず声をかけていた。
いや、正確に言うと俺以外誰彼構わずだ。死んだ目をした俺には目もくれず道を行ったり来たりしている。
そんな彼を横目に見つつ駅へ向かった。
「どうしてこんな事になったんだろうな」
電車に揺られながらふと窓に映った自分の顔を見て、無意識に言葉が出る。
数年前までは、課の雰囲気も和気あいあいとしており定時で帰れないことなどほとんどなかった。
しかし以前の課長が病に倒れ退職し、新しく赴任してきた現在の課長、新田によって課内の雰囲気は最悪と言って良いものとなっていた。
赴任早々自分ルールを押し付け、責任転嫁やミスの隠蔽を繰り返す。
そして1人をターゲットにした集中攻撃。この数年で辞めて行った人間は両手の指では数えきれない。そして次のターゲットは俺...
「辞めたいなぁ」
そう呟いた直後、電車が駅に到着した。
いつもの帰り道を急ぎ、自宅に到着する。
こんな時は趣味で発散するに限る。
着替えもそこそこにカップ麺にお湯を注ぎ、テレビをつけサブスクにログインし、動画を再生する。
「ブルーな気分の時はこれだよな」
画面の中では、ヒーローが悪役と戦い、華麗な必殺技でトドメを刺していた。
俺、三条レオは小さい頃からヒーローに憧れていた。近所でヒーローショーがあれば親にお願いして連れて行ってもらい、将来はヒーローになれると信じて疑わない時期があった。
その思いは小学生になり皆が特撮を子供が見るものだ、空想の出来事だと卒業してからも続いていた。
本物のヒーローになるためベルトや武器、変身アイテムを多くない小遣いで買い漁った。
そんな俺を皆が幼稚だなんだとバカにしたが周りになんと言われようが自分の好きを貫いた。
成人してからも気持ちは変わることはなく、むしろ経済力が増えた分通販限定の商品なども購入するようになっていた。
動画を見つつ着替えを済ませ、麺をすする。
現在放送中の最新話、しかも強化フォーム登場回だ。
もちろんアイテムは通販で購入済みだ。しかしタイミングが合わず受け取れていない。
「やっぱり宅配ボックス買うべきかな」
特撮玩具とそのダンボールに囲まれた部屋を見渡し、そう呟くと俺はベットに入った。
あぁ、明日、いや日付が変わったから今日か。今日もあの課長に会うと考えるだけで憂鬱だ。
いっそ特撮の世界で暮らせれば良いのに。
そんなあり得ない妄想をしつつ眠りに落ちた。
翌朝、目を覚ましてカーテンを開ける。
「...ん?なんか暗いな」
スマホの時計を見ると7時であったため、太陽は昇っているはずだが...
念の為傘を持って行くか。そんなことを考えつつ朝食を食べながらスマホで最新の情報を入手しようとする、が
「え?圏外になってるじゃん...通信障害かな...ってWi-Fiも切れてる?」
もちろん利用料金はしっかり毎月支払っている。通信会社に電話したいがそもそも圏外なので連絡手段がない。
繋がらないものは仕方がない。会社に行って空いた時間に電話してみるか...
スーツに着替えため息をつきながらドアを開ける。
ーそこに広がっていたのは、草木がうっそうと生い茂るジャングルだった。
「...は?」
間の抜けた声を出して辺りを見渡す。
周囲の家やコンビニなどが消えており、俺の一室だけがジャングルの中にある...?
「いや待て待て、これは夢だ」
リアルな夢を見ているに違いない。そう思い一度ドアを閉め再度開ける。
しかし景色は変わることなく、ジャングルのままであった。
「えー.......会社どうしよう」
こんな状況でも仕事のことを考えてしまう自分に嫌気を覚えつつ辺りの探索を開始する。
図鑑でしか見たことのないような草木が部屋の周囲を避けるように生えている。
ドッキリとかの類ではないだろう。俺にそんな事をしてくるような友人はいないし、何より気付かれずに部屋のものを運び出しここまで連れてくることなど不可能だ。
「!そうだ!ベルトとか大丈夫かな」
駆け足で部屋に戻り、確認する。
無くなっているものはなく、完璧な状態だった。
俺は再度部屋を出ようとして、立ち止まり近くにあった剣を手に取った。
1番好きな作品の主役が使用していた剣の実寸大のものだ。
サイズもさることながら、かなりの重量があるため護身用に使えるだろう。金額がアレなのでできれば使いたくはないが...
腰につけるホルダーと共に現状を把握するため外へ出る。
さて、どうするか。ひとまず人間を探す事にしよう。現状把握にはそれが1番だ。
しばらく歩いていると、後ろから足音が聞こえた。
よかった、人がいた。そう思い立ち止まり振り返る。
その瞬間、強い衝撃を受け地面に倒れる。
視界は赤く染まり、口の中は鉄と草が混じった最悪の味がする。
「#%${€+[|?」
謎の言語が聞こえ、角の生えた緑の巨体がこちらを覗き込み、ニヤッと笑う。
言葉はわからないが、俺のことを殴ったのはこの化け物だろう。
立ちあがろうとするが、足に力が入らない。なんとか持って来た剣を振り足に当てるがびくともしない。
その行為が癪に触ったのか化け物は叫び声を上げながらこちらを睨み、肩あたりを蹴り飛ばす。「うぐぁあああ!?」骨が軋む音がし、左腕は曲がってはいけない方向を向いている。
動ける右手で這って逃げようとするが、そんな悠長なことを許してくれるはずもなく足を掴まれ持ち上げられる。おいおい、細いとはいえ成人男性だぞ...それを軽々しく持ち上げやがって...
足を掴む手にさらに力が入り、地面に叩きつけられる。仰向けに倒れ、もはや寝返りを打つ力さえない。
大声を出して助けを呼ぼうにも痛みに邪魔され出たのは吐息のみだった。
化け物に視線をやると、持っていた棍棒を振り上げ、確実なトドメを刺そうとしているのが目に入る。
あれを回避することは今の俺には不可能だと言うことは体が1番わかっている。
あぁ...俺の人生ここで終わりか...
まだあの限定ベルトで遊んでないし、この前買った強化アイテムも触れてないし...後悔の念が次から次へと押し寄せてくるが、何よりこれから先のヒーローをこの目で見てみたかった、というものが1番大きかった。ちくしょう、殺すなら殺せ。そんでせめて美味しく食べてくれ。骨は武器にでも加工してくれ...
半ば覚悟を決め目をつぶる。
『戦え...戦え...』
うるせーよ、こっちはそれどころじゃないんだわ、今際の際なんだが
脳内に響く声に悪態をつく。
『その剣は飾りか』
飾りだよ、悪かったな。最推しであるこいつの近くで死ねるならまぁ良いか...
そうだ、最後に握らせてくれ...
そう思いつつ僅かに動く右手で剣を握ると、青い光を放ち眩しさに思わず薄目を開ける。化け物も光に怯んだようで少し後退する。
「...そうか...俺と、一緒に戦ってくれ!」
剣に向かって呟き、杖代わりにしつつ痛む体を無理やり起こし立ち上がる。アドレナリンだかエンドルフィンだかの力で、若干痛みが和らいでいる。さっきまで動けないと思っていたが、これが火事場の馬鹿力ってやつか...
再度こちらへ突進してくる化け物に対し、剣を軽く横に薙ぎ払う。
すると剣は纏った光を放出し、周囲の木や草、果ては化け物の体が真っ二つに切断される。
「すっげぇ威力だ...さすが最推しのひとつってとこか...」
敵は倒したが次また襲われれば命の保障はないだろう。安全な場所までいかなければならない。目の前にはなぜか離れていたはずの自身の部屋の扉が見えた。痛む体に鞭を打ち、
ふらふらと自身の部屋のドアを開け、玄関に倒れ込む。
命の危機から辛うじて逃げ出した体は再び痛みを警告し、これが現実であることを物語っていた。痛みに耐えられなかったのか、気がつくと意識を失っていた。
「...あれが次代の救世主、ですか」
木の影から姿を現した女性は呟き、ローブを被るとその場を後にする。
これは、1人の男が異世界で理想のヒーローを目指すために戦う物語、かもしれない
次回予告
「電波ないってことは見れないじゃん!続きが!!」
『私は神、知りたいこと教えてあげる』
「このならお前を倒せる!」
「あなたのような者を待っていました」
「...面白い」
皆がヒーローに憧れ、変身ポーズや技を真似していた。
だけど年齢を重ねるごとに皆空想から卒業して現実と向き合い、社会の一員として立派に人生を送っている。
ーそう、俺以外は。
「おい三条!なんだこの書類、寝ながら作ったのか?」
「いえ、新田課長に言われたようにデータを入れましたし、それに...」
「あぁ!?俺がいつそんなこと言ったよ!?とにかくこれ今すぐ仕上げろ!できるまで帰るんじゃねぇぞ!」
三条、と呼ばれた男の言葉を遮り新田が怒鳴り散らす。時刻はまもなく16時を過ぎようとした頃だった。
課長の説教が終わり、俺はようやく席についた。
「お疲れ様、大変だったね」
そう言って隣の席の九里さんが優しく微笑みつつチョコレートを一つ渡してくる。
同期入社のよしみか、彼女はいつも俺を気にかけてくれる。
お礼を言いつつ課長に言われた仕事に取り掛かる。さて、終電までに帰れるといいな...
「よーし、ようやく終わった」
時計を見ると22時を指していた。
うん、今日は早い方だな。
無人となりほぼ電気の消えたフロアを見まわし、帰宅の準備を急ぐ。
あのあと課長は定時で帰宅したためその分の仕事を押し付けられた。
「今日も夕食はカップ麺だな...」
電気を消し、真っ暗となったオフィスから早足で退出する。
「2,000円飲み放題、どうですか?」
駅へ向かう道中では客引きが誰彼構わず声をかけていた。
いや、正確に言うと俺以外誰彼構わずだ。死んだ目をした俺には目もくれず道を行ったり来たりしている。
そんな彼を横目に見つつ駅へ向かった。
「どうしてこんな事になったんだろうな」
電車に揺られながらふと窓に映った自分の顔を見て、無意識に言葉が出る。
数年前までは、課の雰囲気も和気あいあいとしており定時で帰れないことなどほとんどなかった。
しかし以前の課長が病に倒れ退職し、新しく赴任してきた現在の課長、新田によって課内の雰囲気は最悪と言って良いものとなっていた。
赴任早々自分ルールを押し付け、責任転嫁やミスの隠蔽を繰り返す。
そして1人をターゲットにした集中攻撃。この数年で辞めて行った人間は両手の指では数えきれない。そして次のターゲットは俺...
「辞めたいなぁ」
そう呟いた直後、電車が駅に到着した。
いつもの帰り道を急ぎ、自宅に到着する。
こんな時は趣味で発散するに限る。
着替えもそこそこにカップ麺にお湯を注ぎ、テレビをつけサブスクにログインし、動画を再生する。
「ブルーな気分の時はこれだよな」
画面の中では、ヒーローが悪役と戦い、華麗な必殺技でトドメを刺していた。
俺、三条レオは小さい頃からヒーローに憧れていた。近所でヒーローショーがあれば親にお願いして連れて行ってもらい、将来はヒーローになれると信じて疑わない時期があった。
その思いは小学生になり皆が特撮を子供が見るものだ、空想の出来事だと卒業してからも続いていた。
本物のヒーローになるためベルトや武器、変身アイテムを多くない小遣いで買い漁った。
そんな俺を皆が幼稚だなんだとバカにしたが周りになんと言われようが自分の好きを貫いた。
成人してからも気持ちは変わることはなく、むしろ経済力が増えた分通販限定の商品なども購入するようになっていた。
動画を見つつ着替えを済ませ、麺をすする。
現在放送中の最新話、しかも強化フォーム登場回だ。
もちろんアイテムは通販で購入済みだ。しかしタイミングが合わず受け取れていない。
「やっぱり宅配ボックス買うべきかな」
特撮玩具とそのダンボールに囲まれた部屋を見渡し、そう呟くと俺はベットに入った。
あぁ、明日、いや日付が変わったから今日か。今日もあの課長に会うと考えるだけで憂鬱だ。
いっそ特撮の世界で暮らせれば良いのに。
そんなあり得ない妄想をしつつ眠りに落ちた。
翌朝、目を覚ましてカーテンを開ける。
「...ん?なんか暗いな」
スマホの時計を見ると7時であったため、太陽は昇っているはずだが...
念の為傘を持って行くか。そんなことを考えつつ朝食を食べながらスマホで最新の情報を入手しようとする、が
「え?圏外になってるじゃん...通信障害かな...ってWi-Fiも切れてる?」
もちろん利用料金はしっかり毎月支払っている。通信会社に電話したいがそもそも圏外なので連絡手段がない。
繋がらないものは仕方がない。会社に行って空いた時間に電話してみるか...
スーツに着替えため息をつきながらドアを開ける。
ーそこに広がっていたのは、草木がうっそうと生い茂るジャングルだった。
「...は?」
間の抜けた声を出して辺りを見渡す。
周囲の家やコンビニなどが消えており、俺の一室だけがジャングルの中にある...?
「いや待て待て、これは夢だ」
リアルな夢を見ているに違いない。そう思い一度ドアを閉め再度開ける。
しかし景色は変わることなく、ジャングルのままであった。
「えー.......会社どうしよう」
こんな状況でも仕事のことを考えてしまう自分に嫌気を覚えつつ辺りの探索を開始する。
図鑑でしか見たことのないような草木が部屋の周囲を避けるように生えている。
ドッキリとかの類ではないだろう。俺にそんな事をしてくるような友人はいないし、何より気付かれずに部屋のものを運び出しここまで連れてくることなど不可能だ。
「!そうだ!ベルトとか大丈夫かな」
駆け足で部屋に戻り、確認する。
無くなっているものはなく、完璧な状態だった。
俺は再度部屋を出ようとして、立ち止まり近くにあった剣を手に取った。
1番好きな作品の主役が使用していた剣の実寸大のものだ。
サイズもさることながら、かなりの重量があるため護身用に使えるだろう。金額がアレなのでできれば使いたくはないが...
腰につけるホルダーと共に現状を把握するため外へ出る。
さて、どうするか。ひとまず人間を探す事にしよう。現状把握にはそれが1番だ。
しばらく歩いていると、後ろから足音が聞こえた。
よかった、人がいた。そう思い立ち止まり振り返る。
その瞬間、強い衝撃を受け地面に倒れる。
視界は赤く染まり、口の中は鉄と草が混じった最悪の味がする。
「#%${€+[|?」
謎の言語が聞こえ、角の生えた緑の巨体がこちらを覗き込み、ニヤッと笑う。
言葉はわからないが、俺のことを殴ったのはこの化け物だろう。
立ちあがろうとするが、足に力が入らない。なんとか持って来た剣を振り足に当てるがびくともしない。
その行為が癪に触ったのか化け物は叫び声を上げながらこちらを睨み、肩あたりを蹴り飛ばす。「うぐぁあああ!?」骨が軋む音がし、左腕は曲がってはいけない方向を向いている。
動ける右手で這って逃げようとするが、そんな悠長なことを許してくれるはずもなく足を掴まれ持ち上げられる。おいおい、細いとはいえ成人男性だぞ...それを軽々しく持ち上げやがって...
足を掴む手にさらに力が入り、地面に叩きつけられる。仰向けに倒れ、もはや寝返りを打つ力さえない。
大声を出して助けを呼ぼうにも痛みに邪魔され出たのは吐息のみだった。
化け物に視線をやると、持っていた棍棒を振り上げ、確実なトドメを刺そうとしているのが目に入る。
あれを回避することは今の俺には不可能だと言うことは体が1番わかっている。
あぁ...俺の人生ここで終わりか...
まだあの限定ベルトで遊んでないし、この前買った強化アイテムも触れてないし...後悔の念が次から次へと押し寄せてくるが、何よりこれから先のヒーローをこの目で見てみたかった、というものが1番大きかった。ちくしょう、殺すなら殺せ。そんでせめて美味しく食べてくれ。骨は武器にでも加工してくれ...
半ば覚悟を決め目をつぶる。
『戦え...戦え...』
うるせーよ、こっちはそれどころじゃないんだわ、今際の際なんだが
脳内に響く声に悪態をつく。
『その剣は飾りか』
飾りだよ、悪かったな。最推しであるこいつの近くで死ねるならまぁ良いか...
そうだ、最後に握らせてくれ...
そう思いつつ僅かに動く右手で剣を握ると、青い光を放ち眩しさに思わず薄目を開ける。化け物も光に怯んだようで少し後退する。
「...そうか...俺と、一緒に戦ってくれ!」
剣に向かって呟き、杖代わりにしつつ痛む体を無理やり起こし立ち上がる。アドレナリンだかエンドルフィンだかの力で、若干痛みが和らいでいる。さっきまで動けないと思っていたが、これが火事場の馬鹿力ってやつか...
再度こちらへ突進してくる化け物に対し、剣を軽く横に薙ぎ払う。
すると剣は纏った光を放出し、周囲の木や草、果ては化け物の体が真っ二つに切断される。
「すっげぇ威力だ...さすが最推しのひとつってとこか...」
敵は倒したが次また襲われれば命の保障はないだろう。安全な場所までいかなければならない。目の前にはなぜか離れていたはずの自身の部屋の扉が見えた。痛む体に鞭を打ち、
ふらふらと自身の部屋のドアを開け、玄関に倒れ込む。
命の危機から辛うじて逃げ出した体は再び痛みを警告し、これが現実であることを物語っていた。痛みに耐えられなかったのか、気がつくと意識を失っていた。
「...あれが次代の救世主、ですか」
木の影から姿を現した女性は呟き、ローブを被るとその場を後にする。
これは、1人の男が異世界で理想のヒーローを目指すために戦う物語、かもしれない
次回予告
「電波ないってことは見れないじゃん!続きが!!」
『私は神、知りたいこと教えてあげる』
「このならお前を倒せる!」
「あなたのような者を待っていました」
「...面白い」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる