ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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第22章 冒険者ではないお仕事

第182話 試作線路とナベトロと

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 私は物を作る事が好きだ。製作作業の速さにも自信がある。
 何せチートなスキルと魔法を使い放題。ゴーレムや家等の製造で経験もそれなりに積んでいるし。

 そんな私が材料使い放題で1日時間を貰ったのだ。当然思った事をガンガンと形にしてしまう。
 結果、夕方までに長さ2腕半5mの線路ユニット10組、試作ナベトロ1両を作ってしまった。

 線路ユニットはレールが枕木に固定された状態になっている。線路を延ばすにはこれを並べ、レール接続金具で固定すればいい。
 まあ実際は路床にバラストを敷く。現に見本として見て貰う用の線路15腕《30m》部分はバラスト路床も施工済みだったりするけれど。

 ナベトロとは鉱石を積む貨車の事だ。荷台がナベの形をしたトロッコという事でナベトロと呼ばれるらしい。
 このナベ部分は横倒しにする事が可能だ。この機構により積載した土や鉱石を一気に取り出す事が出来る。
 そしてワイヤー締結装置と半自動ブレーキも搭載済み。

 本当はあとバネ使用の自動分岐器スプリングポイントまで作りたかった。しかしそこまで作業する時間はなかった。ナベトロの設計に拘りすぎて時間が足りなくなったせいだ。

 ただその分ナベトロは良く出来ていると思う。実際に使うワイヤー用に調整すればすぐに実用になる程度に。

 うん、いい仕事をした。そう思いつつナベトロに仕込んだ機構を確認しているとリディナ達が帰ってきた。

「何かもう出来ているけれど、その鉄棒2本を敷いてあるのが道の代わりで、その上に乗っているのが荷車みたいなもの?」

 私は頷く。

「その通り。この鉄の部分を線路という。あとこの荷車の荷台はこうすれば倒して、中に積んだ物を横に取り出せる」

 ナベトロの下にあるバーを足で操作する。荷台がゆっくり左側に傾いた。そのまま底部分が少し上に来る位まで荷台が倒れる。

「便利だね。でも何故わざわざ線路を作るの? 砂利の方が簡単だしゴーレムが歩くのも楽じゃない?」

「この方が走行抵抗が遙かに小さい。その分効率良く運べる」

 でも完全に固い石畳とかならそれほど走行抵抗も変わらないかな。しかしトロッコなら車輪が細くて固い分やっぱり走行抵抗が小さいか。
 こんなに細い車輪を普通の石畳で走らせたらあっという間に路面が傷みそうだし。

 それに道路状の路面なら操舵なんて事もしなければならない。だから鉄道形式はきっと間違っていない。

「ところでフミノ、ちゃんと昼食食べた?」

 あっ。言われて気づく。まだ食べていない。作るのに夢中ですっかり忘れていた。

「その顔だと食べていないのかな。なら夕食はちゃんと食べてね」

 うんうん、思い切り頷く。リディナやセレスが作る夕食は美味しいから。

「こんな運搬用具、見た事が無いです。車輪があるけれど馬車やゴーレム車とはかなり違う感じですし」

「フミノの国は文化が大分違うみたいだからね。これもフミノの国にあった物と同じ形なのかな?」

「だいたいそう。記憶で再現した」

 その辺については今までと同じ答弁で。

「それじゃお家に入ろうか。フミノもそろそろ休んだら?」

「わかった」

 今日はこのくらいで勘弁してやろう。そう思いつつ線路やナベトロ等をアイテムボックスへと仕舞う。

 ◇◇◇

 翌朝。

「今日は昼食をちゃんと食べてね」

「わかった」

 そう返答してリディナとセレス、そしてバーボン君を送り出す。バーボン君と出かけるところを見るに本日は討伐メインの模様だ。

 2人を見送った後、私は森林組合の事務所へ。入る前に事務所内を偵察魔法で確認。うん大丈夫、イオラさんの他は女の子2人だけだ。

 扉を開け、中へ。

「おはようございます」

「おはようございます。それじゃ紹介するからこっちへどーぞ」

 私は部屋の真ん中で、2人と対面する形になる。
 イオラさんが紹介を開始。まずは私からの模様。

「こちらが今回ゴーレム製造者としてお願いしたフミノさん。本職は冒険者で魔法使いだけれど。

 そしてこっちがフェデリカさん。ミメイさんの後任のフェルマ伯爵領付きの魔法使い。冒険者も兼ねているけれど、鉱山の坑道管理やトンネルの保守等についてはほぼ専任でお願いしてる。

 こっちがシモーヌ。本来は森林組合や鉱山というよりフェルマ伯爵領役所の担当。此処森林組合にも鉱山事務所にも製鉄所についても顔が利くし、領内の事なら大抵知っているから私より頼りになるわ」

 フェデリカさんは身長高めで細身、やや赤目の髪が短く少しボーイッシュな雰囲気もする女性。年齢は私と同じか1~2歳くらい上に見える。
 シモーヌさんは一見、物静かそうに見える20歳位の女性。ただどことなくやり手っぽい雰囲気が微妙に見え隠れしている気がする。
 
「よろしくお願いします」

 私も含め、お互い挨拶して頭を下げる。

「あとワイヤーロープは領内の鉄工所で作っているタイプをひととおり用意したわ。予備の鉄インゴットも含めこの自在袋に入れてあるから確認宜しく。どれくらい引っ張れば伸びるかの値のメモも入れてあるから必要なら読んで。

 魔法金属は残念ながらあと2週間くらいかかるわ。此処だとラツィオから取り寄せだから」

 イオラさんがそう言って自在袋を渡してくれる。

「ありがとう」
 
「この自在袋は資材用。仕事が終わったら返してくれればいいから」

 なるほど、それはそれで有り難い。確かに太さ様々なワイヤーロープと鉄のインゴットが入っているようだ。

「それでどう? 図面を見てみて何か要望とか意見とか無い?」

 今の処特にない。ワイヤーを試してみてから現物を作るくらいだ。
 あ、でも待てよ。

「荷車とレールの見本を作ってみた。ワイヤーとあわせるから少し改良するけれど、こんなものだという参考にはなると思う」

「もう作った?」

 その通りなので頷く。

「ただあくまで見本。ワイヤーにあわせて微調整する必要がある」

「それって此処に出せる?」

 この事務所は広いけれど、それでもちょっと無理かな。

「外なら」

「お願いしていい?」

 勿論だ。私は頷く。

 外へ出て裏庭へ。3階建ての家や作業場代わりに出した平屋の前に、バラストや線路、ナベトロを出す。

「こんな感じ。この中央にワイヤーを通して引っ張る形」

「この荷車、何か機構が色々ついているように見えます。それぞれどんな意味があるのでしょうか」

 シモーヌさんが聞いてくれたので半自動ブレーキ、ワイヤーの把持とリリース、荷台を横転させるところまで説明する。

「なるほど、車の下の鉄部分も変形しない分、無駄なく運べるという事ですね」

「あとこの大きさが一定の礫、土属性の魔法で作ったように見えるけれど違うかい?」

 気づいたかフェデリカさん。流石土属性の魔法使いだ。

「礫くらいなら土壌改質魔法で何とか。大きな岩盤化は無理」

「なるほど。ならこれを礫ではなく岩で固定する形にすると何か問題が起こるかい?」

「無いと思う。耐久性が上がる。強いて言えば騒音が多少増える事と、今後の補修が面倒になるくらい」
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