259 / 322
拾遺録4 帰りたい場所
4 明日からの本会合とその裏で考えられている事態について(エミリア視点)
「大丈夫。私自身の他、私の家や関係場所まで、信頼できる人が警備しているから。宿泊もスリワラ家の王都屋敷に部屋を借りているしね。それにむしろ、この協議会の間で何か仕掛けてくれた方が、私としてはありがたいかな」
私は理解した。
そうなる可能性を充分に考慮にいれて準備はしてある、という事を。
ならリディナについては心配する事はない。
そう思ったところで。
「ただごめん。場合によっては、あえて会議内でイレギュラーを起こすかもしれない。
もちろん向こうが充分賢ければそうならない。でも最悪の場合、協議会は1日目の途中で延期ということになるかもしれない」
少し待って欲しい。
「何をする気ですか?」
「この参加者数だと、意見が別れて議決となった時に危ないでしょ。国王庁参加者が2名裏切ると、ナイケ教会側の意見が採用されてしまう可能性があるから。
こちらがいくらまともな事を言っても、向こうが耳を貸さなければそれだけでしょ。一方、向こうサイドの貴族が、こちらに参加しなければ今後一切協力せず、徹底的に政策に反抗するという姿を見せた場合。自分の職務を荒らされるよりはと、向こうに寝返る国王庁側の参加者が出るかもしれない」
そう、それはこちらの懸念材料のひとつだ。
協議会の結論は指定参加者の合議によって決まる。
なので誰が見ても正しくない意見であっても、多数決を取る事さえ出来れば、協議会の意見となってしまうのだ。
「だから向こうを揺さぶると同時に、出来れば余分な事をさせてボロを出させるつもり。例えば、あえてナイケ教会の教義を持ち出して、ナイケ教会側の貴族を挑発するとか。向こうはちょうど魔法耐性持ちで免状持ちの教会騎士がいるからね。教会はともかく、アシャプール侯爵あたりなら簡単に乗ってくると思うよ」
教義を使って。
魔法耐性持ちで免状持ちの教会騎士。
その2つの条件から、考えられる事といえば。
「ナイケの審判を使う気ですか」
意見が分かれた際、どちらが正しいかを、決闘によって判定するという極めて原始的な解決方法。
それがナイケの審判だ。
ナイケは勝利の女神、故に正しい方に勝利をもたらす。
教義ではそうなっている。
あまりに原始的すぎて、最近では実際にやったという話は聞かないけれども。
それに、そもそも……
「法律により決闘は禁止されている。私はそう認識しています」
「その通りよ。ただし貴族が名誉防衛権を持ち出せば、違法でない形で行えない事はない。もちろん双方の合意が必要だけれど」
リディナが言った方法は、かつて私闘を行った際によく使われた、法律の抜け穴的なものだ。
『王国法第57条 貴族は国と自身と家の名誉を守るため、必要な措置を講ずる事が出来る。ただしその措置は対等な場によって行われる1対1のものに限られる。
その2 本条によって行われる……(以下略)』
王国法にはエールダリア教会とナイケ教会によって、教義に近い内容が一部盛り込まれている。
第57条はまさに『ナイケの審判』的な価値観で書かれた条文だろう。
かつてはこの条文を悪用して、貴族が私闘を行ったり、平民の権利を侵害したりといった事案が多々みられた。
その事から30年ほど前、この条文に新たな項目が付け加えられたのだ。
『その4 この措置にあっては、措置を行う側と行われる側、双方に措置を行うという合意がなければならない。この合意の確認方法にあっては、別に定める』
そして『国法施行令』で、この合意を確認する方法として、国王庁審判局で互いから別々に意見を聴取しなければならないとある。
この際に片方から不正の訴え出があった場合、国王庁審判局が調査をしなければならない。
そして不正が明らかになった場合、一般人側であると貴族側であろうと厳しい処分がなされる事になっている。
以降、この法律を使用した私闘や権限侵害はほとんど起こらなくなった。
だから私も忘れていたのだ。
しかし今でも第57条は生きている。
貴族側が申し出て、双方が合意していれば、申し出により第57条に基づいた決闘を行う事が出来るのだ。
つまりリディナがアシャプール侯爵をその気にさせれば、ナイケの審判を行う事が可能なのだ。
そしてこの決闘に対して、あるいはそれ以外でも協議会や意思決定に際して不正が明らかになった場合、相手に厳しい処分を下すことが可能となる。
ただしそこまでするからには、決闘には勝たなければならない。
もしくは決闘前に相手に不正を行わせ、それを明らかにしなければならない。
リディナにそう出来るという、あてはあるのだろうか。
私の知っているリディナは、一か八かの賭けはしない。
だからよほどの事がない限り、勝ち筋が見えているとは思う。
それでもかつてリディナの友人で、今も友人のつもりである私は聞かずにはいられない。
「リディナは、教会騎士エルディッヒに勝てる見込みがあるのでしょうか」
「教会騎士がカレン・ララファス・スリワラだったら、やらないかな。勝率5割ってところだから」
そうか。そう言えばリディナは、スリワラ家の王都屋敷に泊まっていると言ったのだ。
スリワラ伯爵夫人は攻撃魔法無効のスキルを持った免状持ちの剣士で、元々は教会騎士候補だった。
魔法を使えないという事で彼女の存在を王家が消した後、教会騎士候補が今のエルディッヒ・オコーナーに変わったのだ。
今の言葉、リディナはこういう意味で言ったのだろう。
攻撃魔法無効で剣術に優れた相手と、戦う準備は出来ていると。
それでも疑問が残るので、私は尋ねる。
「でも教会騎士なら、スリワラ伯爵夫人と同じ能力を持っている筈です。それに対して勝率5割では厳しいのではないでしょうか」
「確かに『攻撃魔法無効で剣士の免状持ち』という肩書きは同じだけれどね。エルデイッヒ氏はまだ、本来の免状持ちの実力には達していないみたいね、少なくとも今の所は」
えっ!?
「本当ですか?」
「魔法が使えないという事でカレン・ララファスを破門にした結果、教会騎士にふさわしい能力の持ち主がいなくなった。仕方なく祭り上げたのがエルディッヒ・オコーナー。本人は気づいていないかもしれないけれどね、ナイケ教会の担当者と、エルディッヒと直接やりあった人間は知っている事実よ」
言われてみれば、思い当たる事がある。
エルディッヒは教会騎士だが、迷宮の魔物鎮圧業務等を行う事がほとんどない。
出てくるのは、ナイケ教会中央の儀式や祭礼ばかりだ。
「ただナイケ教会シンパの貴族だろうと、エルディッヒの真の実力なんて事は知らない筈よ。私は当事者のカレン・ララファス・スリワラ伯爵夫人と知り合いで、直接エルディッヒと模擬試合をした教え子がいるから知っているけれど」
確かに教会騎士エルディッヒは、何回か模擬試合をしている。
例えば昨年のパンテア祭では、確かA級冒険者の魔法剣士であるカイル・ダヴァ・アコルタ子爵と魔法込みの模擬試合をした筈だ。
そこまで考えて私は気づいた。
アコルタ子爵は、元々南部出身の平民だ。
『迷宮消去者』と呼ばれるパーティのリーダーで、A級冒険者となった後、アコルタ家の長女と婚姻して子爵となった。
南部出身で、魔法剣士という事は……
「だから教会騎士の力を信じている貴族、例えばアシャプール侯爵あたりなら、ナイケの審判にのってくる筈。私は魔法使いだし、教会騎士は攻撃魔法無効の免状持ち剣士だから。エルディッヒも表面上はアコルタ子爵と互角に戦えるとされている筈だしね」
やはりアコルタ子爵はリディナの教え子のようだ。
ならエルディッヒの実力については、アコルタ子爵を通じて知っていても不思議ではない。
一方でその事を、アシャプール侯爵らは知らない。
リディナをただの魔法使い、もしくは教育者だとしか思っていない可能性は大だ。
「そしてそれが決まったら、ナイケ教会の方は何としてでも『ナイケの審判』を成立させまいとしてくる筈よね。なら、余分な事をしたくなるんじゃないかな」
確かにそうだろう。教会はなんとしてでも審判をさせまいとしてくる筈だ。
審判で破れてしまえば、表看板たる教会騎士の実力が白日の下にさらされてしまうから。
しかしその方法論はあまりにも……
「危険ではないですか。貴方自身が。それにそういった事態に動く者ならば、たとえ捕らえても指令系統を明らかにするのは難しいと思います」
「普通はそうね」
リディナは頷いて、そして続ける。
「でも心配しなくていいわ。ここからは言えないけれど、それだけの事が出来る準備はしてあるから。それにこうした方が、膿の部分を徹底して排除できるしね」
私は理解した。
そうなる可能性を充分に考慮にいれて準備はしてある、という事を。
ならリディナについては心配する事はない。
そう思ったところで。
「ただごめん。場合によっては、あえて会議内でイレギュラーを起こすかもしれない。
もちろん向こうが充分賢ければそうならない。でも最悪の場合、協議会は1日目の途中で延期ということになるかもしれない」
少し待って欲しい。
「何をする気ですか?」
「この参加者数だと、意見が別れて議決となった時に危ないでしょ。国王庁参加者が2名裏切ると、ナイケ教会側の意見が採用されてしまう可能性があるから。
こちらがいくらまともな事を言っても、向こうが耳を貸さなければそれだけでしょ。一方、向こうサイドの貴族が、こちらに参加しなければ今後一切協力せず、徹底的に政策に反抗するという姿を見せた場合。自分の職務を荒らされるよりはと、向こうに寝返る国王庁側の参加者が出るかもしれない」
そう、それはこちらの懸念材料のひとつだ。
協議会の結論は指定参加者の合議によって決まる。
なので誰が見ても正しくない意見であっても、多数決を取る事さえ出来れば、協議会の意見となってしまうのだ。
「だから向こうを揺さぶると同時に、出来れば余分な事をさせてボロを出させるつもり。例えば、あえてナイケ教会の教義を持ち出して、ナイケ教会側の貴族を挑発するとか。向こうはちょうど魔法耐性持ちで免状持ちの教会騎士がいるからね。教会はともかく、アシャプール侯爵あたりなら簡単に乗ってくると思うよ」
教義を使って。
魔法耐性持ちで免状持ちの教会騎士。
その2つの条件から、考えられる事といえば。
「ナイケの審判を使う気ですか」
意見が分かれた際、どちらが正しいかを、決闘によって判定するという極めて原始的な解決方法。
それがナイケの審判だ。
ナイケは勝利の女神、故に正しい方に勝利をもたらす。
教義ではそうなっている。
あまりに原始的すぎて、最近では実際にやったという話は聞かないけれども。
それに、そもそも……
「法律により決闘は禁止されている。私はそう認識しています」
「その通りよ。ただし貴族が名誉防衛権を持ち出せば、違法でない形で行えない事はない。もちろん双方の合意が必要だけれど」
リディナが言った方法は、かつて私闘を行った際によく使われた、法律の抜け穴的なものだ。
『王国法第57条 貴族は国と自身と家の名誉を守るため、必要な措置を講ずる事が出来る。ただしその措置は対等な場によって行われる1対1のものに限られる。
その2 本条によって行われる……(以下略)』
王国法にはエールダリア教会とナイケ教会によって、教義に近い内容が一部盛り込まれている。
第57条はまさに『ナイケの審判』的な価値観で書かれた条文だろう。
かつてはこの条文を悪用して、貴族が私闘を行ったり、平民の権利を侵害したりといった事案が多々みられた。
その事から30年ほど前、この条文に新たな項目が付け加えられたのだ。
『その4 この措置にあっては、措置を行う側と行われる側、双方に措置を行うという合意がなければならない。この合意の確認方法にあっては、別に定める』
そして『国法施行令』で、この合意を確認する方法として、国王庁審判局で互いから別々に意見を聴取しなければならないとある。
この際に片方から不正の訴え出があった場合、国王庁審判局が調査をしなければならない。
そして不正が明らかになった場合、一般人側であると貴族側であろうと厳しい処分がなされる事になっている。
以降、この法律を使用した私闘や権限侵害はほとんど起こらなくなった。
だから私も忘れていたのだ。
しかし今でも第57条は生きている。
貴族側が申し出て、双方が合意していれば、申し出により第57条に基づいた決闘を行う事が出来るのだ。
つまりリディナがアシャプール侯爵をその気にさせれば、ナイケの審判を行う事が可能なのだ。
そしてこの決闘に対して、あるいはそれ以外でも協議会や意思決定に際して不正が明らかになった場合、相手に厳しい処分を下すことが可能となる。
ただしそこまでするからには、決闘には勝たなければならない。
もしくは決闘前に相手に不正を行わせ、それを明らかにしなければならない。
リディナにそう出来るという、あてはあるのだろうか。
私の知っているリディナは、一か八かの賭けはしない。
だからよほどの事がない限り、勝ち筋が見えているとは思う。
それでもかつてリディナの友人で、今も友人のつもりである私は聞かずにはいられない。
「リディナは、教会騎士エルディッヒに勝てる見込みがあるのでしょうか」
「教会騎士がカレン・ララファス・スリワラだったら、やらないかな。勝率5割ってところだから」
そうか。そう言えばリディナは、スリワラ家の王都屋敷に泊まっていると言ったのだ。
スリワラ伯爵夫人は攻撃魔法無効のスキルを持った免状持ちの剣士で、元々は教会騎士候補だった。
魔法を使えないという事で彼女の存在を王家が消した後、教会騎士候補が今のエルディッヒ・オコーナーに変わったのだ。
今の言葉、リディナはこういう意味で言ったのだろう。
攻撃魔法無効で剣術に優れた相手と、戦う準備は出来ていると。
それでも疑問が残るので、私は尋ねる。
「でも教会騎士なら、スリワラ伯爵夫人と同じ能力を持っている筈です。それに対して勝率5割では厳しいのではないでしょうか」
「確かに『攻撃魔法無効で剣士の免状持ち』という肩書きは同じだけれどね。エルデイッヒ氏はまだ、本来の免状持ちの実力には達していないみたいね、少なくとも今の所は」
えっ!?
「本当ですか?」
「魔法が使えないという事でカレン・ララファスを破門にした結果、教会騎士にふさわしい能力の持ち主がいなくなった。仕方なく祭り上げたのがエルディッヒ・オコーナー。本人は気づいていないかもしれないけれどね、ナイケ教会の担当者と、エルディッヒと直接やりあった人間は知っている事実よ」
言われてみれば、思い当たる事がある。
エルディッヒは教会騎士だが、迷宮の魔物鎮圧業務等を行う事がほとんどない。
出てくるのは、ナイケ教会中央の儀式や祭礼ばかりだ。
「ただナイケ教会シンパの貴族だろうと、エルディッヒの真の実力なんて事は知らない筈よ。私は当事者のカレン・ララファス・スリワラ伯爵夫人と知り合いで、直接エルディッヒと模擬試合をした教え子がいるから知っているけれど」
確かに教会騎士エルディッヒは、何回か模擬試合をしている。
例えば昨年のパンテア祭では、確かA級冒険者の魔法剣士であるカイル・ダヴァ・アコルタ子爵と魔法込みの模擬試合をした筈だ。
そこまで考えて私は気づいた。
アコルタ子爵は、元々南部出身の平民だ。
『迷宮消去者』と呼ばれるパーティのリーダーで、A級冒険者となった後、アコルタ家の長女と婚姻して子爵となった。
南部出身で、魔法剣士という事は……
「だから教会騎士の力を信じている貴族、例えばアシャプール侯爵あたりなら、ナイケの審判にのってくる筈。私は魔法使いだし、教会騎士は攻撃魔法無効の免状持ち剣士だから。エルディッヒも表面上はアコルタ子爵と互角に戦えるとされている筈だしね」
やはりアコルタ子爵はリディナの教え子のようだ。
ならエルディッヒの実力については、アコルタ子爵を通じて知っていても不思議ではない。
一方でその事を、アシャプール侯爵らは知らない。
リディナをただの魔法使い、もしくは教育者だとしか思っていない可能性は大だ。
「そしてそれが決まったら、ナイケ教会の方は何としてでも『ナイケの審判』を成立させまいとしてくる筈よね。なら、余分な事をしたくなるんじゃないかな」
確かにそうだろう。教会はなんとしてでも審判をさせまいとしてくる筈だ。
審判で破れてしまえば、表看板たる教会騎士の実力が白日の下にさらされてしまうから。
しかしその方法論はあまりにも……
「危険ではないですか。貴方自身が。それにそういった事態に動く者ならば、たとえ捕らえても指令系統を明らかにするのは難しいと思います」
「普通はそうね」
リディナは頷いて、そして続ける。
「でも心配しなくていいわ。ここからは言えないけれど、それだけの事が出来る準備はしてあるから。それにこうした方が、膿の部分を徹底して排除できるしね」
あなたにおすすめの小説
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!
竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。
でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。
何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。
王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。
僕は邪魔なんだよね。分かってる。
先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。
そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。
だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。
僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。
従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。
だけど、みんな知らなかったんだ。
僕がいなくなったら困るってこと…。
帰ってきてくれって言われても、今更無理です。
2026.03.30 内容紹介一部修正
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。