ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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拾遺録6 俺達の決断

10 勉強会

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 カタサーロ2日目は、基本的に子供相手の魔法だの剣術だので潰れる。
 これはまあいつも通りだし、覚悟している。

 オキュペテーの連中が常駐しているから、付近に危険な魔物が残っている可能性はない。
 俺がわざわざ魔物討伐する必要は無い訳だ。
 だから冒険者ギルドに行って馴染みの皆さんに挨拶をした後は、子供達相手となる。

 いつもなら子供十数人に取り囲まれて、結構大変だ。
 本来の先生役であるオキュペテーからは1人しか出さないし、俺がいる時は基本的に勉強側の面倒しか見ないから。

 しかし今回は俺の他に2人、助っ人がいる。
 子供達の剣術や魔法の面倒をみることは、来る時のゴーレム車内で話しているから問題ない。
 という事で容赦なく振らせて貰う。

 まずは勉強会の教室として使っている部屋で、ロザンナ達の自己紹介ついでに子供達に指示。

「今回は3人、こちらは水属性の魔法使いのイレーネ、こちらは剣士のロザンナ。どちらもC級だけれどかなり強い冒険者だ。
 だから今日は、水属性の魔法はイレーネに、剣術はロザンナに見て貰う。それ以外はいつも通り俺でいい。あと模擬試合をやりたいとか、魔法剣を覚えたという者がいたら、此処に名前を書いてくれ。順番に見るから」

 本日の当番のルチアによると、今日の午前中は11人、午後は10人の子供が来るそうだ。
 ただ他に5人、此処に住み込んでいる子供がいる。
 だから最大で16人とみておいた方がいい。
  
 中庭はテモリにある俺達の拠点より広いし、周囲を岩化した分厚い土壁で囲っている。
 だからレベル5程度の攻撃魔法なら、傷がつく程度だ。

 さて、16人のうちイレーネ担当が5人、ロザンナ担当が3人、残り8人が俺となった模様。
 なお個別の模擬試合は、全員名前を書いている。
 つまり俺は16人と模擬試合をする必要がある訳だ。

「それじゃ今日の実技が魔法で、火属性以外の生徒は1時限目は教室で勉強だ。いつも通りルチアに今日の教材を出して貰って、進めてくれ。イレーネ、ルチアの補助を頼む。今日の実技が火属性魔法の生徒と剣術の生徒は、1時限目に実技をやろう。俺とロザンナさんで担当する。という事で、実技の生徒は中庭に集合」
 
「わかりました」

 俺とロザンナ、そして生徒9人が部屋を出て、中庭に向かう。

 ◇◇◇

 午後の部が終わった夕方、4の鐘が鳴る頃。住み込み以外の生徒が帰り、住み込みの子供達も自由時間となった。
 オキュペテーの本日の居残りで、業務連絡と勉強会の座学側をやっていてルチアを含め、4人で2階リビングに引き上げる。

「とりあえず休憩しよう。お茶セットは出すから、ここでゆっくりしてくれ」

 4人それぞれでソファーセットにつく。
 お茶セットをルチアではなく俺が出すのは、オキュペテーには料理や家事の担当者がいないから。
 だから此処へ来るときは毎回、イリアやレズンが作った料理だのお茶セットだのを自在袋に大量に入れてきている。

 ただ夕食までそれほど時間が無いので、菓子類は今回は軽めに。
 カンノリというパイ地で甘いクリームチーズを包んだものを1人2個と、オルズと呼ばれる麦焦がし茶を出す。

「ありがとうございます。カイルさん達を手伝うようになってから、美味しいものばかりで嬉しいです」

 呼び捨てでいいとゴーレム車内では言っていたけれど、結局俺はさん付けが定着してしまった。
 オキュペテーの連中が全員俺をさんづけで呼ぶから仕方ない。

「あそこは特別よ。料理担当が実質2人いるから。此処は料理担当がいないから、平日は基本的に買いだめした出来合い惣菜デリ がメイン」

 そう愚痴るルチアに、俺は軽く言ってみる。

「誰か料理担当を入れればいいだろう。もしくはルチアが料理を覚えるか」

「無理よ。レズンさんとかイリアさん、あとはミリアとかレイナの腕を知っていると、自分は無理だって思わされるじゃない。でもミリアは『南の風』に入っちゃったし、レイナを農場から引っ張るのは申し訳ないし」

 ミリアはレズンと同様、勉強会で料理についても色々聞いたり教えて貰ったりしていたし、レイナはイリアの妹にして家事超人2号。
 確かにその辺を2人も抱えているうちの集団クランは、恵まれているとは思う。

「それにしても、子供って体力があるんですね。回復魔法をかけて貰っても、結構疲れが残った気がします」

「ロザンナは剣術担当で身体を動かすから仕方ないです。でも担当が水属性の魔法だけで、教えている人数も少ないのに、結構疲れた気がします」

 イレーネもロザンナも疲れているようだ。
 無理も無い。
 
「今日はいつもと違う先生だからさ。生徒も目一杯やっている感じだから仕方ない。手伝ってくれてありがとう。おかげで今回は大分楽だった。前回はファビオに、実技系統全部押しつけられて大変だったからさ」

 生徒数は今の6割程度だから何とかなった。
 しかし今回も俺1人なら相当に大変だっただろうと思う。

「でもカイルさんは、午前午後ともに実技ですよね。私達よりずっと疲れる筈ですけれど、そう見えないです」

「その辺は慣れだな。テモリの方でも毎週似たような事をやっているしさ」

 あちらはサリアとイリア、あとは手のあいた者2人で面倒を見ているから、

「あとは今日の生徒ですけれど、かなり出来る子達ですね。年齢は9歳くらいが多いですけれど、学力も魔法も剣術も初等学校卒業レベルに近いと感じます。今日の生徒は選抜か何かしているのでしょうか」

「選抜はしていないわよ。この近くの子で、経済的その他の理由で領立学校に入れない子を週2で見ているだけ。強いて言えば勉強の教材は特別かも。他には無いみたいだし、10年くらい続けて使って改良されているから」

 此処やテモリで使っているのは、リデイナ先生達の勉強会で使っているものと同じ教材だ。
 半時限分くらいの内容が1枚の紙に記されている、プリントと呼ばれていたもの。
 説明や例題等の内容は逐次更新というか改良されて、大分わかりやすくなっている。

「確かにあれは分かりやすいですし、便利だと感じます」

 ロザンナがそう言って、うんうん頷いている。
 確かにあの教材は良く出来ていると、俺も思う。
 だから割と最近まで、王立の学校も同じように教えていると思ってしまっていたのだ。

 実際はあんな効率的な教材は、王立学校には無いようだ。
 この辺はA級冒険者として貴族扱いになった後知ったのだけれども。
 その辺を含めて、先生達やあの勉強会は特別な存在だったのだろう。
 時が経って様々な事を知るごとに、そう思えるのだ。
 
「あと、皆さん冒険者なのに何故私塾のような事もやっているのでしょうか。テモリの集団クランだけでなく、此処でもよっているという事は、何かどこかの教会との関係があるのでしょうか?」

 イレーネがそんな事を質問してきた。
 どう応えればいいのだろう。
 俺は少し考え、口に出す言葉として組み立てる。
 
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