機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第5章 香緒里の護身具製作記

18 まずは市販品を改良だ

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 それは少し前のことになる。
 香緒里ちゃんが誘拐されかけた、次の日のことだ。

「やっぱり香緒里も身を守れる何かが必要だよな」

 鈴懸台先輩がその話をきりだした。

「でも私の魔法は付与限定。攻撃は出来ないです」

「私の剣みたいなのを作ってもらえば? 製作者もそこにいるし」

「剣を振り回す腕力はないです。技術的にも自信ないです」

 まあそうだ。
 例の魔法を開発してしまったけれど、基本的には香緒里ちゃんは魔法工学科のごく標準的なタイプ。

 特異なのは付与魔法だけ。
 あとは倍率20倍の入学試験を乗り越えられた頭脳と運。
 他は基本的に普通の人間と変わらない筈だ。

「そうなると、これは修君が取り組むべき事案でしょうか」

 そうかもしれない。

「なら修兄、お願いします。私が使えてポシェットに入る大きさの護身用具が欲しいです。お金はいくらかかっても構いませんから。どうせならクラウ・ソラス級の攻撃能力が欲しいです!」

 そんな感じで、俺は護身具作成をお願いされてしまった訳だ。
 なので色々見繕って、必要な部品に一部18歳以下購入不可ものがあったので由香里姉の名前を借りて通販で購入し、学生会幹部室宛で送ってもらった。

 荷物が届いた後、バネで手狭になった工房で細工を開始。
 ちなみに届いたのは特殊警棒型スタンガン、電動エアガン、ベアリング用鋼球6ミリ1キロ入り。
 他は使う度に補充しているこの部屋のストックで足りる筈だ。

 まず確認したのはスタンガン。
 何故自分で作らずに製品を購入したのかというと、手間を省くのもあるが安全性も考慮してだ。
 下手に俺がコイル巻いたりコンバータを自作したりすると、人を確実に殺害してしまう威力にもなりかねない。
 その点市販品は、安全面をある程度は考慮して作ってある。

 振ったり使ったりして確認したが、これはこれで完成した製品だ。
 なのでほとんど改造せず、香緒里ちゃん専用にカスタマイズをするだけ。

 電池部分を外して魔力電気変換器を付ける。
 これは触れている者の魔力を電力に変換する汎用品。
 香緒里ちゃんは攻撃魔法は使えないけれど、魔力は十分にあるので大丈夫。
 この装置では出力の微調整は効かないので、それなりに制御装置を作る必要があるけれど。

 念のため発生電圧を6Vに調整するレギュレーターを付けて、グリップに銀で作った魔力導線を埋め込めば完成。
 これを握って魔力を通せばスタンガンの放電が始まる。
 俺のあまり自信がない魔力でもパチパチと放電音が鳴って威嚇効果は抜群。

 まあこれは狭い場所での接近戦という状況限定の武器。
 本命はエアガンの方だ。
 これを改造してある程度は抑止力のある性能にする予定。

 なおこの島内というか、特区内では銃刀法の適用はかなりゆるい。
 何せ戦術級の戦闘力を持つ魔法使いがうようよいる。
 拳銃や刀など可愛いものだ。

 特区内で銃刀法関連で禁止されているのは持ち込みのみ。
 保持は認められているし、正当な理由があれば使用もある程度は認められる。
 そうでなければ鈴懸台先輩のクラウ・ソラスなんて持ち歩けない。
 なのでエアガンを改造するのはこの島に限っては合法だ。

 一応メカボックスを強化品に変えて、シリンダーその他もステンレス製にして、ギアも超硬工具用の鋼で作ったものに変える。
 この辺は実物を元に俺の魔法で作成された逸品だ。
 これくらいの大きさの部品なら魔法で加工してもそれほど負担はない。

 バネも強力な俺の手製に変えた。
 モーターはそのままだけれど、俺の能力を駆使してチューン済。
 後は使用者本人に必要な魔法をかけてもらうだけだ。

 まずは分解したままの状態でバレル部分を取り出す。
 ちょうどそこで、バネに魔法をかける作業中の香緒里ちゃんが休憩に入ったのが見えた。
 ならここで魔法付与をお願いしよう。

「香緒里ちゃん、この管の中を通る物体の運動エネルギーを10倍程度にするような魔法ってかけられる」

 香緒里ちゃんもバネ相手は飽きていたのだろう。
 俺の作業場方向へと歩いてきた。

「うーん、加速させる魔法でいいですか」

「それで頼む。ありがとう」

 後は充電池を取り出して魔力電気変換器とレギュレーターを取付ける。
 魔力導線をレギュレーターから出してグリップに埋め込んで、そして銃を組み立ててと。

「あとはこの銃と内部に重量が4分の1になるように魔法をかけてくれるか」

「もっと軽くも出来ますけれどいいですか」

「それくらいが扱いやすいし計算上ちょうどいい」

 香緒里ちゃんは目を閉じて手で軽く銃本体を撫でる。

「うーん、これで4分の1です」

「ありがとう」

 これを組み立てれば完成だ。
 ちなみに細かい所のグリスアップ等は当然、ちゃんとしてある。
 見かけは市販品のままだが、威力はそれなりになっている筈だ。
 最後にBB球の代わりにベアリング球を入れれば完成。

 まず1発撃ってみる。
 ベアリング球はきれいに飛んでいき、工房隅のウエス入れの箱に穴を開ける。
 予定通りの出来と威力だ。
 
 セレクターを連射にして中の弾全部を打ち出す。
 さすがにちょっと反動はあるが、機構に異常はなさそうだ。
 ベアリング球を補充しておく。

「これで護身用の武器は完成」

 どれどれと香緒里ちゃんは覗き込む。

「何か可愛くないですね。それに外見も格好良くないです」

「外見は市販品のままだから。何なら自分で加工するように」

 香緒里ちゃんも見かけは別として魔法工学科なのだ。
 腕も決して悪くはない。

「この棒は何ですか」

「特殊警棒型スタンガン。この棒を引いて延ばして手に握って魔力を通してみて」

 香緒里の握った棒の先端付近でバチバチと音がして小さな火花が散る。

「おおーっ、高電圧による放電現象ですね」

「まあその通りだが」

「でももう少し放電が派手な方が好みですね」

「あんまり電流流すと相手が死んじゃうだろ。今でも相手を無力化するのに十分な能力があるぞ」

「まあその辺は後で自分で改良します。次は銃です」

「これも魔力駆動だからな。握って魔力を通して引き金を引けば弾が出る」

 香緒里ちゃんは先程俺が狙ったウエス袋を狙う。
 発射されたベアリング級はわずかに逸れて床に当たって跳ね返り、近くの木材に穴を開けた。

「うーん、もうちょっと威力が欲しいです」

「護身用としては十分。連射も効くし撃ちどころ悪ければ再起不能になるし」

「本当ですか?」

 香緒里ちゃんは立ち上がってストック場所の方に行き、板材を引きずって出す。
 ベニア板の厚さは12mmで、結構重くて頑丈だ。
 そしてその板から5mの所で、今度はセレクターを変えて連射で撃つ。

「うーん、ちょっと反動がありますね」

 香緒里ちゃんはそう言って板を確かめた。

「やっぱり威力不足です。弾が貫通していないです」

 俺は状況を確認する。鋼の球体が何個も板に埋まっていた。

「この板にめり込む位の威力があれば十分だろ。これ以上は実銃になっちゃうぞ」

「そこは見解の相違です。でもまあこれはこれで面白いのでいただきます。ありがとう、修兄」

 この時俺は気づいていなかった。
 香緒里ちゃんはあの由香里姉の妹。そして魔法工学科生。
 機械いじりの能力も才能も充分で、かつ常識が斜め上である事を俺は失念していたのだ。
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