機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第9章 新しい日常

36 退寮届と長電話

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 最近、由香里姉と香緒里ちゃんがおかしい。
 何やら2人でコソコソ話してはキャッキャウフフしている。
 しかも時々2人でこそこそ出かけていく。

 来年の予算案もほぼたたき台を作り終えたし、12月に来年度学生会役員の選挙をするまでは結構暇だ。
 だから出かけても問題はないのだが、何かわからないところが不気味だ。
 しかも俺の顔を見て2人で笑ったりしているし。

 何を企んでいるか聞いても当然答えてくれない。
 今日も2人で早々に学生会室を出ていってしまった。

「何なんでしょうね、一体」

 鈴懸台先輩も月見野先輩も首を横に振る。

「私達も知りませんわ。ミドリは何か聞いていません」

「私も知らないな。でもユカリのあの状態、前に車を買った時と似てね」

「そうですけれど、これ以上車が必要とも思えませんわ」

 その通りだ。
 何せ狭い島。大抵の用事は歩いて事足りる。
 その上、既に1台、車はあるんだし。

「ジェニーも何も聞いていないよな」

 と、ジェニーがそっぽを向いた。
 何だろう。
 怪しい。

「ジェニー、由香里姉と香緒里ちゃんが出かけた用事、知らないよな」

「何のことすか?」

 あ、明らかにとぼけた。

「日本語難しいれす。私わからないれす」

「ファイディドゼイゴーアウト?」

 これ位なら俺だって英語で言える。

「うー、ノーコメントれす」

 あ、これは間違いなく知っているな。

「うーん、言わないでくれと言われているれす。だから言えないれす」

 そういう訳か。

「でも、もうすぐ教えてくれると思うれす。オサムも当事者れすから」

 俺も?
 何だろう。

 俺に関係していて、俺も当事者で。
 そして由香里姉と香緒里ちゃんが2人で出かける理由とは。

「長津田君、お誕生日っていつでしたでしょうか」

「3月です。今から用意するのは早すぎますね」

「なら本当に思い当たることは無いですわ」

 月見野先輩は本当に知らないし、想像も出来ていない様子だ。
 しかしジェニーにこれ以上聞いても答えてくれそうに無い。

「長津田君には本当に思い当たる事は無いのですね」

「ええ」

 そう、思い当たる事は何も無い。

 ヒントは俺が当事者だと言うこと。
 そして自動車を買った時に似ているという鈴懸台先輩の言葉くらい。
  
 何だろう。
 これだけではわからない。

 ◇◇◇

 わからないまま今日の学生会は終了。
 寮に帰って自分の郵便受けを確認したら、何やら封筒入りの書類が入っていた。
 出してみると、『退寮届』とある。

 何故こんなものが入っているんだろう。
 そう思いながら寮の玄関を通り過ぎようとした処、寮務室から声がかかった。

「長津田、退寮届は今週中に出しておけよ」

 え、何だろう。

「俺が退寮するんですか?」

「おや、聞いていないのか。親御さんから連絡あったぞ。今月中に退寮するからよろしくお願いしますとな」

 何でですか、と聞こうとして思い留まる。
 それは寮務の井吹野教官に聞くことではないだろう。

 寮務としてはうちの親から退寮するという連絡があったから、退寮届を入れただけだ。
 何故退寮するのか、事情を聞いている可能性は低い。
 つまり聞くべきなのは寮務教官ではなく、俺の家だ。

「わかりました」

 そう言って自分の部屋に帰って考える。
 今の生活で思い当たる事は、少なくとも俺には無い。
 そうすると、うちの実家の事情だろうか。
 たとえば実家に金が無くなって、俺に帰ってきて就職しろとか。

 今現在、俺は仕送りをほとんど使っていない。
 ヘリコプターを始めとしたライセンス料や課題制作物の買上げ代金。
 その辺りでほぼ学費と生活費全般を賄えているからだ。

 もし親父が倒れたりしたら、とも思うがその可能性も薄い。
 そんな連絡はないし、万が一親父が倒れても保険で何とかなる筈だ。
 考えつつも答えは見つからない。
 結局実家に電話をかけるしかないようだ。

 電話は苦手だ、たとえ実家にかけるとしても。
 それでも仕方ないので、スマホを操作する。

「もしもし、俺だけど退寮届って何だ」

 面倒だからストレートに聞く。

「修元気している? 風邪などひいていない? 仕送り全然使っていないけれど大丈夫?」

 俺の質問と関係なく問われる質問の数々。
 まずは質問に答えて欲しいのだが、おばちゃんという生き物はこういうものだ。
 うちの母も例外では無い。

 だから電話は嫌いなんだ。
 メールだのSNSだので済むなら、そのまま答がくるのだけれど。
 ただうちの親、そういった物が苦手だから使っても返答がすぐに来るとは限らない。
 だから電話したのだけれど……

 これは長くなりそうだ。
 そう思いながら一方的な会話を、はいはいと相づちを打ちながら聞くことになる。

 ◇◇◇
 
 結局電話で聞けた主な内容は、
 ○ 今月末の日付で退寮出来るよう書類を作っておきなさい。
 ○ いつでも出られるように荷物はまとめておいて家具などはたたんで本などもダンボール等で運べるようにしておきなさい。
 ○ 父も母も元気です。
 ○ 薊野さんとこの姉妹によろしく。
だけだった。

 30分も話したというかほぼ聞きっぱなしだった電話の内容がこれだ。
 全くもって意味がなかった。

 確認がとれたのは、退寮するという事について、うちの実家が承知している事くらい。
 でも退寮してどうするかまでは、結局何も話がないまま。

 これ以上考えても答は出ないだろう。
 俺は考えるのを止め、明日の予習をする事にした。
 高専生の勉学は厳しいのだ。

 どうせ荷物なんて、いつでもまとめられる量しかない。
 だから取り敢えず放置プレイで。
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