機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
44 / 202
第10章 新役員がやってきた

44 露天風呂開始

しおりを挟む
「うぉー、何じゃこりゃ」

 宮崎台先輩のテンションが急上昇したのが、声だけでわかる。
 薊野家専有露天風呂は、更にバージョンアップをしている。
 中間テスト後、色々な要望を受けて俺が大分手を加えたのだ。

 メインの風呂はそのままに、温度調整が自由に出来る個人用の樽風呂、樽風呂と同じ筐体を使った水風呂、全身がちょうどひたひたになる位の寝湯も作った。
 MJ管を使ったジェットバスも1人分作ってある。
 規模は小さいがちょっとしたスーパー銭湯程度には色々揃っている筈だ。

「これって、まさか既成でこんな状態の筈は無いですよね。本土の専門の工務店を入れたのでしょうか」

「全部、修の手作りですわ。材料搬送は手伝いましたけれど」

「これは手作りっていうのはちょっと信じがたいレベルですけどね」

「俺の魔法は物作り専門で、これくらいしか出来ないからね」

「それより早く入ろうぜ」

 気を抜くと宮崎台さんはすぐにでも服を脱ぎそうな勢いだ。

「その前に、俺はちょっと車の方に避難しておきましょうか」

「何で」

 まさか宮崎台さんにそう聞かれるとは思わなかった。

「一応俺は男ですし」

「でも今まで問題なかったんだろ。じゃあ今日も問題ない」

「そうですね。私もそう判断していいかと」

 宮崎台さんだけでなく鷺沼さんまで。

「じゃあ鷺沼さんと宮崎台さんはその中央の部屋を使って。ベッドは臨時用の折りたたみ出してあるから。翠と朱里は今日は私と香緒里の部屋を使って」

 そんな訳で、露天風呂が始まる。
 俺がいるのはメインの風呂の隣に設けた、通称『ぬる湯』。
 全体から見ても一番端の方で、かつお湯の温度が一番低い。
 低体温で熱い風呂が苦手な俺用のスペースだ。
 樽風呂も温度を調節できるのだけれど、大抵は香緒里ちゃんが温度高めにして占拠している。

 他はメインの風呂で伸び切っていたり、寝湯にいたり色々。
 俺と同じく熱いのが苦手なジェニーは早くもデッキに横になって涼んでいる。
 こっちに脚を向けて大の字になっているのだが、見えてはいけないところが丸見えなので少しは色々考えて欲しい。
 と、鷺沼さんがこちら側へやって来た。

「隣、いいですか」

「どうぞ」

 鷺沼さんは全くためらいもせず、俺の入っている真横に来る。
 一応肘が当たらない程度には間があるが、それでもどきりとする。

「何なら出ましょうか」

「お気になさらず。そのままで大丈夫ですよ」

 逆に出るタイミングを逸してしまった。
 俺は微妙に気まずいまま、ぬる湯で固まる羽目になる。

「これ全部、長津田君が作ったんですよね。設計も施工も」

「これを外部の誰かに頼むのも問題ありそうなんで」

 いくら何でもほぼ女子高生だけで住んでいるマンションに露天風呂作れなんて依頼、外に出すわけにもいかないだろう。

「ならこの露天風呂の中の段差も深さも、浴槽の大きさも全部長津田君が考えたんですね」

「えっ?」

 予想外の事を言われたので、一瞬俺の認識が遅れる。

「例えばこの露天風呂の深さとか腰掛けるとちょうどお腹の上くらいにくるあたりとか、妙にしっくりくるなと思ったんです。でももうほんの少し低い方が私にはちょうどいいかなって。
 ちょっと考えてみたら、薊野さん姉妹やジェニーさん、私よりちょっと大きめの方ならちょうどいい深さや高さになっているんですね。ウッドデッキの段差等も全部試してみました。樽ぶろに入る段差も。
 全部よくある既成の寸法ではなく、あの3人にあわせた設計で作っている。違いますか」

 確かによくある既製品の寸法とは違うサイズになっている。
 どれもこれも使用者を想定して寸法取りをした上での設計だ。
 でもまさか今日来たばかりのしかも物作り屋以外に気づかれるとは思わなかった。

「ジェニーの義足を作る時に寸法を測っていますから、それを流用しただけですよ」

「あの義足も凄いですよね。動きも形も自然ですし。色だけは今は御風呂中だからちょっと身体が赤くなっていて分かりやすくなってしまっていますけど」

「あそこまで自然に動かせるのはジェニー自身の努力ですよ。本来の制御機能は普通の動力付き義足とそれ程違わないですし」

 実際そうなのだ。
 所詮は市販マイコンによる制御。
 それをあそこまで自由自在に使えるのは、ジェニーが面倒くさいマニュアル動作を自分の試行錯誤で最適化したからだ。 

「他にも魔力導線入りの魔法杖を一般化したのも長津田君ですよね」

「もう皆忘れていると思っていました」

 今一般的に魔法攻撃科の学生が使っている魔力導線入りの杖。
 杖の握る部分と魔石とが魔力銀の導線で結ばれていて、発動が早く使いやすい杖。

 理論は元々あったのだが、それを作って販売しだしたのは確かに俺だ。
 原型は由香里姉や月見野先輩に作った杖で、その一般化という形で。
 その後魔法杖はあのタイプが一般的になり、今では杖造りが創造製作研究会のいい収入源になったりした訳だが。

「私が学生会役員の話を最初に聞いたのは先週の金曜日。その後、申し訳ありませんが一緒に学生会をやっていく事になるあなた方3人の事を調べさせて頂きました。ですから夏休み前の香緒里さん誘拐騒動の事も、ジェニーさんの留学理由についても知っています」

「でも、何故それを」

「調べた理由は、あなた方と気持ちよく学生会をやっていけるか知りたかったから。調べた事をこうして話す理由はこっそり調べた事について若干私の心の中で負い目があるから。こんな答えでいいですか」

 俺の色々な疑問に対する完璧な回答だ。

「すみません。正直に答えていただいて」

 今は鷺沼さんは首までお湯に浸かっているからセーフの状態だ。
 だから俺は鷺沼さんの方を向いて軽く頭を下げる。
 と、ふと違和感を感じた。
 メガネと、瞳に。

「あ、気づきました」

「その答えは保留します」

 少なくともメガネは伊達メガネだ。
 眼鏡の端のレンズが映す画像に歪みがない。

 そして瞳が何というか少し不自然だ。
 何というか瞳と白目の境界線が。

 でもわざわざ隠しているとすればそれを聞くのは多分失礼なんだろう。
 だから気づいたとは答えないし、気づかないと嘘も言わない。
 俺の答えは、保留だ。
 そんな俺の思考に気づいたのか、鷺沼さんは笑顔をみせる。

「ありがとう。来期は楽しい1年を送れそうで良かったです」

 そう言って俺の目の前で立ち上がる。
 おいおい俺が見ているのにまずいだろ。
 慌てて俺は目を逸らす。

「それじゃ今度は熱い方に浸かってみます」

 俺を全く気にせず鷺沼さんは立ち上がり、メインの湯船の方へ歩いていった。
 まずい。
 見慣れない女の子の裸は刺激が強すぎる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

処理中です...