機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
52 / 202
第11章 冬休み

52 奈津希さんの企み(1)

しおりを挟む
 俺と奈津希さんはリビングでテレビを見ている。
 実際にはテレビは何か番組を流しているだけで見てはいない。
 単に間を持たせるためについているだけ。

 風遊美さんは真ん中の部屋から出てこない。
 もうとっくに風呂からは上がっている筈なのだが。

「それにしても天然というのは最強だよな」

 にやりと笑って奈津希さんは言う。

「普通は女の子に向かって似合っていないとか言わないぞ。それも化粧や髪型や服ならともかく、普通は変えられない目の色とかそんなのを」

「似合っていないとは言っていないじゃないですか」

 俺は不自然だと何となく感じたのがちょっと言葉に出ただけだ。
 まあそれでも失礼だとは思うけれど。

「それにわざわざ大事にしたのは奈津希さんじゃないですか」

「まあな」

 あっさりと奈津希さんはそれを認めた。

「ちょうどいい機会だと思ったからさ」

 奈津希さんは続ける。

「これから1年ちょっとは一緒にやっていくんだ。なら面倒臭いことはさっさと片付けておこうと思ってさ。そうでなくても風遊美あいつは色々隠し過ぎなんだ。昔はどうであれ、ここは日本の魔法特区。世界に誇るHENTAI文化の発祥地、日本が誇る魔法特区なんだ。怪人怪物なんでもござれ、多少の違いなんで誰も気にしちゃいねえ。ただそうは言っても、本人だとなかなか壁は超えにくいんだと、うちのおふくろが言っていたな」

 これは絶対風遊美さんに聞かせているな。
 そう思いつつ俺は頷く。

「僕はこの島育ちだし、修は日本の本土育ちだから多分本当のところはわからないんだろうけどな。ただ少なくともこの島には差別も偏見もほとんど無いし、そんな事に囚われていたら損だ。だから誰かが気づかせてやらなきゃならないんだが、それも難しいよな。どうしても僕達が知らない重さってのがあるから。そういう意味では天然最強だよな、というのが結論という訳さ」

 何だかな。

「何かすごく持って回った言い方で、物知らずと言われた気がします」

「褒めてるんだよこれでも。修みたいな素直な奴に言われた意見が一番入りやすいしな。さて、そろそろいいだろ」

 俺は奈津希さんの視線の方向を振り返る。
 真ん中の部屋のドアが開き、風遊美さんが出てきた。

 銀色の髪はまだ濡れていてストレート気味になっている。
 いつもの眼鏡はかけていない。
 そして目の色が前の濃い栗色ではなく、緑色。

 あとはいつもと全く同じ。
 でも今までと違って全てが自然で、そして。

「綺麗だ」

「えっ」

 風遊美さんが不意に立ち止まり、顔を赤らめる。

「あのなあ修、天然なのはいいけどまた口に出ているぞ」

 言われて気づいた。
 つい感想がそのまま口に出てしまったらしい。

「本当にそう思いますか? この目の色、変ではありませんか?」

「似合っていますよ。今のほうがずっと自然に見えます」

 それは本当だ。

「本当に、目の色とか髪の色とか怖くないですか」

「何故ですか」

「怖いと感じないですか?」

「全然、よく似合っていますよ」

「本当に?」

「本当ですって」

「あんまり修を虐めるなよ。困っているじゃないか」

「だって……」

 奈津希さんはふっと息をついて、風遊美さんに話しかける。

「修が嘘をつくようなタイプに見えるか」

「そうは思いません。ですがお世辞くらいは……」

「なら、修はうまいお世辞を言える程器用なタイプに見えるか?」

「ごめんなさい。そうは見えません」

「なら答えは一つだろ」

「そうですね」

「ならこの件はこれで以上だ。あ、待てよ」

 奈津希さんはにやりと笑う。

「風遊美、明日何か用事あるか?」

「うーん、特にないですね」

「修は」

「残念ながら無いですよ」

「なら明日、朝メシ食ってちょっとやりたい事がある」

 何だろう。

「釣りじゃ無いですよね」

「これ以上釣っても冷蔵庫に入る場所がない。まあ楽しみにしてな」

 奈津希さんの笑みが少し邪悪に見えるのは気のせいだろうか。

 ◇◇◇
 
 次の日の午前8時、俺達は学校のグラウンドに来ていた。
 奈津希さんの手にはおもちゃの刀のようなものが3本、抱えられている。

「ここで何をするんですか」

 おもちゃの刀があるあたりで、大体の想像がつくのだが。

「見たとおり、チャンバラごっごさ」

 そう言って奈津希さんは俺達におもちゃの刀を配る。

「この刀は柔らかいから顔面突きでもしない限り怪我はしない。これで身体の何処へでも一太刀入れれば勝ち、というシンプルなルールさ。ただし、相手を怪我させない限り魔法使用可能。移動可能な範囲も野球場の内側の四角、つまりホームベースから1塁2塁3塁、ホームベースと結んだ四角の中だね」

「これって、魔法攻撃科の訓練ではないのでしょうか」

「訓練というよりは遊びだな。実戦だと魔法による直接攻撃禁止なんてまどろっこしい事はしないし。ただ怪我しないしルール的も簡単、見た目に勝敗がわかりやすい。という訳で」

 だだーっと奈津希さんは走っていって距離を取る。

「最初だから2対1でいいよ。という訳で模擬戦、スタート!」

 いきなりだ。

「何かもう、唐突ですね」

 俺はそう言って風遊美さんの方を見る。
 風遊美さんは何か考え込んでいる感じだ。

「風遊美さん」

 何か様子がおかしい。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...