機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第18章 まもりたいもの

81 俺は除外の魚釣り

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 中間テストも無事に終わり、補正予算折衝も何とか終わった、6月の平凡な平日。

 補正予算折衝は、大方の研究会や部活にとって、不本意に終わったと思う。
 実際に結構不満が多かったのだが、補正予算にも基準と予算枠があるのだ。

 元々補正予算は新人が予想より多かったり、新たな実績なり、そういう事態の際に執行するものだ。
 殆どの研究会等は新人の大幅獲得に失敗し、実績もそれ程無い。
 なら当然、補正予算を支出する必要はないと見做される訳だ。

 例外的に創造製作研究会は3人の新人獲得に成功、更に買い上げ物品の制作補助の実績も併せ、10万円強の補正予算獲得に成功した。
 別に俺が古巣を贔屓した訳ではない。
 彼らはそれ相応の努力をしたという事だ。

 さて色々な面倒事が終わったので、俺はのんびり課題の制作をしている。
 今回の課題は製作といっても、物ではなくプログラムだ。
 円周率を自分で考えたアルゴリズムで作成し求めよ、という問題である。

 ちなみに評点基準は既に公表されている。
  ① 円周率を独自アルゴリズムで30桁以上正確な値を求められた場合 A評価
  ② 同様に16桁以上正確な値を求められた場合 B評価
  ③ 正確な値が15桁以下、若しくはプログラムミスで動作しないがアルゴリズムは間違っていない場合 C評価
  ④ 但しアルゴリズムを自分で考えていないと判断された場合 D評価
    なお他人またはネット等のアルゴリズムをコピーした可能性があると判断した場合は、確認のため教官室に呼び出しの上面接及び小テストを行う。
  ⑤ 使用可能な変数型は、標準ライブラリにあるもののみとする。
    他人が作成した変数型を使用した場合は、D評価とする。
    またプログラムの実行評価は、スタンドアロンの端末で行う。
  ⑥ D評価の者は再課題を別途作成し、提出することとなる。この場合の最高評価はBとする。
 以上だ。

 この課題のいやらしいと感じるところは、次の2点。
  ○ アルゴリズムを独自に考えてプログラムすること
  ○ A評価を受けるためには、プログラム言語上の仕様の長長整数型よりも桁数が多い計算を行うルーチンを自作する必要があること


 ちなみに何故、プログラムの実行評価をスタンドアロン端末で行うという規定なのか。
 これはネットを検索して正確な円周率を探してくるというお馬鹿なプログラムを、作って提出した先輩がいたためである。
 なお当時の評点基準には抵触しなかったので、A評価を勝ち取ったらしい。

 さて、今俺がいるのは、いつもの学生会工房。
 今工房にいるのは、俺と香緒里ちゃんと詩織ちゃん。

 風遊美さんとジェニーとソフィーちゃんは学生会室でサイト更新をしていて、奈津希さんとルイス君は外でトレーニング。
 香緒里ちゃんは例によってバネ作業に追われていて、詩織ちゃんはまた怪しげな物を作っている。

「今回作っているのは、何なんだ」

 詩織ちゃん、にやりと嗤う。

「単なるオーブンなのですよ。この前のお魚を、丸ごと中までこんがり焼けるオーブンがあったら楽しいかな。そう思ったのです」

 この前のというのは、あの巨大カンパチのことだろう。

「そんなの食べている途中で飽きるし、腐る前に食べきれないだろ」

「ついでなので、低温乾燥機能とスモーク機能も追加するのです。ロウニンアジの丸ごとアジの開きとか、そのスモークとかを見てみたいです」

 カンパチでは無く、飛行漁船で釣った巨大アジの方だったようだ。
 確かにあの大きさのアジの開き、一度はやってはみたい気がする。
 多分やったら後悔するパターンだろうとは思うけれど。

 ◇◇◇

 そしてその終末、土曜日の早朝。
 俺達は海に出ていた。
 
 例の空飛ぶ漁船上から出ている釣り竿は3本。
 4年生、2年生、1年生による学生会内学年対抗アジ釣り大会だそうだ。

 体長40cm以上の美味しい魚をカウントし、重さの総合計で順位を決定。
 賞品等は特になし。
 また俺は船の操縦専任で、参加資格は無しとのこと。

 何でそんな事になったかは簡単だ。
 詩織ちゃんの馬鹿馬鹿しく大きいオーブンを見た奈津希さんが、ついノってしまったのだ。

「どうせなら、これでアジの開きや丸焼きをいくつか作って、学校内有志でパーティしようぜ」

 釣り用の竿も3本に増えているし、仕掛け等も追加購入されていた。
 用意がいいというか、要は奈津希さんが釣りをしたかっただけのような。

 午前8時、釣り開始から開始30分が経過。
 カウントされた釣果はまだ無い。
 体長35cmのカイワリが今のところの最大サイズ。
 あれをリリースした時、風遊美さんが凄く悔しそうな顔をしていたのは内緒だ。

「ジェニー、場所を変えたほうが良さそうか」

「いない訳ではないのれすが。このままの方向と速度であと5m落としてみてくらさい」

 ジェニーの指示で3人共少し糸を出す。
 いきなり一番左、一年生組の竿が曲がった。

「ヒット、体長50cmちょいです」

 香緒里ちゃんと奈津希さんが、残念そうにリールを巻いて竿を上げる。
 その横ではルイス君が、竿とリールを手に戦いを始めていた。
 結構ガンガン下の方へ向かって引く。

 横方向へファイトしすぎると、船のバランスが悪くなる。
 だから真後ろに竿が向かうよう、俺は船を微調整。
 魚が凄く暴れているようだ。
 結構右に左に竿が持って行かれている。

 だがルイス君はしっかりバランスを取っている。
 むしろファイトを楽しんでさえいるようだ。
 流石攻撃魔法科。

「いいなあ、楽しそうで。くすぐってやろうかな」

「頼むから止めて下さい」

 ルイス君は奈津希さんとそんなやりとりをしながら、着実に魚を寄せている。

 5分位かけ、ルイス君が汗びっしょりになって寄せたところを、奈津希さんがタモ網一発で掬い上げた。
 見ると黒いロウニンアジ、といった感じの魚だ。
 見かけはちょっと不気味でさえある。

「体長54cm、重さ7kg。食べられるかの判定は」

「シガテラ毒は大丈夫です」

「ブラックジャックだね。ギンガメアジの一種だ。これでいざという時の開き用は確保できたな」

 奈津希さんはそう言って、氷温保存の魔法をかけて船庫へ。

 1年組はソフィーちゃんに釣り竿が渡され、再び釣りが再開される。
 今度はあっさりとジェニーの竿が曲がった。
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