機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第26章 私が楽しい理由~夏の旅行・前編

128 初日の宿は山の奥

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 学生会関係者全員、前期末の試験は一発クリア。
 バネ工場での強制労働3日間を終えて、無事旅行へと突入した。

 1日めは結構な強行軍。
 飛行機で東京へ出て、新宿までモノレールと電車を乗り継いで行く。

 更にJRの特急で穂高というまさに山の麓な名前の駅で降り、バスで1時間、山間の奥へ奥へと入っていく。
 朝の8時にマンションを出て、着いたのはもう午後4時ちょっと前だ。

「流石にちょっと疲れたれすね」

 ジェニーがそう言うのも無理はない。

「でも駅弁も美味しかったし、楽しかったのです」

 詩織ちゃんこいつの食欲と体力は人類外なので、放っておこう。
 4時間程度の特急あずさ車中で、2回も駅弁を食べているような奴だから。

「何か、いかにも古い日本の温泉という感じだな」

 確かに、春に行った那須の温泉旅館よりも、一段と古さを感じさせる。
 木を使ったいかにもという感じではなく、古い建物をトタンやコンクリ等で直しながら使っている感じ。
 高級感はあまり無い。でも。

「何かすごくいい感じですね」

 風遊美さんの好みには合致しているらしい。

 早速手続きをして部屋に入る。
 今回予約したのは、湯治とか登山客向きの安い大部屋。
 全員で1室だ。

「ここでは枕投げも布団蒸しも禁止だからな。その分温泉は山程あるから存分に楽しんでくれ。夕食は18時、明日は9時40分のバスで出るから、それまでに全部の温泉を制覇するつもりで。あと焼山で芋や卵を蒸したい人は各自フロントに言ってくれ。では解散」

 解散と言っても、全員同じ部屋なのだけれど。

 早速全員浴衣に着替え始める。
 俺とルイスは例によってこそこそ着替える。

 なおロビーはフロントで借りた最大サイズの浴衣でも短すぎて、かなり大胆かつ残念な感じになってしまった。
 まあ本人は全く気にしていないからいいのだが。

 着替えたら早速温泉巡りだ。
 ここは十箇所以上の温泉があり、ほとんどが混浴。
 清掃時間があったり女性専用時間があったりして、全部回るならそれなりの作戦が必要だ。
 まあそんな事は考えずに、まったり愉しめばそれでいいのだけれど。

 しかしてっきり男子組、女子組に別れて行くのかと思ったら、攻撃魔法科プラス詩織ちゃん組、北アメリカ連合に別れてさっさと温泉の旅に出てしまった。
 ルイス君が助けてくれという顔をしていたような気がするが、きっと気のせいだろう。

 残ったのは俺と風遊美さんと香緒里ちゃん。
 ある種、すごくいつもな組み合わせ。

「なら私達でのんびり行きましょうか」

「そうですね」

 という事で、3人で風呂めぐりの旅に出る。
 まずは別浴の内湯で身体を洗った後、合流して散策。

 それにしてもここは風呂が多い。
 単に浴槽を変えているだけでなく、ロケーションも違えば源泉も泉質も違う。
 しかも遠い露天風呂まで最大15分歩くという、とんでもない作りだ。

 要は山の上から谷までの斜面全部に、温泉が散らばっているという感じ。
 しかも斜面をお湯が流れていたりするし。

「何かもう楽しいです。本当は連泊したい位です」

「お子様が多いからな、連泊すると飽きるだろ」

「そうですね」

 入らずに温泉や源泉等をひととおり回るだけで、ほぼ1時間かかってしまった。
 まあ途中、温泉以外にも幾つかイベントがあったせいもある。

 イベントのひとつは、キノコ狩り。
 散策コースの途中に、キノコが発生するほだ木を組んである場所がある。
 そして宿泊客は、自由に採取していい。

 もしキノコを採取出来たら、この後にある温泉調理で試すつもりだった。
 しかし探してみたけれど、食べられそうな大きいキノコは無し。

「他の宿泊客が全部取ったのでしょうか?」

「そうですね。キノコが出にくい時期というのもあるのかもしれません」

 そして散歩コースの最高地点、焼山の山頂で体験できるのは、温泉調理。
 ここには地熱が100℃以上。
 もちろん地表は大気で冷やされているので、そこまで温度は高くない。
 しかし土を掘ると、水蒸気がもわっと出てくる位に熱いのだ。

 なので穴を掘って、食材を埋めて、しばらく放っておくと、地熱による水蒸気で食材が加熱調理される。
 なお食材と埋める際に食材を入れる布袋は、宿のフロントで購入可能だ。

 ただ夕食があるし、俺達3人は大食ではないから、購入してきたのは卵3個だけ。

「宿の人は、卵なら10分程度でちょうどいい半熟になると言っていましたね」

 なので、置いてある大型スコップで50cm位掘ったところに卵入りの布袋を入れ、上に土をかぶせて10分待つ。
 結果は……

「美味しいです。半熟よりちょっと固めですけれど、ぷるんとして食べやすいですし、温泉っぽい風味も感じられて」

「確かにこの位の固さの方が、手に持って食べやすいです」

 風遊美さんも香緒里ちゃんも、楽しそうだ。
 ぐるりと敷地内を回った結果。

「一番下にある菩薩の湯という露天風呂が、いい感じだと思うのですけれど、どうでしょうか?」

「私もあそこが一番良かったです。」

 風遊美さんと香緒里ちゃんの意見が一致したので、タオルを手に露天風呂へ。
 場所は正面玄関から10分位と、そこそこの距離がある。
 湯元はこの露天風呂専用のものという、なかなか他にはないスペックだ。

 ただし施設的には、かなり簡素。
 脱衣場なんて設備は無く、屋根付きの荷物を置くスペースのみ、という強烈な作りだったりする。
 ここの露天風呂は大体そんな感じだけれど、俺としては大変心臓に悪い作りだ。

 出来るだけあさっての方を見て風呂に入る。
 まあ入ってしまえばいつもと同じだ。

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