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第28章 心なき身にもあはれは知られけり~秋・俺の学生会で最後の学園祭~
146 終わりよければ?
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そんな騒ぎの後も、勿論学園祭は続く。
今年は晴れが続いていて、人出がとにかく多い。
そして人出は、週末の土日に最後のピークを迎える。
今日はその、まさに土曜日だ。
ルイスはついに滅多斬り大会の決勝へと出場。
しかし相手はまたもや鈴懸台先輩だ。
この学校に他に人はいないのか、と言いたくなるが、実際にはルイス、相当に強い。
まだ2年生なのに3年、4年、5年の猛者を食いまくっている。
5年攻撃魔法科筆頭は奈津希さんで出場していないし、4年、3年の筆頭は由香里姉と同じ完全魔道士タイプでやはり出場していないのだけれども。
ただ俺は決勝戦を、残念ながら見ることが出来ない。
現在地は賑わいからちょっと離れた学生会工房。
俺以外にいるのは香緒里ちゃん、詩織ちゃん、それと例の居合い斬りの達人さんだ。
達人さんから刀を作っている工房を見たいという要望があったので、案内している。
基本的に説明は香緒里ちゃんと詩織ちゃん任せ。俺は責任者という名の付き添いだ。
「面白い。魔法というからもっと不可思議なものかと思ったが、思った以上に現代的で工学的なんだな」
達人さんは興味深げに、香緒里ちゃんや詩織ちゃんの刀作りの解説を聞いている。
「魔法と言っても、物理学や化学を否定するものでは無いですから」
香緒里ちゃんも詩織ちゃんも、一見フィーリングで刀を作っているように見えるが、実は工学的解析も相当にやっている。
解析を最初に取り入れたのは香緒里ちゃんで、自作の刀をモデリングしコンピュータで強度計算と構造解析を実施。
材料に求められる性質等を分析して鋼の成分割合を調整。そうして作ったのが例の『村正』だ。
当然詩織ちゃんも、同じ考え方を取り入れている。
2人共審査魔法を使えない分、理詰めで作る部分が実はかなり多い。
結果、表面的にはそう見えなくても、現代の工学的知識に裏打ちされた明快な品質の刀となっている。
「きっと刀も実用品としての命脈が続いていたら、こんな形に進化したのだろうな。こんな事他所では言えないが」
達人氏はそう言って苦笑いする。
昨年の騒動を思い出したのだろう。
「それに昨年と比べて作っている刀も進化している。切れ味自体は変わらなくとも、思想的に」
どういう事だろう。
「今年の刀を双方貸してもらって試し切りをした。その後で念のため持ち込んだ去年の刀で試し切りをした。その上での感想だ。私は刀馬鹿だからそれ以上の事はよくわからない。それを承知で聞いて欲しい」
俺達は作業場のパイプ椅子に座って、達人氏の話を聞く。
「昨年の場合はどちらもよく切れる実用的な刀だったが、少し強い癖があった。片方は前のめりに攻めの刀だった。重心がかなり先に近く、そして刃が固い刀だった。試し切りにはいいが怖い刀だった。自分独りになろうと先へ先へ斬り進んでいく。折れるまでとにかく斬って斬って進んでいく。そんな強いけれど怖い刀だった。
もう片方は守りの刀だった。さっきの逆で重心が手前で刀全体がやや柔らかい。言うならば自分独りであろうとその場から敵を一歩も背後へやらないという刀だ。絶対に折れない。刃がボロボロでも最後まで欠けない。どんな事態にも独りで対処できる。味方が他にいなくとも。そんな強いけれど悲しい刀だった。
勿論今年の刀もやっぱり片方は攻撃型で片方は防御型だ。でも去年あった尖りは無い。去年の刀を構えた時の視野が自分に斬りかかる3メートル圏内のみだったとしたら、今年はもっと全体、自分を含めた味方全体を見ながら刀を振るえる感じだ。
切れ味そのものはきっと昨年と同じだろう。評論家としての面白さなら去年の作品の方が個性が尖っている分面白い。でも今年の刀のほうが安心して振るえる。
それはきっと作った人の進歩なんだろう。刀馬鹿として俺はそう思う」
◇◇◇
そんなこんなで、やっと最終日。
今は午後5時30分、あと30分で学園祭は終了。
閉会式は無いので俺も気楽だ。
滅多斬り大会でのルイスは結局、準優勝に終わった。
残念ながら鈴懸台先輩の強大な壁は、今年も崩せなかったようだ。
今、一人を除き学生会役員は全員揃っている。
詩織ちゃんだけは買い出し中だ。
ちなみに詩織ちゃんに買い出しをお願いしたのには、ある目的がある。
そして目的のため、本人以外の役員全員に事情を説明済みだ。
さて、上手くボロをだしてくれるといいが……
「ただいまですよ。今回は何処も売り切れで苦労したのです」
詩織ちゃんが帰ってきた。
持っているパンの袋を見て、俺は確信する。
やっぱり……と。
「詩織ちゃんありがとう。さて、食べながら学園祭を見送りますか」
学園祭が終わっても午後7時過ぎ位までは、念のため学生会、実行委員会ともに詰めている。
なので例年こんな感じで、この部屋から学園祭を見送る事になる。
しかし俺が学生会で迎える学園祭は、今年が最後。
来年はかなり寂しくなるだろうか。
そんな事を思いつつ、パンを整列。
いただきますを皆で言ってから、パンパーティを開始する。
一通り皆でがっついた処で詩織ちゃんの方を確認。
全く用心していない。
両隣に攻撃魔法科女子2名が配置されている事に、何も疑問をもっていないような。
ならばよろしい、そろそろ頃合いだ。
「ではそろそろ、最後のイベントといきますか」
そう言って俺は、ある魔法を唱える。
加工魔法の応用だ。
効果は、詩織ちゃんの座っている椅子と床の固定。
「あ、何をするですか」
同時に両脇配置の愛希ちゃんと理奈ちゃんが、マジックテープ付バンドで詩織ちゃんの両足と左手を椅子に固定した。
この状態なら、流石の詩織ちゃんの魔法でも離脱は出来ない。
「査問会を開始するぞ。まずは詩織被告人、査問会を前に言いたいことはあるか」
「何なのですか。私は無実なのですよ。何の査問なのですか」
まだ気づいていないな、よしよし。
「では副会長、本日のパンの判定は」
香緒里ちゃんがにやけ気味の表情を隠さずに、口調だけはもっともらしく告げる。
「それぞれのパンについては、本土の八王子、世田谷区、中野区、横浜市青葉区所在のものと思われます。これだけのパン屋が本土から出店しているという話は私は聞いてないです」
「次、会計担当」
ルイスはしょうが無いな、という感じだ。
「詩織から渡されたレシートを確認した。香緒里さんの言うとおりだな。偽装工作も何もない」
「と言う訳で、再度本人の弁明を聞こう」
「大学部の出店に出ていたですよ。本土なんて遠くて行ける訳無いじゃないですか」
まだ白をきるか。ならば最後の物証確保だ。
俺の魔法で場所は既に掴めている。
詩織ちゃんの小さなバックの中から、あっさりと目的のものを取り上げ、審査魔法で確認。
おいおい、俺が渡した時以上に改造してある。
人工水晶が天然高級品になっているし、しかも内部に俺の制作している新型杖と同様に魔法陣を展開してやがる。
「これについて、ロビーの審査魔法で判断してくれ」
「凶悪な魔法増幅具デス。詩織さんなら……約7倍程度に魔法増幅可能デス」
「という訳だ。ちなみにお前の親父も嘆いていたぞ。頼むから島にいるはずの日に、本土のホームセンター扱いのレシート精算をしてくれるなと」
詩織ちゃんは、やっと状況を把握したらしい。
「うう、はめたのですね」
「本土に魔法で気軽に買い物に行くほうがおかしい! これは当分取り上げな」
俺はあらかじめ用意してあったカット済み鉄板を魔法で加工し、その中に改造済みアミュレットを封印する。
詩織ちゃんの魔法でも、これなら当分は使えまい。
「ああ、それが無いとお買い物不便なのですよ。ジョ●フル本田とかぶー●・●ーる・ぶらんじぇりーとか……」
「白状したな。完全にアウト!」
そんな感じで。
今年も賑やかに学園祭は終わっていった。
今年は晴れが続いていて、人出がとにかく多い。
そして人出は、週末の土日に最後のピークを迎える。
今日はその、まさに土曜日だ。
ルイスはついに滅多斬り大会の決勝へと出場。
しかし相手はまたもや鈴懸台先輩だ。
この学校に他に人はいないのか、と言いたくなるが、実際にはルイス、相当に強い。
まだ2年生なのに3年、4年、5年の猛者を食いまくっている。
5年攻撃魔法科筆頭は奈津希さんで出場していないし、4年、3年の筆頭は由香里姉と同じ完全魔道士タイプでやはり出場していないのだけれども。
ただ俺は決勝戦を、残念ながら見ることが出来ない。
現在地は賑わいからちょっと離れた学生会工房。
俺以外にいるのは香緒里ちゃん、詩織ちゃん、それと例の居合い斬りの達人さんだ。
達人さんから刀を作っている工房を見たいという要望があったので、案内している。
基本的に説明は香緒里ちゃんと詩織ちゃん任せ。俺は責任者という名の付き添いだ。
「面白い。魔法というからもっと不可思議なものかと思ったが、思った以上に現代的で工学的なんだな」
達人さんは興味深げに、香緒里ちゃんや詩織ちゃんの刀作りの解説を聞いている。
「魔法と言っても、物理学や化学を否定するものでは無いですから」
香緒里ちゃんも詩織ちゃんも、一見フィーリングで刀を作っているように見えるが、実は工学的解析も相当にやっている。
解析を最初に取り入れたのは香緒里ちゃんで、自作の刀をモデリングしコンピュータで強度計算と構造解析を実施。
材料に求められる性質等を分析して鋼の成分割合を調整。そうして作ったのが例の『村正』だ。
当然詩織ちゃんも、同じ考え方を取り入れている。
2人共審査魔法を使えない分、理詰めで作る部分が実はかなり多い。
結果、表面的にはそう見えなくても、現代の工学的知識に裏打ちされた明快な品質の刀となっている。
「きっと刀も実用品としての命脈が続いていたら、こんな形に進化したのだろうな。こんな事他所では言えないが」
達人氏はそう言って苦笑いする。
昨年の騒動を思い出したのだろう。
「それに昨年と比べて作っている刀も進化している。切れ味自体は変わらなくとも、思想的に」
どういう事だろう。
「今年の刀を双方貸してもらって試し切りをした。その後で念のため持ち込んだ去年の刀で試し切りをした。その上での感想だ。私は刀馬鹿だからそれ以上の事はよくわからない。それを承知で聞いて欲しい」
俺達は作業場のパイプ椅子に座って、達人氏の話を聞く。
「昨年の場合はどちらもよく切れる実用的な刀だったが、少し強い癖があった。片方は前のめりに攻めの刀だった。重心がかなり先に近く、そして刃が固い刀だった。試し切りにはいいが怖い刀だった。自分独りになろうと先へ先へ斬り進んでいく。折れるまでとにかく斬って斬って進んでいく。そんな強いけれど怖い刀だった。
もう片方は守りの刀だった。さっきの逆で重心が手前で刀全体がやや柔らかい。言うならば自分独りであろうとその場から敵を一歩も背後へやらないという刀だ。絶対に折れない。刃がボロボロでも最後まで欠けない。どんな事態にも独りで対処できる。味方が他にいなくとも。そんな強いけれど悲しい刀だった。
勿論今年の刀もやっぱり片方は攻撃型で片方は防御型だ。でも去年あった尖りは無い。去年の刀を構えた時の視野が自分に斬りかかる3メートル圏内のみだったとしたら、今年はもっと全体、自分を含めた味方全体を見ながら刀を振るえる感じだ。
切れ味そのものはきっと昨年と同じだろう。評論家としての面白さなら去年の作品の方が個性が尖っている分面白い。でも今年の刀のほうが安心して振るえる。
それはきっと作った人の進歩なんだろう。刀馬鹿として俺はそう思う」
◇◇◇
そんなこんなで、やっと最終日。
今は午後5時30分、あと30分で学園祭は終了。
閉会式は無いので俺も気楽だ。
滅多斬り大会でのルイスは結局、準優勝に終わった。
残念ながら鈴懸台先輩の強大な壁は、今年も崩せなかったようだ。
今、一人を除き学生会役員は全員揃っている。
詩織ちゃんだけは買い出し中だ。
ちなみに詩織ちゃんに買い出しをお願いしたのには、ある目的がある。
そして目的のため、本人以外の役員全員に事情を説明済みだ。
さて、上手くボロをだしてくれるといいが……
「ただいまですよ。今回は何処も売り切れで苦労したのです」
詩織ちゃんが帰ってきた。
持っているパンの袋を見て、俺は確信する。
やっぱり……と。
「詩織ちゃんありがとう。さて、食べながら学園祭を見送りますか」
学園祭が終わっても午後7時過ぎ位までは、念のため学生会、実行委員会ともに詰めている。
なので例年こんな感じで、この部屋から学園祭を見送る事になる。
しかし俺が学生会で迎える学園祭は、今年が最後。
来年はかなり寂しくなるだろうか。
そんな事を思いつつ、パンを整列。
いただきますを皆で言ってから、パンパーティを開始する。
一通り皆でがっついた処で詩織ちゃんの方を確認。
全く用心していない。
両隣に攻撃魔法科女子2名が配置されている事に、何も疑問をもっていないような。
ならばよろしい、そろそろ頃合いだ。
「ではそろそろ、最後のイベントといきますか」
そう言って俺は、ある魔法を唱える。
加工魔法の応用だ。
効果は、詩織ちゃんの座っている椅子と床の固定。
「あ、何をするですか」
同時に両脇配置の愛希ちゃんと理奈ちゃんが、マジックテープ付バンドで詩織ちゃんの両足と左手を椅子に固定した。
この状態なら、流石の詩織ちゃんの魔法でも離脱は出来ない。
「査問会を開始するぞ。まずは詩織被告人、査問会を前に言いたいことはあるか」
「何なのですか。私は無実なのですよ。何の査問なのですか」
まだ気づいていないな、よしよし。
「では副会長、本日のパンの判定は」
香緒里ちゃんがにやけ気味の表情を隠さずに、口調だけはもっともらしく告げる。
「それぞれのパンについては、本土の八王子、世田谷区、中野区、横浜市青葉区所在のものと思われます。これだけのパン屋が本土から出店しているという話は私は聞いてないです」
「次、会計担当」
ルイスはしょうが無いな、という感じだ。
「詩織から渡されたレシートを確認した。香緒里さんの言うとおりだな。偽装工作も何もない」
「と言う訳で、再度本人の弁明を聞こう」
「大学部の出店に出ていたですよ。本土なんて遠くて行ける訳無いじゃないですか」
まだ白をきるか。ならば最後の物証確保だ。
俺の魔法で場所は既に掴めている。
詩織ちゃんの小さなバックの中から、あっさりと目的のものを取り上げ、審査魔法で確認。
おいおい、俺が渡した時以上に改造してある。
人工水晶が天然高級品になっているし、しかも内部に俺の制作している新型杖と同様に魔法陣を展開してやがる。
「これについて、ロビーの審査魔法で判断してくれ」
「凶悪な魔法増幅具デス。詩織さんなら……約7倍程度に魔法増幅可能デス」
「という訳だ。ちなみにお前の親父も嘆いていたぞ。頼むから島にいるはずの日に、本土のホームセンター扱いのレシート精算をしてくれるなと」
詩織ちゃんは、やっと状況を把握したらしい。
「うう、はめたのですね」
「本土に魔法で気軽に買い物に行くほうがおかしい! これは当分取り上げな」
俺はあらかじめ用意してあったカット済み鉄板を魔法で加工し、その中に改造済みアミュレットを封印する。
詩織ちゃんの魔法でも、これなら当分は使えまい。
「ああ、それが無いとお買い物不便なのですよ。ジョ●フル本田とかぶー●・●ーる・ぶらんじぇりーとか……」
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