機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
148 / 202
第29章 冬はつとめて(1) ~修4年冬編・前半~

147 もうすぐ冬休み

しおりを挟む
 風遊美さんは、魔技大の推薦入試に無事合格した。

 そして本年も、来年の学生会役員立候補者は現れなかった。
 なので来年の役職は順送り。
 引き継ぎも何もあったものじゃない。

 一応会長が香緒里ちゃん、副会長がジェニー、書記がソフィー、会計がルイス、監査が詩織ちゃんとなっている。
 実際は適当に仕事を割り振ってやるから、表向き以外には役職は余り関係ない。
 俺1人が抜けただけなので、変化があまり無いのは仕方ないのだけれど。

 今年のクリスマス会は、盛大にやる事になった。
 由香里姉、鈴懸台先輩、月見野先輩から始まり愛希ちゃん理奈ちゃんロビーまで、総勢14人。
 どうせ毎週金曜日の食事や露天風呂で顔なじみだし、もう全員でいいだろうという話になった。

 なおこのクリスマス会、裏では、奈津希さんの壮行会第一弾を兼ねている。
 これは本人には内緒だ。

 なお会場は、当初はバネ工場横スペースのつもりだった。
 しかしパーティ後に露天風呂が使いたいという諸方面、ぶっちゃけ俺とルイス以外の声により、例年通りマンションでの開催となった。
 露天風呂に引きこもり用施設を増設しようかと、俺もちょっと本気で悩んだ。
 残念ながら時間的制約で作れなかったけれど。

 その代わり工房で俺が作ったプレゼントは2品。
 1つはクリスマスのプレゼント交換用、もう1つは奈津季さん用の例のボールペン最終調整品だ。

 プレゼント交換用は、昨年と同じストラップ型非常用魔道具。
 今回の魔道具の形はちっこいネズミ型。来年の干支のねずみ年にあわせてだ。
 性能は昨年比で概ね1割程度アップ。まあ小さいし予算制約も厳しいのでこんなものだろう。

 奈津季さん用ボールペンは威力を更に若干下げ、コントロール最重視仕様にした。
 要は奈津季さん専用杖プレアデスと同じ仕様だ。

 しかし制作した俺の技術と知識が大分上がった分、性能はかなり上がっている。
 大きさこそプレアデスの7分の1程度だが、機能的には数段上だ。
 今の俺の技術と知識のほぼ全てが詰まっている。


 他にも折りたたみ大型テーブルや椅子なんてのも作成した。
 現在のマンションのテーブルでは、流石に14人は座れない。
 だから今までは金曜日には応接セットとテーブルとを併用していた。

 しかしついに部屋主の由香里姉から、大型テーブル作成指令が来てしまったのだ。
 なので止む無く作成し、リビングダイニングに配置。
 流石に28畳あれば、ちょっと配置を変えるだけで収まってしまう。
 普段は折り畳んで俺の部屋に仕舞っておく予定なのだけれども。

 そう言えば魔道具については別な注文もあった。
 風遊美さんが、わざわざ学生会室までやって来て注文したのだ。

「修さんお願いがあります。実は学園祭で販売していた市販版の杖、再注文はできますか」

 風遊美さん自身はテュルソスの杖オリジナルを使っている。
 なので注文する必要は無い筈だ。
 だから理由を聞いてみたところ。

「エリカからメールがあったんです。あの杖がとてもパワフルなのに使い易いって喜んでいましたよ。ただ他の人からも同じものが欲しいと言われて困っているそうです」

 エリカさんが持ち帰ったのは、オリジナル仕様の外科バージョンだ。
 確かに使いやすいだろうし、出力も高いけれど……

「すみません。あれは市販不許可なんです。今特区外へ市販許可が下りているのはデチューン版テュルソスか改良型ケーリュケイオンまでなんです」

「それはわかっていますよ。私も同型の杖を使っていますから」

 風遊美さんはオリジナル仕様の性能も十分知っている。
 そしてオリジナル仕様は、特区外はおろかこの学校でも市販は許可されていない。

「欲しいのは市販版の方だそうです。あの後学園祭の時に残っていた4本全て買っていったそうです。市販版の方でも今まで使っていた杖と段違いに使い易いって、とても評判良いそうです。ただ4本しかないので研究室内で交代で使っている状態ですので、出来れば人数分欲しいと……」

 俺は少し安心する。
 それなら対応可能だ。

「市販版でいいなら増産できますよ。在庫がないので2週間程度かかりますけれど」

「それでいいのでお願いしていいですか。出来れば内科用3本と外科用5本。料金は支払います」

 なら問題は全く無い。
 という訳でなんやかんや工房の方も忙しかった訳だ。
 勿論バネ工場の方もあるし。

 ◇◇◇

 テュルソスの杖量産版8本は無事出荷した。
 年内、クリスマスまでには届く予定だ。

 なお大量注文のおまけにテュルソスの杖量産版万能型1本も同梱している。
 万能型とは拡散特性を外科と内科の中間にした代物。
 まあ知り合い向けサービスといった処だ。

 さて、今日は12月24日。
 授業最終日にしてパーティ当日だ。

 例によってドレスコードがあるので、昨年と同じスーツを用意した。
 ルイスもロビーも俺の部屋で着替えている。

 ルイスは昨年懲りたらしく、真っ当な紺色スーツだ。
 かたやロビーは何故か緑色のタンクトップに迷彩柄ズボン。
 そして何故か髪をムースでアイロンみたいな変な形に固めている。

「ロビー、その服装が何か聞いていいか」

 ルイスにはその服装の意味はわからないだろう。

「ジェニーさんが言っていたデス。この格好で片膝突いて『間違える』と言えばOKだそうデス」

 ロビー、君もわかっていない。
 正しくは『待ちガイル』だ。
 しかしクリスマスと関係ないだろ、それ。
 筋肉的にも完璧で、思い切り似合っているけどさ。

 3人共着替え終わったので、リビングへ。
 服装審査官のジェニーと詩織ちゃんがやって来た。
 今回はジェニーはダブダブのトナカイのきぐるみ、詩織ちゃんは猫耳サンタ服ワンピースという怪しいスタイルだ。

「ロビーは完璧れす。それでは事前に教えたポーズを」

「間違える!」

「もうひとつは」

「ソニックブーム!」

「合格なのてす」

 他の連中からも拍手がわく。
 いいのかそれ。

「ルイスもなかなかいいのです。出来ればスーツより濃い緑色の学園章付ジャケットの方がよりらしいのですけれ」

「僕は映画じゃない」

 こっちは本人、わかっていて気にしているようだ。

「それに比べて修先輩は面白くないです。でもまあこれ以上面白くなりそうにないのでOKなのです」

 消極的OKだがまあいいとしよう。
 仮装大賞するよりよっぽどマシだ。

 全体の服装を見ると、仮装系は他に奈津希さんと理奈ちゃんか。
 奈津季さんはバニー耳付き肩出しミニスカサンタコスというもう色々間違った代物。

 理奈ちゃんは帽子と服につけたわざとらしい白い大きなボタン風のところだけはサンタコスだけど、その服どう見ても黒のゴスロリ服だ。
 髪もいつものポニテで無く解いて長く垂らしているし、よく見るとまつげがわざとらしく長い。
 間違いなく確信犯だ。

「そんなの何処に売っていたんだ?」

 ルイスが思わず質問してしまう。

「淑女の嗜みですわ」

 理奈ちゃんの横で愛希ちゃんがルイスに説明。

「前に女子同士でのパーティで冗談で着て気に入ったんだよ。実は通販で買えて案外安いんだ」

「余分な事は言わないで欲しいですわ」

 キャラまで変えてやがる。

「ちなみにまつげのエクステンションは、本土のダイソーで大量購入して持っているんだ。あのわざとらしいつけボタンも去年ダイソーで買ったのの流用だよ。あと服は安い分縫いが弱くて実は手作業で補強して……」

 何故説明が止まったかと見てみれば、愛希ちゃんの周囲に白いキラキラが見える。
 由香里姉が使うのと同じダイヤモンドダスト。
 つまりは警告だ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

処理中です...