機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第31章 次の始まりの少し前に ~春の章~

162 皆何かに飢えていた

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 怒られた。

 いやもう小1時間ネチネチと怒られた。
 ハムとチーズをつまみに、俺達含む13人全員集合した上で、車座になって怒られた。

 むろん夜だし寺だしで、声は出せない。
 ただ今の香緒里ちゃんは、手を繋がなくとも相互伝達魔法を使う事が出来る。

 なので暗い部屋の中全員沈黙状態で、時折チーズとハムをつまみながら査問会が進行。
 主に指導役は由香里姉と風遊美さんが担当したけれど、他の皆様も色々チクチクと。
 本当に勘弁してくれ、もう過ちは繰り返しませんから。

 結局おみやげのハムとチーズが全滅した事で、査問会は終了となった。
 要はこれらを食べたかったんじゃないか。
 そう思っても言ってはいけない。
 そんな立場じゃなかったし。

 そして次の朝は5時に起きて、善光寺の朝の勤行を見学。
 俺と月見野先輩と風遊美さんと香緒里ちゃんは満足の朝食を食べ一休みした後、バスで長野駅へ。
 長野駅内及び周辺でお買い物をした後、新幹線で東京へと帰る。

 東京駅で山手線に乗り換え目黒駅で下車。
 坂を下り徒歩5分位で建物入口に到達し、建物内なのに川が流れている横を歩いてエレベーターで8階に上る。

 そこのホテルフロントに荷物を預け、またエレベーターで下りて1階へ。
 左2軒めの店が、昼食予定のホテルビュッフェをやっているレストランだ。

「今日はここ宿泊だから思う存分食べてよし。ただチェックインは午後3時からだからな」

 ちなみに今は午後1時で予約は90分。
 ゆっくり食べてゆっくり移動すれば、チェックイン時間。
 なので遠慮はいらないし、かなり肉に飢えている連中も多そうだしな。

 皆、スタートとともに勢い良く出ていく。
 俺ものんびりと取りに行く。

 とりあえず牛もも肉のグリルはキープして、オープンサンド3種もキープ。
 あとは……ソーセージとマカロニチーズもかな。
 あとはサラダを色々。

 なんやかんやでいっぱい取りすぎてしまったので、席に戻ることにする。
 誰も戻ってくる気配は無い。

 どうも皆さん、健全すぎた食生活で、飢えた野獣と化しているようだ。
 あの月見野先輩や風遊美さんまで、何やら獲物を狙う感じで色々物色している。
 ちなみに小型にして燃費最悪な誰かは、既に山盛りの皿等を1度置いてまた物色中。

 俺が冷たい紅茶を飲みながらのんびり待っていると、やっと2番手香緒里ちゃんが戻ってきた。
 内容は俺とほぼ同じ。サンドイッチ、肉少々、サラダ大量ドレッシング複数かけ、冷たい紅茶、デザート色々だ。

「何か皆異様に取るのに熱中しているよな」

「そろそろ洋風の食事が恋しいですし。由香里姉も何か凄い気合入っていましたから」

 月見野先輩や風遊美さん等も戻ってきた。

「どうしますか。皆時間かかりそうですし、先に始めますか」

「もう少し待ちましょうよ。皆が色々欲しくなる気分もわかりますし」

 そうしているうちに理奈ちゃんが戻ってきた。
 肉、肉、ソーセージ、カジキのグリル、ジャーマンポテト、マカロニチーズと緑色が見当たらない思い切った選択だ。

「よく考えたら、足りない分はいくらでも取りにいけるのですよね。だからシンプルに第一に食べたいものだけを優先しました」

 そして……
 最後に北米組がそんなんありかという複層重ね的な皿を持って戻ってくるまで、10分少々かかった。
 そして制限時間一杯まで満喫した結果……

 ほぼ全員ノックアウト、という悲しい結果になった。

 このレストラン、ホテルビュッフェとしては点数は多い方ではないけれど、一つ一つの料理が美味しい。
 盛り付けも綺麗で凝っている。
 そしてこの連中にトドメをさしたのは、デザートの美味しさだった。

 皆気づくとほぼ動くのが苦しい状態。
 のそのそ動く連中を何とかエレベーターまで誘導し、8階のフロント前ソファースペースで荷物とチェックインの手続きをして、ほぼ3時ちょうどにキーを受取り和室3部屋に押し込む。

 なお部屋割りはやっぱり北米組、攻撃魔法科組、そして月見野先輩、風遊美さん、俺、香緒里ちゃん、詩織ちゃんの組に自動的にわかれた。

 幹事としては女子部屋2と男子部屋1のつもりだったのだ。
 まあいつもの事だけれども。

 部屋は3部屋ともほぼ同じ作りで、次の間、檜風呂、サウナ付という高級仕様だ。
 風呂も浴槽は広くはないが明るく開放的でいい感じ。
 で、部屋につくと13人の中で、俺を除いて唯一元気な詩織ちゃんが誘ってくる。

「さあ、買い出しに行くですよ!」

 おいおいいきなりかい。

「どうせ皆今日はもう動けないと思うのですよ。なら時間を有効活用スべきなのです。杖の材料を買いに行くのにちょうどいいのです」

 言われてみればもっともだ。
 まあこいつには別の意図も絶対あるのだろうけれど。

 しかし実は俺も、詩織ちゃんが一緒のほうが好都合な面もある。
 魔力が強い人間が一緒の方が、今回の材料を判別するのに便利だ。
 だからここは協力するとしよう。

「じゃあちょっと買い出しに行ってきます。何か欲しいものありますか」

 返事がない。
 屍のようだ、いや違う。
 一応香緒里ちゃんが手を振っているので、了解はしているらしい。

「では、行ってきます」

 俺と詩織ちゃんは部屋を出る。

「それで杖の材料は何を買う予定なのですか」

「石、天然物の鉱石だ」

 俺は説明する。

「必要なのは電子部品で言えばコンデンサ。増幅した事による魔力の出力むらを均す為のものだ。どの属性の魔力でもある程度蓄積できるのが条件。ある程度の大きさの天然水晶あたりが無難だろうけれど石毎に特性が違うから実際に見ないと怖くて買えない」

 なので通販では怖くて購入できない。
 それが材料が島で揃わなかった理由だ。

「成程、理解したのです」
「出来れば今回は予備を含めて10個位は確保したい。次の段階の最強杖にも使う予定だからな」

 詩織ちゃんは頷いて俺の方を見る。

「それは私への貸与分も含むですか」

「一応2個はその分の予定だ」

「ならその2個は私との相性だけで考えて、他はできるだけ全属性フラットに対応できるものを探せばいいのですな」

「その通りだな」

「それで店は何処ですか」

「そんなに都合いい石がそうそうあると思えないからな、複数回る予定だ。最初の店はここから歩いて10分位かな」
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