機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第37章 夢の続き

199 お互い様の迷宮

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「私と2人だけで、なんて修兄も考える事もあるんですか」

 何か微妙な口調で聞かれる。

「限にこうして2人で話しているだろ。結局香緒里ちゃんに色々頼っているし、これからも色々頼るだろうしさ」

「私が頼ってばかりいるんですけどね。この前の研究室の件だって」

「そうでもないさ」

 この辺はいつも思っている事だ。だからスムーズに口から出てくる。

「俺のほうが1年早く生まれたから、そういう機会が多いだけ。実際今ここで学生会の部屋うんぬんなんて話しているけどさ。俺を学生会に呼んだのは、本当は由香里姉ではなくて香緒里ちゃんだろ。今の俺があるのはある意味そのおかげだしさ」

「知っていたんですか」

 香緒里ちゃんの声が、少し驚いている。

「入って半年後位かな、由香里姉に聞いた。『私は修は修らしく学生生活やっているようだし、誘わなくてもいいかなと思っていたんだけどね。香緒里に説得されたんだよ』って。お陰で色々あってさ、きっと今の楽しさの9割位は香緒里ちゃんのお陰だな。ありがとう」

 いつか言おうと思っていたのだ。
 随分と遅くなってしまったけれど。

「でも修兄には入学当初の課題からお世話になったし、この前の研究室を決める時だって結局私が聞く前から色々調べたりしてくれたみたいだし、一方的にお世話になりっぱなしです。このバネ関係だって、結局9割は修兄のお陰ですし」

 でも、俺はいくらだって反論できる。
 いつも思っている事だから。

「もし香緒里ちゃんが俺の1年先輩だったら、やっぱり俺に同じ事をしてくれたんじゃないかな。俺はそう思うけど違うか?
 それに今こそ俺はそこそこ魔法を使えるけれど、本来は俺は魔法が使えない筈なんだ。魔力も魔法を使えない一般人と同等だったし、入校時の因子調査結果でもそういう結果だったしさ。
 それでもこの学校には来たかもしれない。地元から出たかったし、出る理由としてこの高専は色々ちょうどいいしさ。ここしか無いという独自性と地元から遠いという立地条件、学費生活費の安さと難関校というブランドと。
 でも今みたいに色々魔法で作ったり、研究したりはできなかった。これもきっと香緒里ちゃんのお陰だ。俺と香緒里ちゃんの間では魔力が融通可能ってのがその証拠だろ」

「何かやっぱりずるいです、修兄は」

 香緒里ちゃんがそう言って頬を膨らます。

「いつの間にか修兄の話に巻き込まれてしまっています。最初はただ、修兄と2人で話す機会が増えたなあ、というだけの話だった筈なのに」

「まあそうだけどさ。香緒里ちゃんがこの学校に来てから色々あったなと思ったら、ついね」

「確かにそれは、そうですね」

 香緒里ちゃんも頷いてくれた。

「最初は飛行スクーターだったんですよね、作って貰ったの」

「でもあのスクーターの飛行原理は、香緒里ちゃんの魔法だしさ」

「そして学生会に入って、キャンピングカーで空飛んでゲリラ的に露天風呂作って」

「まさかマンション買って、常設の露天風呂を作る羽目になるとは思わなかったな」

「そして同じ構造の部屋をもう1つ買って、完全に保養施設化するんですよね」

「何時でも顔なじみが一緒に集まれるようにさ。元々人嫌いだった俺の言う事じゃないよな」

「でもあの時、修兄は私の手を握ってくれたんですよね」

 どの時かは言わなくても俺にはわかる。香緒里ちゃんと由香里姉との初対面の時。あの公園でだ。
 多分あれが、俺の今へ至る道への、最大の分岐点。

「あれから15年位かな」

「行ってみたら随分小さい公園だったですね。トンネルじゃなくて小さな防空壕の穴で」

 確かに風遊美さんと行った時、そう感じた。随分小さい公園で、そして穴だったんだなって。
 しかしだ。あの頃も今も、きっと……

「やっている事は変わらないかな。2人で何やかんや色々話して」

「ならきっと外で由香里姉が待っているんですね。そろそろ頃合いかななんて思いながら」

「やめてくれ、冗談にならない」

「大丈夫ですよ。今日は少し遅くなるって言っていましたから」

 香緒里ちゃんはそう言って笑う。

「まあそれでもこれからも宜しくな、香緒里ちゃん」

「ひとつ性格の悪い質問をしていいですか?」

 俺は頷く。

「何でもいいよ、今ならば」

「これからも宜しくって、どれくらいの期間ですか」

 ちょっと恥ずかしいけど、これは香緒里ちゃんに助け船を出してもらったんだと思う。
 言わなければならない事を、はっきり言う為に。
 なら思い切って、言ってしまうのが正しい。

「俺が生きている間かな。好きだよ、香緒里ちゃん」

 ついに言ってしまった。
 いつか言おうとは思っていたのだけれど。

 ちょっとだけ沈黙。
 そして。

「ずっと待っていたんです、そう言ってくれるのを」

 後の台詞はどんどん早くなる。

「何回も告白したのにスルーされるし、修兄の周辺には女の子が増えまくるし、何回も何回も諦めようかとも思ったんですよ。それでも諦められないし、諦めようとするたびに修兄の事が好きだって事を再認識するばかりで……」

 最後の方は涙声。

「ごめん、遅くなって」

「でもちゃんと返事をくれたから、許してあげます」
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