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第9章 冬休みはリゾートへ
第59話 スキー場の空中視察
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何回か挑戦すると次第にコツがわかってくる。板のどの辺に体重を乗せると曲がるとか速度が落ちるとか。そうなってくるとなかなか楽しい。
全員で下まで行って、魔法で坂の上へ移動して、また滑り降りて。何回かこれを繰り返した。
見える程度の場所で、かつ何回も同じ場所を移動する分には魔法で移動してもそれほど魔力は必要ないようだ。それをいいことに移動魔法をリフト代わりにガンガンに使う。
今滑っている斜面は幅が谷間の約30腕。長さが大体300腕程度。わりとスキー場らしい地形だ。斜面の傾斜も緩めできっと初心者向きだと思う。
ただこの距離だとあっさり滑り降りてしまう。そして慣れてくるとよりハードな方向に挑戦したくなってくるものだ。
「次はもっと上から挑戦してみないか」
そんなミランダの意見に賛同する者2名。
「そうですね。私ももう少し長く滑りたいです」
「同意かな」
ナディアさんとフィオナだ。
なお今では3人とも『長めで踵固定のスキー』を使っている。これが一番速度が出て楽しいらしい。
「私は今の距離でも十分ですわ」
「私もです」
こっちはテディとサラ、そして俺。テディは今はソリではなく俺と同じ幅の太いスキー。サラはボードに乗り換えている。
ちなみにこの『上から派』と『今まで通り派』は滑り降りる速度の違いでもある。
上から派の3人は3人とも速度を出すタイプ。だから下で遅い3人の事を待っている時間が長いわけだ。
ゆっくりなテディや俺を待っても距離が短いからそんなに長いこと待つわけじゃないけれど。
「なら上空からちょうどいいスタート場所を探しましょうか」
ナディアさんがそんな提案をした。
「上空から見るって、空を飛ぶ魔法があるのかな?」
「この子達がいますから。ニア! マイア!」
バタバタとミニ龍がやってくる。
「この子達なら3人くらいは余裕で載せられます。私も何回も乗っていますし問題ありません。ニア、マイア。元の大きさになって」
龍二頭が一気に巨大化した。
久しぶりに見たがやっぱり大きい。これなら余裕で3人くらい乗るだろう。何せ中立古龍と白龍だ。
ただこの姿は見慣れていないと結構怖い気もする。
ただしそういう怖さを感じない人もこの中にはいる訳だ。
「私も乗ってみたいですけれど、駄目でしょうか」
勿論テディだ。
「なら白龍は下の出発点まで送らせましょうか。中立古龍は上の出発点行きという事で」
「どうせ飛ぶなら全員で一度行った方がいいんじゃないかな」
フィオナのこの台詞、これはきっと『赤信号みんなで渡れば怖くない』式の危険回避だ。いやちょっと意味は違うか。
「どうせなら全員で取り敢えず上まで行きましょう。ニア、マイア!」
2匹が姿勢を低くしてこっちにぬーっと首を伸ばしてくる。首の上に乗れという事らしい。
「それじゃスキーを外して袋にしまいましてと。あ、マイアちゃんありがとうございます」
テディがまっさきに白龍の首へ。仕方ない。俺とサラも続く。
中立古龍の方もナディアさん、フィオナ、ミランダの3人を乗せたのが見えた。
「それじゃニア、マイア、お願い」
思ったより軽い感じで宙に浮く。不安定な感じも全く無い。何故か妙に安定感すら感じる。風もほとんど感じない位だ。
「何か不思議な安定感がありますね」
「龍は羽ばたきではなく魔法で飛んでいますから。風も飛行中は魔法で遮断しています。あと龍の飛行魔法は付近一帯にかかっているので、首から落ちても下まで落ちる事はありません。だから心配なく」
「そう思うと楽しいよな」
そう聞くと元気になるのがミランダだ。早速むちゃな姿勢で下を見る。 俺の前のサラもおそるおそるという感じだが周りを見ているようだ。
「やっぱり楽しいですわ」
テディは超ご機嫌。確かに楽しいよな。
ホテルもテルメ館も随分と小さくミニチュアのようになってしまった。
「あ、でもこれ、下から見られたら怖がられるんじゃない?」
「この辺目撃できるような範囲に住んでる人はいないだろ、多分」
「そうですね。でもあまり高くあがらずにスキーコースを探しましょうか」
「そう言えばそうだったね」
そんな訳でスキーをしている谷をさらに登っていく。
「ここは左の方が太くて長そうだよね」
「そうですね」
「ここからは谷じゃなく山の斜面も緩やかそうだよ」
フィオナは完全にスキー場分析モード。最初怖がっていたのは何処へ行ったという感じだ。
そんな感じで飛ぶこと数分程度。
「ここの峠っぽい場所が限界ですね。ここから山頂方向は細いですし、雪庇が出来ているかもしれませんから」
山岳地帯育ちのナディアさんの判断で、峠っぽくなっている広い場所へ降りる。かなり登って来たなという感じだ。ホテル等は既に別の尾根の影で見えない。
「ここからなら滑り甲斐があるよね。コースはこの斜面を下りて、あとは左へ行って谷に入って、あとは谷沿いだよね」
「そうだな。それじゃ行くか」
ナディアさんを含め3人はやる気満々だ。
一方で俺達はというと……
「ちょっとこの斜面は怖いですわ」
テディは龍は怖くないが斜面は怖いようだ。俺も骨折無しで滑れるとは思えない。
目の前で見ると滑るというか落ちそうな感じの斜面だ、これは。刻むにしても斜面そのものが急だしかなり厳しい。
「俺も無理だな」
「私も遠慮します」
3人の意見が一致した。
「それじゃこっちはさっきの場所に魔法で移動して、そこからまた滑るよ」
「わかりました。それでは私達はここからやってみます」
「まずは板とストックを出してと」
それにしても本当にこんな斜面、滑る気なのだろうか。そう思ったのだけれど。
「それじゃ行ってくるな」
「私も行きます」
ミランダとナディアさんがかっ飛んでいった。おいおい。
「それじゃ僕も行くね」
フィオナもスタート。
ちなみに速い派3人もそれぞれ滑り方やコース取りがかなり違う。
ナディアさんは割と小刻みにターンを繰り返すタイプ。フィオナは風魔法で速度を調節しつつ基本的にまっすぐ滑り降りるタイプ。ミランダは右へ左へ大きく蛇行しながら降りていく。
「それじゃ下へ移動しよう」
3人が頷いたのを見て、俺は移動魔法を起動した。
全員で下まで行って、魔法で坂の上へ移動して、また滑り降りて。何回かこれを繰り返した。
見える程度の場所で、かつ何回も同じ場所を移動する分には魔法で移動してもそれほど魔力は必要ないようだ。それをいいことに移動魔法をリフト代わりにガンガンに使う。
今滑っている斜面は幅が谷間の約30腕。長さが大体300腕程度。わりとスキー場らしい地形だ。斜面の傾斜も緩めできっと初心者向きだと思う。
ただこの距離だとあっさり滑り降りてしまう。そして慣れてくるとよりハードな方向に挑戦したくなってくるものだ。
「次はもっと上から挑戦してみないか」
そんなミランダの意見に賛同する者2名。
「そうですね。私ももう少し長く滑りたいです」
「同意かな」
ナディアさんとフィオナだ。
なお今では3人とも『長めで踵固定のスキー』を使っている。これが一番速度が出て楽しいらしい。
「私は今の距離でも十分ですわ」
「私もです」
こっちはテディとサラ、そして俺。テディは今はソリではなく俺と同じ幅の太いスキー。サラはボードに乗り換えている。
ちなみにこの『上から派』と『今まで通り派』は滑り降りる速度の違いでもある。
上から派の3人は3人とも速度を出すタイプ。だから下で遅い3人の事を待っている時間が長いわけだ。
ゆっくりなテディや俺を待っても距離が短いからそんなに長いこと待つわけじゃないけれど。
「なら上空からちょうどいいスタート場所を探しましょうか」
ナディアさんがそんな提案をした。
「上空から見るって、空を飛ぶ魔法があるのかな?」
「この子達がいますから。ニア! マイア!」
バタバタとミニ龍がやってくる。
「この子達なら3人くらいは余裕で載せられます。私も何回も乗っていますし問題ありません。ニア、マイア。元の大きさになって」
龍二頭が一気に巨大化した。
久しぶりに見たがやっぱり大きい。これなら余裕で3人くらい乗るだろう。何せ中立古龍と白龍だ。
ただこの姿は見慣れていないと結構怖い気もする。
ただしそういう怖さを感じない人もこの中にはいる訳だ。
「私も乗ってみたいですけれど、駄目でしょうか」
勿論テディだ。
「なら白龍は下の出発点まで送らせましょうか。中立古龍は上の出発点行きという事で」
「どうせ飛ぶなら全員で一度行った方がいいんじゃないかな」
フィオナのこの台詞、これはきっと『赤信号みんなで渡れば怖くない』式の危険回避だ。いやちょっと意味は違うか。
「どうせなら全員で取り敢えず上まで行きましょう。ニア、マイア!」
2匹が姿勢を低くしてこっちにぬーっと首を伸ばしてくる。首の上に乗れという事らしい。
「それじゃスキーを外して袋にしまいましてと。あ、マイアちゃんありがとうございます」
テディがまっさきに白龍の首へ。仕方ない。俺とサラも続く。
中立古龍の方もナディアさん、フィオナ、ミランダの3人を乗せたのが見えた。
「それじゃニア、マイア、お願い」
思ったより軽い感じで宙に浮く。不安定な感じも全く無い。何故か妙に安定感すら感じる。風もほとんど感じない位だ。
「何か不思議な安定感がありますね」
「龍は羽ばたきではなく魔法で飛んでいますから。風も飛行中は魔法で遮断しています。あと龍の飛行魔法は付近一帯にかかっているので、首から落ちても下まで落ちる事はありません。だから心配なく」
「そう思うと楽しいよな」
そう聞くと元気になるのがミランダだ。早速むちゃな姿勢で下を見る。 俺の前のサラもおそるおそるという感じだが周りを見ているようだ。
「やっぱり楽しいですわ」
テディは超ご機嫌。確かに楽しいよな。
ホテルもテルメ館も随分と小さくミニチュアのようになってしまった。
「あ、でもこれ、下から見られたら怖がられるんじゃない?」
「この辺目撃できるような範囲に住んでる人はいないだろ、多分」
「そうですね。でもあまり高くあがらずにスキーコースを探しましょうか」
「そう言えばそうだったね」
そんな訳でスキーをしている谷をさらに登っていく。
「ここは左の方が太くて長そうだよね」
「そうですね」
「ここからは谷じゃなく山の斜面も緩やかそうだよ」
フィオナは完全にスキー場分析モード。最初怖がっていたのは何処へ行ったという感じだ。
そんな感じで飛ぶこと数分程度。
「ここの峠っぽい場所が限界ですね。ここから山頂方向は細いですし、雪庇が出来ているかもしれませんから」
山岳地帯育ちのナディアさんの判断で、峠っぽくなっている広い場所へ降りる。かなり登って来たなという感じだ。ホテル等は既に別の尾根の影で見えない。
「ここからなら滑り甲斐があるよね。コースはこの斜面を下りて、あとは左へ行って谷に入って、あとは谷沿いだよね」
「そうだな。それじゃ行くか」
ナディアさんを含め3人はやる気満々だ。
一方で俺達はというと……
「ちょっとこの斜面は怖いですわ」
テディは龍は怖くないが斜面は怖いようだ。俺も骨折無しで滑れるとは思えない。
目の前で見ると滑るというか落ちそうな感じの斜面だ、これは。刻むにしても斜面そのものが急だしかなり厳しい。
「俺も無理だな」
「私も遠慮します」
3人の意見が一致した。
「それじゃこっちはさっきの場所に魔法で移動して、そこからまた滑るよ」
「わかりました。それでは私達はここからやってみます」
「まずは板とストックを出してと」
それにしても本当にこんな斜面、滑る気なのだろうか。そう思ったのだけれど。
「それじゃ行ってくるな」
「私も行きます」
ミランダとナディアさんがかっ飛んでいった。おいおい。
「それじゃ僕も行くね」
フィオナもスタート。
ちなみに速い派3人もそれぞれ滑り方やコース取りがかなり違う。
ナディアさんは割と小刻みにターンを繰り返すタイプ。フィオナは風魔法で速度を調節しつつ基本的にまっすぐ滑り降りるタイプ。ミランダは右へ左へ大きく蛇行しながら降りていく。
「それじゃ下へ移動しよう」
3人が頷いたのを見て、俺は移動魔法を起動した。
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