神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第7話 雨期に来るもの⑴

36 私がやらなければならない事

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 村についたら、ナルゼ達3人は基本的にビブラム達にお任せだ。
 魔法の授与はしたし、空いている家の使用許可も出したし、神社にある来客用の布団3組を貸すなんて事もしておいた。
 村共用の食料はそれなり以上の在庫がある。
 だからここにいる間は、生活で困ることはないだろう。

 見学にはビブラム達だけではなく、ナルゼ達と以前仲が良かった同年代のカデラやルーチェも案内役をするそうだ。
 予定では明日の昼までで、戻ったら向こうで会議を行って、移住するかを決める予定になっている。
 
 ロシュとブルージュは、車を運転して畑や森周辺を回ると言っていた。
 荷物運びの手伝いが必要な場合が、結構あるそうだ。

 私は神社の神饌所というか、家のリビングで一休み。
 休みついでに全知を使って、気になっていた新開発の武器を確認してみる。

 この武器、村では『棒弓』と呼んでいる。
 鉄製で上側に溝がある長い棒があり、棒の下に2か所持ち手があるという構造だ。
 この溝の手前側に鉄と木で作った長さ15cm位の小さい矢を置いて、力の魔法で先端方向へ撃ち出すという仕組み。
 
『ライフル弾並の初速があり、弾に相当する矢もライフル弾より重い為、一発の威力は地球の重機関銃並です。矢を小型化したような形状で羽がついているので射程は長く、2km以上となります。
 ただ鴨などの狩猟には威力が強すぎるので、この棒弓は使わず、魔法を直接使用する方法を使用しています。鴨の場合は力の魔法で首を折る方法が使われ、既に11匹程狩っているようです』

 何だその洒落にならない武器と、危険な攻撃魔法もどきは。
 でも魔法を与えたのは私だし、その制限内で運用可能なのは確かだ。

 ただ、ここまで来てしまうと……
 神がやるべき事は何だろうか。そう自問自答してしまう状態だ。

 塩田、舟2艘、樽20個、漁業用の小舟2艘、魔法で回転させる粉ひき用の大型の石臼、糸より器、布織機、それらで作った布、棒矢と棒弓……
 村人だけで、これらを実質10日間で作ってしまっている。
 雑草取り、耕耘、播種、水やりなんて畑作業をやりながら

 この調子だと村を囲む塀なんてのも、村人に任せた方がいいだろう。
 そして付近の川は、ほぼ完璧に整備済みだ。
 その上で私の神力は、思いっきり余裕がある。
 今なら川の整備工事だって5km位は余裕で出来そうな位に。

『この村が1,000人規模以上になったとしても、村人の力だけで充分に拡張が可能です。村と畑を囲む塀も、3日程度あれば出来ている事でしょう』

 村人が精鋭すぎて、私が暇になりそうだ。

『村内の暮らしに直結する事項については、村人に任せておけばいいでしょう。しかしそれ以上の課題については、コトーミが考えて取り組む必要があります。たとえば来年の乾季、1,000人以上の生活に必要な水の確保は、村人の努力だけでは無理です」

 川3本を整備して、ため池もたくさん作った。それでも足りないのだろか。

「全知でも来年の天候は把握できません。それにケカハに降る雨量は限られています」

 香川県の場合は、香川用水がある。
 早明浦ダムと池田ダムで吉野川の水を確保して、讃岐山脈を貫通する水路で香川県内へと導き、讃岐平野のほぼ全域へと水を届ける巨大用水網だ。

 フタナジマもケカハ山脈の向こう側なら、そこそこ雨が降るらしい。
 しかしそこはミョウドーの領域で、土地神のナハルは敵対的存在。
 少なくとも今は協力を求められる状況にない。

 ならせめてケカハ側に降った雨は有効に使えるよう、水路網を作っておこう。
 今はドキ川、アヤ川、そしてその間のダイソク川流域を整備している。
 でももっと東やもっと西の川からも、導水出来るようにした方がいい。

 しかしケカハの人口が1,000人どころじゃなく増えたら……
 今の水量で暮らせる範囲に人口や生活を制限する。それが正しい答だ。
 しかしそれで、ケカハの住民は納得してくれるだろうか。

 水以外にも、懸念事項はある。
 もしケカハの住民が納得してくれて、他の領域に迷惑をかけずに暮らしていけたとしても、他の領域、そして土地神はどうだろうか。
 具体的にはミョウドーの土地神であるナハルが、こちらに仕掛けてくるという事はないだろうか。

 ナルゼ達の偵察の結果、ミョウドーの領域から50人程が移動するとなると、その分ナハルが得る神力が減ることになる。
 またミョウドーにナルゼ達が戻れば、ナハルはこの村の事を知ってしまうかもしれない。
 土地神の全知なら、ナルゼ達の記憶を読み取る事が出来る可能性がある。

 それでもナハルは、こちらに手出しをしてこないだろうか。

『それも村人ではなく、コトーミが取り組むべき課題です』

 全知はそう私に告げて、そして続ける。

「全知としては、ナハルがすぐに攻めてくる可能性は低いと見積もっています。ですがこれは、此処ケカハで得られる情報で全知が合理的に判断した上での結論で、実際にそうなるという確定ではありません」

 つまり攻めてくる可能性は否定しない、という事だ。

「またもう少し長いスパンで見てみると、アキヅシマの勢力が攻めてくる可能性も高いでしょう。
 フタナジマの場合、気候変動により大被害を受けたのは、ケカハを中心とする北部から北東部一帯だけでした。
 しかしアキヅシマでは、生活に適さない領域が多数出てしまいました。特に10年前の干害からその傾向は酷くなっています。
 結果、より住みやすい場所を求め、土地神と信徒による戦争が始まってしまった訳です。この流れは止められません。いずれフタナジマも、この流れに飲み込まれることでしょう』

 いやな話の流れになってしまった。
 以前キンビーラやアルツァーヤに聞いた話と同じだ。
 全知情報でも『戦争が始まり、この流れは止められません』となる訳か。

『その通りです。勝つほど領地は広くなり、住民が増え、土地神は強化されます。既にアキヅシマの土地神のほとんどは、このことに気づいてしまいました。ですから自衛の為にも、戦って領地を広げる事が必要となるわけです。
 そしてアキヅシマとフタナジマの間は、最短で5里20kmしかありません。ですから領民を増やし、今後に備える必要があるのです』

 うん、戦の準備は、いずれは必要になるのだろう。
 でも今、私がするべき事は、やっぱり水の確保だと思う。
 来年干害になった、なんて事態は避けたいところだから。

 取り合えず地図を頭の中に思い浮かべ、水を確保出来そうな川を探すことにした。
 
 次の川の名前は何にしようか。
 東側は、綾川の東で大きい川というと、やっぱり香東川こうとうがわだろうか。本津川とかあった気もしたけれど。
 西側は正直、覚えていない。なので後に適当に名前をつけよう。

 戦いについても、いずれは考える必要がある。
 でもまずは差し迫っている、水の課題について出来る限りのことをしておこう。
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