神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第7話 雨期に来るもの⑴

37 懸念

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 翌日11時30分頃、いつものセキテツとの境界の岩場。
 ここも雨期に備えて屋根を造った方がいいだろうか。なんて思ったところで、キンビーラとアルツァーヤが現れる。

「さて、今日の昼食はアルツァーヤだな」

「ええ。今回はイモタキと呼ばれる汁料理ですわ」

 出てきたのは里芋、椎茸、鳥肉、小麦粉の団子等が入った、塩味で具だくさんの汁だ。
 この前教えたジャコ天も入っている。

 これが味噌味なら豚汁で、日本の東北でやればきっと芋煮だ。
 味噌でも醤油でもなく塩味で、肉が鳥肉、正確にはアヒル肉だから、何処の派閥でもないけれど。

 これはこれで、結構美味しい。
 元香川うどん県民としては、団子ではなくうどんを投入したいけれど、ここは我慢。
 箸ではなくレンゲっぽい木製スプーンで食べるのが、フタナジマ流だ。

「これはこれで単純だけれど、旨いな。この前コトーミから教わった揚げ蒲鉾てんぷらも入れたのか」

「この海系の出汁で、味が一層深くなるようです。この揚げ蒲鉾てんぷらは、汁に入れる以外にも焼いてそのまま食べたり出来ますし、領民にも好評ですわ。既に専門に作っている者も出てきています」

 さて、実はキンビーラとアルツァーヤに相談したい事がある。
 ナルゼ達が来た件についてだ。
 料理の話をひととおりしたところで、話を切り出す。

「ところで昨日、ミョウドーの山間部に避難していた元ケカハ住民約50人のうち3人が、新しく出来た村にやって来ました。ケカハが再び住めるようになったかの確認だそうですけれど、土地神として注意する事はあるでしょうか? ちなみにナハルの信徒ではなく、アナートの信徒でした」

「難しいな。今もなおアナートの信徒なら、ケカハに対する悪意はないだろう。住めるとなれば集団でやってくるだろうが、その事自体には問題無いし、ケカハとしても人口が増えるのは望ましい事だ。
 ただ、ナハルがどう出るか。それが問題だ」

 やはりそこが問題か。
 そう思ったところで、今度はアルツァーヤが口を開く。

「土地神でしたら、全知によって住民の知識や記憶を知る事が可能です。報告に戻った者の記憶から、ナハルが今のケカハの事を知る可能性は高いでしょう」

「ミョウドーの北部はケカハ侵攻時に無理矢理徴兵された民が離反し、主にセキテツ方面へ逃れた。中部や南部はやはり侵攻時にトサハタのガシャールに侵攻された影響で、トサハタ側へと向かった者が多い。
 結果、ミョウドーの人口は大幅に減っている。今や全部で3,000人程度といったところだろう。しかも信仰どころか憎まれている状態だから、実際の神力は住民300人分程度とみていい」

『他の土地神の情報は、その土地神が自分の領地内にやってこない限り、全知では確認出来ません。ですが沿海神であるキンビーラは、領海に接する土地神の情報について、全知によりある程度知ることが可能です』

 それならキンビーラが今言った情報は、正しいのだろう。
 なお私の領地は人口102人、ナルゼ達が移住してきても150人程度だ。

「それでも得られる神力は、私の倍以上ですね」

「普通に考えればそうだろう。しかしコトーミは、領民から他に類を見ない程の強さで信仰されている。だから神力も、人口100人程度とは思えないほど高い。おそらく現時点での神力は、ナハルとそう変わらないだろう。私はそう見ている」

 そんなに信心によって、得られる真素マナや神力の量が変わるのだろうか。

真素マナから神力への変換時点で、大きく変わります。
 神を信仰しているという自認がない一般人から出る真素マナの場合、真素マナから神力への変換効率は8割程度です。しかし他の神の信徒やその神を憎んでいる者の真素マナの場合、1割以下という事も少なくありません。逆に信仰が強い者の真素マナの場合は、その地にある他のエネルギーを取り込んで、3倍以上の神力を生み出す事すらあります。
 ですが通常の土地神は、あまり信仰の強弱を気にしていません。住民が多い場合、1人1人の信仰の強さは全体にあまり影響しないからです』

 なるほど。
 でも私やナハルのように、領民が極端に少ない神の場合は、かなり大きな影響が出るのか。

 そこまで考えて、ふと気づく。今の戦力比較は、1日に発生する真素マナや神力の分しか考えていない気がすると。
 もし神力や真素マナが貯蓄出来るもので、ナハルがそこそこ貯蓄出来ているとしたら、私に勝ち目はない。

『神力は、本質的には貯蓄出来ません』

 全知がそんな説明をしてきた。
 しかしそれならそれで疑問が生じる。私が最初にケカハに来た時、全知が神力について言ったのだ。

『圧倒的に足りません。このままでは500周期程度で消え失せる事になります』

 なら500年分くらいは、貯蓄出来るのではないだろうか。

『それは貯蓄とは少し異なります。この場合の500年分とは、人間の身体に喩えると肉体、筋肉とか脂肪といった部分に相当すると思って下さい。500年とは、絶食した状態で、筋肉や脂肪を消費しながら生きながらえる事が可能な期間に相当します。これを蓄積や貯蓄と言うなら言えないこともありませんが、土地神の場合はこの部分を一定以上に増やす事は不可能です』

 なら神力は、どれくらい保持出来るのだろうか。

『その神の領域で一日に得られる神力の10倍程度までです。現在のコトーミの場合は、3,000程度までの神力を保持出来ます』

 また知らない数値が出てきた。神力とは、数値でも表せる訳か。

『その通りです。この数値は、『特に信仰している神がいない住民1人が、1日に発生する真素マナを変換して得られる程度の神力』を1として計算します』

 つまり私は、300人から10日で得られる程度の神力を保持可能という事か。
 そして話の流れから考えて、ケカハでは1日あたり300程度の神力が発生していると。
 住民が100人ほどしかいない事を考えると、かなり高い値だ。

『その通りです。ただしコトーミは日々神力を使用する作業をしていますので、現在保持している神力は1,200程度となります』

 ナハルが来襲する可能性があるなら、ぎりぎりまで神力を蓄積した方がいいだろう。
 なんて考えた時、アルツァーヤが口を開いた。

「やはりナハルは、襲撃してくる気がします」

 あまり嬉しくない予想だ。しかしキンビーラは頷く。

「土地神がいないケカハの場合は、占領ルールで人間100人、30日が必要だった。しかし土地神がいるならば、その土地神を再生不可能になるまで倒せば、その土地が手に入る訳だ。ケカハの人口が少なく神力が少ないうちに倒そうと考えるのは、ありうるだろう」

 ここでまた、全知による説明が入る。

『土地神が他の土地神の領地を手に入れる方法は、次の2つだけです。
 1 占領:100人以上の領民あるいは信徒によって、30日間土地を占拠する
 2 戦闘:他の土地神を倒し、消滅させること
 単なる交渉によって土地の領有を動かす事は、認められていません。ですので交渉して土地を明け渡す際には、1の占領を使用します。具体的にはその土地の民の信仰対象を変えるか、その土地の民を追い出して、新たな土地神の信徒を入植させるかです』

 交渉は無駄で、倒すか、領民に占領させるかか。

「本来なら、他の土地神の領域を奪うなんて事は、ほとんど出来ない訳ですね。この規則では」

「ああ。おそらくは創造神は、戦闘で現状変更をしないように世界を造られたのだろう」

 しかし創造神は去り、世界は狂った訳だ。気候だけでなく、治める神々も。


※ いもたき
  香川県ではなく、愛媛県の秋の風物詩です。県内のあちこちで行われていて、ネットでちょっと調べただけで8箇所くらいは一般参加出来るものが出てきます。
  肉は鶏肉で、具は里芋や生揚げ、白玉団子、しいたけ等。汁は醤油と味醂と砂糖を混ぜた甘辛系です。
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