神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第18話 一応の決着

73 タケヤ出現

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 アナウンスの続きが流れる。

『以降、ビシューのうち、ビッチュー、ビンゴの土地神はコトーミが兼任することとなります』

 ビシュー全体ではない事が気になる。
 そう思ったら全知が補足してきた。

『ビシューはモ・トーが、タケヤの部下である副神として統治を委任されていました。そのモ・トーが倒れたので、倒したコトーミがビシューの半分を領域とし、残り半分はタケヤのものとなったのです』

 つまりビシューの領域は、モ・トーとタケヤで半分ずつ権利と持っていた状態だと思っていいのだろうか。

『その通りです。主神が部下である副神に統治を委任した場合、領地の権利の割合を主神が自由に決めることが出来ます。ビシューについては1対1となっていたため、モ・トーを倒した場合に得られる領地がビシューの半分となった訳です』

 主神と副神という言葉はどういう定義だろう。

『領地を2国以上持った土地神は、主神として副神を従える事が出来ます。これにより主神は、他の土地神を副神として配下にする事が可能となります。コトーミは既にケカハとミョウドーの2国の土地神であるので、主神となる事が可能です』

 そんなアナウンス、何処にもなかった気がする。

『主神、あるいは副神という名称を見聞きした、あるいはこれに伴う手続きが発生した場合に報知する事になっています』

 なるほど。とりあえずは理解した。

「モ・トーの顕現は倒れたか」

 キンビーラが私の横に出現する。

「そうみたいです。それも領地に顕現を残さず、全力で此処に来て、そして消滅してしまったみたいです」

「ならビシューも、コトーミの領域となった訳か」

「ビシューのうち半分、ビッチューとビンゴは私の領域となりました。ですがモ・トーは主神であるタケヤの副神としてミョウドーを委任統治していたようなので、ビシューの残り半分、ビゼンとミマサカはタケヤの領域となっています」

 別にビッチューとビンゴもいらないのだけれど。
 ケカハの水の確保の為、ミョウドーは必要だったかもしれない。
 しかし今回の2領域は予定の範囲外だ。

 本当は神という地位すら必要ない。
 ケカハでまったり過ごせれば十分なのだ。ロシュとブルージュと一緒に、のんびりと。
 なのに何故こうなったのだろう。

 なったからには、最低限必要な事くらいはやるけれど。

「とりあえずモ・トーの後始末はする必要はあるとは思います。削った土地を出来るだけ元に戻したりとか。ただ正直なところ、あまり領地が増えると管理が大変なんですよね。隣はあのタケヤの領域ですし」

 つい本音が出てしまった。
 その時だ。

「心配しないでいい。僕は今のところ、コトーミの領域を攻めるつもりはない」

 聞こえたのはキンビーラの声では無い。
 私は声の方へと振り向く。

 今までいなかった存在が、そこにいた。
 見かけが中学1~3年生くらいの少年だ。
 黒髪に日本人っぽい肌は、この世界では私以外に初めて見た。

 彼がいるのは私の領地内だから、それなりの情報を読み取れる。

『ウチツクニ等の土地神(主神)タケヤ、神力3,000』

 見慣れない情報が一部あるが、予想通りの存在だった。
 神力3,000というのは、戦う気がない分身的な顕現だからだろう。

「なるほど、貴方がモ・トーを操ったタケヤですね」

「その通り。彼は単純だから、教えた通りの侵略をさせるには便利だったんだけれどね。攻撃以外何も考えないから、内政面では最悪だったのだけれど」

 今回の侵攻の真犯人というか、少なくとも共犯もしくは教唆犯だ。
 私は全在でキンビーラの様子を確認する。
 大丈夫、少なくとも見た目は冷静だ。すぐに攻撃を仕掛けるという事はないだろう。

「何故こちらにいらしたのでしょうか」

「モ・トーを倒したコトーミという神に興味があったから。モ・トーには、この付近の土地神や沿海神では倒せない程度の神力を持たせた筈だった。それをどうやって倒したのか、確認しようと思ってね」

 なるほど。

「教える気はない。そう言ったら」

「それはそれでかまわない。そういう力を発揮するチートあるいはバグ技があった。そう確信するだけだから」

 その言葉に全知が反応する。

『チートや、バグ技という言葉はこの世界では一般的ではありません』
 
 なるほど、なら確認してみよう。

「山を削ったり、海を埋め立てたりする事をモ・トーに教えたのは貴方ですか?」

「その通り。更に言えばアキヅシマに戦乱を起こしたのも僕だと思う。僕が謀略や自然災害を使って他の土地神領域を侵略するまでは、それまでは天候不順で領民が減っても何も手を打たずそのまま、という神がほとんどだったようだから」

 私の質問の意図を理解した上で、先回りして答えたようだ。

「何故そのような事をしたのでしょうか」

「今はこの世界の問題を解決するため。この世界は壊れかけている。そのことはそちらにいる沿海神も同意見だと思う」

 キンビーラが頷いたのを確認して、タケヤは続ける。

「最初にサンシューの土地神を詐欺で傀儡としたのは、土地神として生き残る為だった。しかし騙して傀儡としたサンシューの土地神ダトの記憶を探った結果、創造神に関する具体的な情報は何も無い事がわかった。更には実際に天候が悪化したり地震が発生するようになったのも、ここ50年くらいの間でしかないと確認出来た。
 そこの土地神も、自分の記憶を改めて確認してみればいい。僕が言った事が本当かどうか、わかると思う」

 キンビーラは、何も答えない。
 タケヤは私の方に視線を移して、そして口を開く。

「あとコトーミさんは、21世紀前半以降の日本の記憶をもっているよね。MIZUNOのウォーキングシューズにスポーツタイツを組み合わせたお遍路姿なんて、そう考えなければあり得ないだろ」

 あ、確かにその辺、見て考えればわかるよなと気づく。
 でもそれがわかるのなら……

「タケヤもその頃の日本から来たのですね」

「そう。僕は日本の中学生だった。
 それじゃコトーミさんがそういった知識があるという前提で聞くよ。この世界をどう思う? 日本、それも平安から室町頃の地形を少し大きくしたような地形を持っていて、鉱物資源の分布もほぼ現実の日本に準じていて、気候も特徴を激しくしたようなこの世界。これは自然発生的なものだと思える?」

 確かにそうだ。
 ケカハの地形はほぼ香川だったし、ミョウドーは徳島だった。土器川はどうしようもない川だったし、香川山脈ならぬケカハ山脈の向こう側には吉野川相当の川が流れていた。
 おまけに人形峠にはウラン鉱石があるようだ。
 これは偶然と言うには、出来すぎている。

「自然発生的なものじゃないとしたら、どう考えるのかしら」

「地形その他が酷似しているのが平行宇宙的な世界だったという理由なら、この世界を変える事は出来ない。この世界が壊れかけているのも変えられない。
 でもこれが人為的に作られた世界、例えばVRMMO的な仮想世界だったとしたら、今の環境を変える事は可能かもしれない。
 更に言うとこの世界がそういった仮想世界だろうという根拠は地形等以外にもある。コトーミさんは全知に『問い合わせ』という言葉を使われた事はない? この世界内の概念、規則に無い方法を考えたしたり行動をしたりする時、全知に『問い合わせるから待ってくれ』的な事を言われなかった?
 もしそうなら、この世界はシナリス以外に管理している存在がいるって事。VRMMOのシステム運営のような。違う?」
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