炎の精霊

薄龍

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遠くから一筋の光が足先を一瞬にして通っていった。そこからはまるでスローモーションのように時間の流れがゆっくりと思えた。静寂の中を足元にあるくるぶしくらいにまで伸びた草花が地面からすぐ出たところから切れていき、切れた先からジリジリと燃えていくのが見てとれた。その火は少しずつ上へと登って行き、まだ茎が浮かんだ状態の花を飲み込んでいった。それが至る所で起こり暗かった足元を一気に明るく照らした。そして自分の足に炎が蛇のように絡みついて来た。あつい、そんな感覚は無かった。ただ、火の美しさだけが短すぎる時の中で自分の脳裏に焼き付いていった。今はあの夜から丁度1年がたった夏だ。自分はあの日知った火の美しさが未だに忘れられない。走馬灯だったのかもしれない。熱さを感じない中あれ程火が美しく見えたことは17年生きた中では1度も無かっただろう。そう思っていた時、誰かに手を引かれて直ぐにその場から立ち去ったことだけは微かに記憶にある。しかし誰が手を引いたのかいつここにたどり着いたのかは覚えてはいない。そこから記憶は途絶えていた。
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