炎の精霊

薄龍

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「にいちゃんあそこってきれいだね。」まるで宝石を見ているかのようににきらきらした目でこっちを見てくる。あれはあのときの出来事の一週間前に死んだ妹との最後の日の会話だ。「うん、そうだね。」「ねーにいちゃん、あのおしろってなんであんなにきれいなのにさびしそうなの?」寂しそう?考えもしなかった。上流階級の人のことなんかより明日の命のことばかり考えていて城や上流階級の家々なんかはただの景色としてばかり見ていた。「なんでだろうね。」「それより今日は何が食べたい?」何が食べたいか聞くほどでもない。どうせ手に入るのは芋と草と濁った水ぐらいだ。それでも妹は「きょうはねスープがいいな。おいもさんがたーくさんはいったスープ」と嬉しそうにいう。この時俺は心の中で誓った。妹だけは死なせないと。山菜を布の中に入りきらないくらいたくさん採って帰っていると妹がちらちらと何度も視線を向けてきた。何度もするものだから気になって「どうした。」と、声をかけると妹は恥ずかしそうに「あのね、うちね、にいちゃんとてをつなぎたいんだ。」と、言った。「いいぞ。家に着くまで手、繋いで帰ろうか。」そうすると妹の顔がパッと笑顔になり「うん。にーちゃんだいすき。」と、嬉しそうに言った。
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