タイムスリップしたら新撰組に拾われました

ERICA

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一 章 ・ 女 中

捌. 甘味屋さん②


談笑してたら、一さんが自分たちの存在を示すように片手を上げる。
出入口に視線を向けたら、平助くんが何故かホッとしたように穏やかな笑みを浮かべながら近付いてきた。


「俺らを放置して先に行くなよなー…」
「え…平助くんが新八さんとじゃれてるのが悪い」
「で、話し掛けられたのか~?」
「忙しそうで話し掛けられない…」


不満そうに呟きながら空いた席に座る平助くんに笑いながら答える。
じゃれてるって何だ??と意味に悩んでる平助くんを横目に、目的を達成出来たか聞かれると首を横に振りながら溜息を付いてしまった。

「何の話だ?」
「あ、あのね・・・」

一さんが湯呑みを片手に持ったまま問い掛ける。
ここの甘味屋に来た理由を伝えてなかったのを思い出して、質問に答えようとしたら――


 「あの~…ちょうとええかい?」


女性特有の少し高い声が頭上横から聞こえてきた。
戸惑いながら顔を上げると、真横に私が甘味に来た目的の人物がいて、何故かソワソワしてる様に見える。


「はい?…あっ、追加待ちですか!?」
「注文してくださるさかい、それは良いんよ。・・あの人は一緒じゃないんやろか?」


混雑している店内で、卓上には空の皿と温くなったお茶の湯飲みだけが置かれている。
追加で二つ湯気がたつお茶の湯飲みが置かれてるのに気付いて、慌てて店の壁に貼られたメニューを見た。
だけど、目的は注文じゃないみたいで、おまささんの視線は新八さんと平助くんに向けられている。
メニューを見ていた視線を彼女に向けると、少し気恥ずかしげな表情を浮かべていた。


「あの人って…?」
「俺らと毎回一緒に居る奴って左之しか居ねぇじゃん。つか、左之と会った事あんの?」


誰かわからない平助くんの間抜けな姿に新八さんは呆れたように溜息を付くと、平助くんの後頭部をペシッと叩きながら教えてあげている。行動は冷たいけど言葉は優しい。
突然の出来事に口を挟めない私や一さんを置いてってるのはイタダケナイけど仕方ない。
その後、新八さんは思い出した様におまささんに顔を向けて問い掛けていた。


「左之はん言うん?あんな、名前は知らんの…ただ、このぐらいで大きな槍を持ってお前さん達とおるんとこ何回か見とるさかい」


名前に反応出来ない彼女は、苦笑を浮かべながら理由を述べる。
そして、おまささんは自分の伝えたい人物を手振り動作で教えてくれた。


「そのぐらいの身長で大きな槍持ってるの左之さん以外は居ないよね…?」
「うむ。新八や平助と共にいる男なら左之で間違いないだろう」


おまささんが言ってる人物に、私も一さんも同一人物をあげる。
新八さんと平助くんに視線を向けると、二人も私の予想に頷いてくれていた。


「左之が何かやったか?」
「いえ…あんな、左之さんに会わせて欲しいんよ…」
「はっ!?何で!?」


卓上に肘を付き、掌で頬を支えながら新八さんがおまささんに聞くと、彼女は少し恥ずかしそうに頬を赤らめて答えた。
それを聞いて驚いた平助くんとは違い、新八さんは愉しげに口端を上げる。


「会わせられますよ」
「ほんま!?ああ、おおきに!うち、まさ言うんよ…まさって呼んで。よろしゅう頼んます!」
「私は、桜です。よろしくお願いします」


口を挟むのを一瞬躊躇したけど、左之さんに頼まれてたのを思い出した。
矢継ぎ早に言うおまささんの言葉に、反応出来たのは自分の名前と挨拶だけ。
それでも、彼女は満足そうに笑顔を向けているその横で、新八さんは不満そうに小さく舌打ちする音が聞こえた。
何か悪戯でも考えていそうな新八さんの膝小僧を足蹴りしつつ、おまささんに笑顔を向ける。

私とおまささが予定を立てている間、声も出せず痛みに悶絶する新八さんを、理由を知らない一さんと平助くんが不思議そうに見ていたのだった。
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