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一 章 ・ 女 中
弐. 坂本竜馬とおバカな迷子
しおりを挟む「いでっ!」
「おう、おめん大丈夫かえ?おまさん達、何しちょる。か弱きおなごに」
組み敷いてる男が上から消えた。
何が起こったのか把握する前に大きな背中が目の前に現れる。
この人が守ってくれているんだと分かると先程まであった虚無感が薄れた事に気付いた。
自分の着物が脱がされつつあったのにも気付いて慌てて直す。
「何をっ!!俺らが誰か知ってて――」
「知るわけないっちょ、だがおなごが困っちょったからのう、ついつい助けてしもうた」
怒った浪士達が刀の持手に手を添える。
どうでも良さそうに答える男性の態度、怒りが我慢が出来なくなったのか浪士たちは刀を抜いてしまった。
「おまさん達、物騒なモン出したあ、あても出さざるおえんぜよ」
(ぜよ!?この人もしかして、坂本竜馬…?)
方言を聞いて目の前で自分を守る人が誰か気付いてしまう。
坂本さんは刀を抜き戦闘態勢を取る浪士たちと見合ったまま、懐から何かを取り出し浪士たちに向けた。
「あてに勝てんぜ、今すぐ刀仕舞うて立ち去るぜよ。さもなきゃ……」
「ひぃぃいいいい!すまん!」
何かを見た浪士たちが叫びながら立ち去る足音、何を見せられたのか予想は出来た。
身長は土方さんより高く、体格は原田さんと同じぐらい筋肉質でガッシリしている。
でも、身長や体格にしては威圧感が無くて落ち着いた雰囲気をかもし出していた。
「あ、ありがとうございました。助かりました」
振り返った坂本さんに頭を下げてお礼を伝える。
坂本さんに守られてる辺りから思考回廊は正常に戻り、考える余裕もあった。
「無事で良かったぜよ。女子独りで誘ってるようにみえるき、気ぃつけんと」
坂本さんはニカッと笑顔を向けて答えると、直ぐに表情を改めて、少し考えるような仕草をしながら夜空を仰ぎ見た。
「今夜は壬生浪士がわんさか居るじゃき、気ぃつけんとバッサリいかれるぜよ」
(壬生浪士がいっぱいいるのは私のせいかもしれない…)
注意を促す坂本さんだったけれど、言われている本人が壬生浪士の関係者だと知らない。
でも、関係者だとも言えない。
「私は大丈夫です。もう直ぐ知り合いが迎えに来るので逃げてください。貴方は土佐の人ですよね?なら、貴方の方が危険ですから…」
だから坂本さんから離れる事が一番だと気付いて、壬生浪士たちに見つかる前に坂本さんを逃がそうと急かした。
「それなら安心ぜよ。そうじゃ、あては坂本竜馬じゃき。また逢おうぜよ!」
「はい!」と答えると、安心したらしい微笑みを浮かべた坂本さんが背を向けて歩き出す背中を見送る。
気分が晴れて足取り軽なった私は、壬生浪士たちがいそうな場所に向かった。
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