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一章
11,昭儀のお仕事①《2019.08.30改稿》
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紫攸が投下した情報は瞬く間に後宮や内官、武官の耳に入り、陛下の寵愛を得ようと、内官や武官たちは自分の娘や孫娘を後宮に送り込んだ。
白蘭宮が皇后の住居だと知っている宦官や年配の女官は、元々紅雪を皇后にするつもりで仕えていたらしく陛下に与えられた称号を当たり前だと思っていた。
しかし、紅雪の下で働いていた少し身分のある若い女官の半数以上は、妃嬪候補として他の宮に移ってしまった。
「八歌は行かなくて良かったの?」
尚宮女官長になった旬華、大人しい八歌、他に宮中内の職務に携わる女官数名が紅雪の住居に残った。
「私は年老いた祖母と弟妹の為にお給金を戴ける女官になりました。ですので、陛下と昭儀様の仲睦まじいお姿を拝見出来るだけで幸せです」
「貴女も幸せになって良いのよ」
紫水の簪を髪に挿しながら八歌は微笑んだ。両親の事を告げないのは、亡くなっているからだと察する。
鑑に映る彼女を見つめたまま、思っている気持ちを素直に言葉に出した。
「…嬉しく、思います…」
優しい言葉を言われ慣れていないらしい八歌は、私が発した本心に戸惑いを見せる。余程自分の言葉が胸に染み込んだのか、戸惑いを見せた後、目を潤ませた。
穏やかな空気が部屋を包んだけど、そんな空気は直ぐに打ち消されてしまった。
「失礼致します」
紅雪専属の宦官、浬坦が戸口の扉を開けて頭を下げる。
「楽になさい」と伝えると、
「陛下が昭儀様に夜伽をお命じになりました。おめでとう御座います!」
顔上げた浬坦が嬉しそうに笑顔を向けた。
その言葉に、女官たちが祝いの言葉を口にするけど、当の本人はポカーンと口を開けたまま固まってしまった。
「旬華、八歌は準備を怠ぬよう万全を期して当たるように!」
女官よりも宦官の方が位が高いので浬坦は部屋にいる旬華と八歌に指示を与える。二人の「承知致しました」の言葉を聞いて、浬坦は満足したのか寝所を出て行った。
きっと、他の宦官仲間に報告にでも行ったのだろう。
「旬華のみ、残って他は下がりなさい…」
賑わいを見せる白蘭宮の中で、紅雪だけが困惑してた。指示を出した声は少し掠れ震えている。
察した旬華が、女官たちを下がらせて扉を閉めた。
「……紅雪様」
「…旬、華っ…このままじゃ、陛下に…っ嫌われちゃう……っ」
久方振りに二人っきりになれた衝動なのか、旬華の声を聞いた瞬間、紅雪の蒼珠の瞳から止めどなく涙が溢れた。
旬華は傍で見守っていたけれど、止まる事の無い涙に、無意識に手を伸ばす。
幼いとき抱き締められた温もり、変わらず優しい。紅雪は子供みたいに、泣きながら助けを求める様に不安を口にしてしまった。
「紅雪様が伝えたいお気持ちになるまで隠しておいても宜しいと思います」
不安の理由を知っている旬華は、抱き締めたまま優しい声で答える。乳飲み子の時から世話をしている旬華にとって、紅雪は娘同然だった。
彼女が言った言葉は不敬罪にあたるが、旬華は紅雪の不安を取り除く事しか考えていない。
「…有難う」
「陛下がお越しになる迄に目を冷やさなくてなりませんね…」
少し落ち着いた紅雪がお礼を言いながら旬華から離れた彼女の目の周りは赤くなっていた。
旬華はフッと笑みを零して、手巾を取りに席を立つ。
紅雪は一人っきりになり静寂に包まれた部屋で、はめていた白い手袋を見つめていた。
白蘭宮が皇后の住居だと知っている宦官や年配の女官は、元々紅雪を皇后にするつもりで仕えていたらしく陛下に与えられた称号を当たり前だと思っていた。
しかし、紅雪の下で働いていた少し身分のある若い女官の半数以上は、妃嬪候補として他の宮に移ってしまった。
「八歌は行かなくて良かったの?」
尚宮女官長になった旬華、大人しい八歌、他に宮中内の職務に携わる女官数名が紅雪の住居に残った。
「私は年老いた祖母と弟妹の為にお給金を戴ける女官になりました。ですので、陛下と昭儀様の仲睦まじいお姿を拝見出来るだけで幸せです」
「貴女も幸せになって良いのよ」
紫水の簪を髪に挿しながら八歌は微笑んだ。両親の事を告げないのは、亡くなっているからだと察する。
鑑に映る彼女を見つめたまま、思っている気持ちを素直に言葉に出した。
「…嬉しく、思います…」
優しい言葉を言われ慣れていないらしい八歌は、私が発した本心に戸惑いを見せる。余程自分の言葉が胸に染み込んだのか、戸惑いを見せた後、目を潤ませた。
穏やかな空気が部屋を包んだけど、そんな空気は直ぐに打ち消されてしまった。
「失礼致します」
紅雪専属の宦官、浬坦が戸口の扉を開けて頭を下げる。
「楽になさい」と伝えると、
「陛下が昭儀様に夜伽をお命じになりました。おめでとう御座います!」
顔上げた浬坦が嬉しそうに笑顔を向けた。
その言葉に、女官たちが祝いの言葉を口にするけど、当の本人はポカーンと口を開けたまま固まってしまった。
「旬華、八歌は準備を怠ぬよう万全を期して当たるように!」
女官よりも宦官の方が位が高いので浬坦は部屋にいる旬華と八歌に指示を与える。二人の「承知致しました」の言葉を聞いて、浬坦は満足したのか寝所を出て行った。
きっと、他の宦官仲間に報告にでも行ったのだろう。
「旬華のみ、残って他は下がりなさい…」
賑わいを見せる白蘭宮の中で、紅雪だけが困惑してた。指示を出した声は少し掠れ震えている。
察した旬華が、女官たちを下がらせて扉を閉めた。
「……紅雪様」
「…旬、華っ…このままじゃ、陛下に…っ嫌われちゃう……っ」
久方振りに二人っきりになれた衝動なのか、旬華の声を聞いた瞬間、紅雪の蒼珠の瞳から止めどなく涙が溢れた。
旬華は傍で見守っていたけれど、止まる事の無い涙に、無意識に手を伸ばす。
幼いとき抱き締められた温もり、変わらず優しい。紅雪は子供みたいに、泣きながら助けを求める様に不安を口にしてしまった。
「紅雪様が伝えたいお気持ちになるまで隠しておいても宜しいと思います」
不安の理由を知っている旬華は、抱き締めたまま優しい声で答える。乳飲み子の時から世話をしている旬華にとって、紅雪は娘同然だった。
彼女が言った言葉は不敬罪にあたるが、旬華は紅雪の不安を取り除く事しか考えていない。
「…有難う」
「陛下がお越しになる迄に目を冷やさなくてなりませんね…」
少し落ち着いた紅雪がお礼を言いながら旬華から離れた彼女の目の周りは赤くなっていた。
旬華はフッと笑みを零して、手巾を取りに席を立つ。
紅雪は一人っきりになり静寂に包まれた部屋で、はめていた白い手袋を見つめていた。
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