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二章
22,たった一つの証
しおりを挟む雨で涙を洗い流した日から二日、紅雪は風邪で寝込んだ。
しかし、やはりというように陛下の見舞いは風邪が治って二日経っても無かった。
後宮内では陛下と紅雪の不仲説が飛び交い、妃嬪たちは寵妃の座を射止めようと努力しているよう。
謹慎中だが風邪を引いた際、良薬だと皇太后から薬を贈られていた紅雪は、贈物のお礼と朝の挨拶をしに皇太后宮に訪れる
「……皇太后様に拝謁致します」
「楽になさい」
跪き頭を下げて謁見する。
皇太后の許可と、促されるまま準備されていた椅子に座った。
「皇太后様に戴いた薬湯は本当に良薬でした。感謝しております」
「まだ顔色が悪い様だけど……その原因は陛下、ね?」
「陛下は何もしておりません。私が陛下の機嫌を損ねる様な事をしてしまったのです」
薬湯のお礼を伝えた筈なのに、紅雪はいつの間にか皇太后の罠に嵌まっていたらしい。
悟ったような視線を向けられてしまった紅雪は皇太后に今まで起こった全てを話してしまっていた。
「………そう。で、本当に貴女は陛下の弱味を握ろうと思って朱津の間諜になったのかしら?」
「一切思っておりません。私は元々先帝に嫁ごうとしておりましたので、朱津とは縁を切るつもりでした!陛下は私が命を賭けてでも守りたい愛しい人です」
最後まで聞いていた皇太后が扇を広げて口許に添えながら紅雪を一瞥する。
疑われる事は覚悟の上で話したのだから紅雪は自身の想いの丈を皇太后にぶつけた。
「縁を切るつもりならば、一々言うことでもありませんからね……しかし、簡単に信じる事が出来ないのも判るわね?」
「わかっております」
「ならば、ーー我が息子を仇なすつもりがない証を提示なさい」
証と言われて紅雪は戸惑いを見せる。
自身が持っている物で、皇太后を納得させるものは何一つない。
そう思った時、紅雪は一つだけ証があることに気付いて近くにいる女官に指示をする。
指示を受けた女官は、その場を離れるも直ぐに戻って来て紅雪に指示をされたモノを手渡した。
「それで何をするつもり?」
「今、私が皇太后様に差し上げられる証は一つだけで御座います」
紅雪が受け取ったのは短刀。
蓋を抜くと、皇太后が怪訝な表情を浮かべる。
短刀をぎゅっと握り締めた紅雪は、自分の後ろ髪を掴み勢い良く切った。
呆気に取られたのは皇太后だけではない、女官も驚いて声を上げる。
床に紅雪の白銀の髪が流れ落ち、彼女の髪は肩より上までの短さになっていた。
「陛下に仇なす存在では無い証を提示致します」
床に落ちた女性の命とも言える跪いて白銀髪を拾うと皇太后に掲げた。
「ーーー紅雪…っ」
いつの間にか皇太后宮に侵入し身を隠していたらしい陛下が、髪の短くなってしまった紅雪を見つめる。
そして、彼女の名を小声で囁いた。
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