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二章
24,嫉妬
しおりを挟む大広間から追い出されてから話す場を考えたが、不仲説が出ている現状で一緒に居る所を妃嬪等に見られてしまうのは避けたい。
紫攸も同じ思いだったみたいで、皇后宮の庭園に移動すると長椅子に座った。
「ここは、母上が許可した者しか来れんから安心しろ」
長椅子の背凭れに両腕を乗せながら、紫攸が紅雪に視線を向けた。
「……遠いな…。まだ、俺に怒ってるか?」
長椅子に座ってると思っていた紫攸だったが、未だ座らずに椅子から少し離れた所で紅雪は立ったまま視線を地面に向けている。
紫攸は、表情が見えない紅雪に不安と困惑で汗が滲む手を伸ばした。
「………申し訳ありません。温情溢れる陛下に嫌われたくない一心で隠しておりました。ですが、皇太后にお伝えした通り、私は陛下を裏切るつもりは毛頭御座いません!陛下をお慕いし―――っ!」
紫攸が伸ばした手は宙を切る。
紅雪が触れる前に紫攸の前に跪き、頭を地面に付けながら謝罪を口にすると、今まで言えなかった想いが言葉となって次々と口から飛び出した。
最後に紫攸への想いを口にしている最中、言い終える前に紫攸の両手が彼女の頬に触れる。
「分かっている。冷静に考えれば簡単な事だった…だが、今のこの状況を利用しようと思った――何故か分かるか?」
「……あ、…雪華様ですか?」
顔を上げさせられ、紅雪は紫攸と視線が絡み合う。
彼は優しい目をして彼女を見つめていた。
紫攸の言葉を聞いて問い掛けられると、紅雪は一瞬戸惑いを見せたが直ぐに理由に気付く。
しかし、それが正しいか分からず自信無さ気に言葉を返した。
「そうだ。あいつの目的が未だに分からん」
「……嫁ぎに来たのではないのですか?」
「ああ、それはそうなんだが…。俺は別の理由もあると思っている…今、それを探っているんだ」
ガシガシと片手で自分の頭部を掻き溜息を漏らす。
紅雪を立たせ、長椅子に座らせると、紫攸もその隣に腰を落ち着かせた。
嫁ぎにの所を否定しない紫攸に、紅雪の胸はちくりと痛む。
それに気付く様子を見せない紫攸は、別の人物を思い出すように空を仰ぎ見ていた。
「…雪華様と、寝床を共に致しましたか…?」
現状、寵愛を受けているのは紅雪だけで、それが彼女の自信にも繋がっていた。
しかし、紅雪の横にいる紫攸は彼女以外の人を思い出している。
本当なら聞きたくもない言葉を、紅雪は戸惑いがちに問い掛けた。
「……っ」
「…おめでとう御座います。申し訳ありませんが、体調が回復したばかりですので先に席を立たせて頂きます…」
「…おい、紅雪…っ!」
紅雪の言葉に、心の声を聞かなくても分かり易いほどギクリと肩を揺らす。
普通なら子を得る為に、多くの妃嬪と寝床を共にしないといけない立場の皇帝陛下だ。
仕方ないと頭で思っていても、それでも嫉妬で苦しくなってしまう。
紅雪は振り絞って声を出すと、紫攸の静止の言葉を振り切って皇太后宮から早足で抜けていった。
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