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三章
43,悲しみの再会
しおりを挟む赤い絨毯を引いたみたいに紅雪の周りは真っ赤に染まっていた。
「…先ずは一つ目的が達成されましたね」
「殺すほど我が子が何をした!!!」
「我が主が不必要と判断したのです…貴女の命ももう不要です」
紅雪を殺そうとして攫って来た刺客の男が空き家に顔を出して満足そうに呟いた。
憎くて憎くて今迄感じたことのない感情が紅雪を支配する。
叫ぶように言葉を投げ掛けると、男は感情の篭っていない声で答えた。
「……私が死んでも陛下が必ず貴方たちを捕まえるっ!!」
「皇帝陛下も不要の存在です…」
陛下を不要と呼んだ男に怒りが湧き起こり血が滾る。
血が沸騰する感覚を感じると、腕や太股の痛みが消えていった。
「私は、必ず貴方の主を断罪します」
「何故立てるのですっ!!!化物ッ!!!!!」
痛みも消えて多分傷も消えているかもしれない。
歩きながら男に近付くと、男が初めて動揺を見せる。
何度も短刀が刺さるけれども、直ぐに傷が跡形も無く消えていった。
「うわぁああああああ!!!!」
手持ちの短刀を全て使い切った男に左手を伸ばして触れると、ボッと男の全身が急に燃え上がる。
悲鳴を聞きながら、突然襲う痛みに紅雪は意識を手放したのだった。
***
「制圧しろ!!八歌の家族や紅雪は傷つけるなっ!!」
見張り番と集まっていた野党たちが現れた官軍に立ち向かう。
しかし、軍隊と野党ならば束になっても軍隊に勝てる訳が無い。
あっさりと捕まったり殺されたりした。
「うわぁああああああ!!!!」
紅雪を捜す紫攸の耳に悲鳴が聞こえた。
野太い声で男と推測されるが、紅雪も近くにいるかもしれない可能性を信じて走り寄る。
「…ぐっ!!…こう、せつ…?」
火だるまとなった死体の臭いに腕で鼻を隠す。
血溜まりに倒れている紅雪を見つけて蒼白な表情を浮かべた。
ガクッと身体の力が抜ける。
最悪の終末を考えてしまうも、そんな予想を頭から放り出して戸惑いながら紅雪に近付く。
「…紅雪…おい!!誰か!!!医官を呼べっ!!!!」
震える手が紅雪に触れようとして宙を舞う。
意を決して頬に触れた時、紅雪がピクリと反応を示した。
生きてる事を知った紫攸は彼女を抱き締めると、外にいる医官を呼び付ける。
抱き締めた感触、規則正しい呼吸音、紫攸は安心して泣きたくなった。
しかし、医官が現れたので紅雪を床に下ろして診察をさせる。
「御子は流れてしまっております……それと…」
「何だ?」
「昭儀様は穢れてしまっています」
精神的に追い詰められてしまえば仕方ない事、紅雪が無事だった事を紫攸が安心していると医官が言葉を躊躇する。
紫攸が続きを促すと、医官の衝撃的な言葉に足元が崩れそうになった。
立ち尽くしていた紫攸が徐に剣を抜いて、野党たちに向かっていく。
「お前ら、殺してやるっ!!!!!」
「紅淡、止めてくれ!!!!」
怒声で怒鳴り付けて剣を振り上げる紫攸、寡雲が慌てて近くにいる紅淡に懇願する。
野党の一人が斬られる前に、紅淡が抜いた剣が紫攸の剣を止めた。
「止めるな!!」
「しっかりしろ。お前は誰だっ!!法に則って裁くんだ」
力ずくで紅淡の剣から抜け出そうとする紫攸と紅淡の攻防戦。
隣でオロオロしていた寡雲が、担架に乗せられて医官に連れて行かれる紅雪に気付く。
今の紫攸は紅雪を愛するただの男、だが寡雲が必要なのは皇帝陛下。
寡雲は自分の立場を思い出させるように紫攸に向けて叫んだ。
「……っ…こいつらを閉じ込めておけ」
自分の立場を思い出した紫攸は苦しそうに息を吸う。
深呼吸をして顔を上げた時は皇帝陛下の顔をしていて、的確に指示を出すと蒼聖殿に戻る道筋を歩き始めた。
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