子供と一緒に異世界トリップしたんですが、正直困ってます。

アラキ

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旦那様の誕生日、苺買い忘れました

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「ママっ、苺がないっ!」


大事な一人息子のこの言葉をキッカケに私達親子はあるとんでもない出来事に遭遇するのだが、それはこの時からキッカリ四時間後の事


三時間前・・・・車中にて・・・・


「ママ、危なかったね!もう少しで苺無しのケーキになる所だったね!」

「ホントだねぇ!ユイが気が付いて良かったぁ!」


ママはおっちょこちょいなんだからと、ユイが笑い、助手席で脚をプラプラさせる


四歳にしては賢くシッカリした我が息子の頭を撫で撫でしながら微笑むと嬉しそうにしながらも少し恥ずかしいのか顔を赤くする息子は親の贔屓目無しに見ても可愛らしい

友人知人は親バカだと呆れた顔するが、愛しい人との愛の結晶は文字通り目に入れても痛くない位、可愛いのだ

「ママ、もう買い忘れ無い?」

その言葉に私は笑いながら答えるのだが

「ふふっ、大丈夫・・・・パパの好きなお酒・・・・あっ!!!お酒!!!」

ふと、買い忘れたモノを思い出し、ハハハと空笑いするのだった


「もぉ、しょうがないなぁ」

ごめんごめんと謝りながら通り道のスーパーに入る私達親子





二時間前・・・・スーパーの店内にて


この際だからと色んなモノを買い足してレジに並ぶ私達


息子はポチャポチャした頬を染めながらお目当てのお菓子を大事そうに握りしめる


そんな所は年相応の我が息子


今日は旦那様の誕生日で、私達親子は早起きして朝から奮闘してるのだった

旦那様を会社に送り出してから部屋の飾り付けに勤しんで、腕によりを掛けて旦那様の大好物を作り終え、最後にケーキ作りに取り掛かった所で発覚した苺の存在


甘党の旦那様の為に用意した真っ白なケーキ

苺が無いケーキなどケーキじゃ無いと思う私は真っ青になるのだった


旦那様の喜ぶ顔を思い浮かべながら買ったばかりの戦利品を後部座席に詰め込む


そこでふと思い出す

「そう言えばお昼食べてない」と

誕生日会の事で一杯一杯でお昼ご飯を食べるのを忘れてた私達

そして始まる腹の虫の大合唱


息子と二人、笑い合いながら頬を寄せ合う

「お腹すいたね、何か食べて帰ろうか?」

息子は一瞬満面の笑みを浮かべるものの次の瞬間、俯きボソリ呟いた

「パパの苺・・・大丈夫かな?」

どうやら息子は苺を車内に残して行く事が不安な様で真っ赤に色付く苺を心配そうに見つめる

「ふふ、大丈夫だよ?今はお外も寒いから少しの間くらい悪くならないよ?」

コレが真夏の車内だったりしたら寄り道などせず、急いで帰らないとイケナイかもしれないが、生憎今はシンシンと綿雪が降りしきる真冬

その言葉に本当?と上目遣いの息子

クリクリの瞳がユラユラ揺れるのを見つめニッコリ微笑む

「うん、だからユイが大好きなオムライス食べて行こうか?」

オムライスの言葉に一気に頬を上気させる息子は本当に可愛らしい

男の子なのに女の子と間違えられる位、可愛らしいのだ

その事は不満タラタラで口に出したら一気に機嫌が悪くなるので息子には言えないが、私に似ず、旦那様にソックリなのだ

二人目は是非、私似の女の子をと、旦那様は言う




一時間前・・・・ファミレス店内にて


「ふぅぅ・・・・美味しかったね」


お腹を擦りながら食後のコーヒーを口に運ぶ


少し遅めの昼ご飯でお腹を満たし時計をチラリと見つめる


旦那様が帰って来るのはまだまだ先で、今からユックリしても誕生日会は間に合う

「ママ、僕のプレゼント・・・・パパ喜んでくれるかな?」

モジモジしながら目の前のオレンジジュースを飲み始める息子

何日も前から一生懸命何かを作ってたのは知ってる


何を作ってるかは私にも秘密らしくて何かは知らない


けれど、私以上に親バカな旦那様の事だ

涙を流しながら喜ぶんじゃないだろうか?


私はニッコリ笑い大丈夫だと胸を張る


「あのね、えっとね・・・・ママにお願いがあるんだ」


そう言ってリックサックから取り出して来たのは少しクシャクシャになった包みだった

歪な青いリボンがフワリと揺れる


それはプレゼントの包みにと息子と一緒に選んだリボンだった


どうやらリボン結びが出来ないらしく、グルグル巻きになって固結びの包みを気にしながらオズオズと差し出して来る


私は微笑ましく思いクスリと笑うとリボンを根気良く解く

そして息子に手招きし呼び寄せると一緒にリボンを結び直したのだった

嬉しそうに笑う息子を見ながら私は幸せを噛み締める

そうしてファミレスを出たのが10分前だった


そして運命の時は刻一刻と近付いて来る


息子はお腹いっぱいになり、早起きした為か車に乗り込むと五分もしない内に眠りに付いた


車を走らせる事5分


車内で流してる音楽が突然途切れ途切れになった


「んん?どうしたんだろう?」

突然切れた音楽に私はデッキのボタンを押すのだがデッキはウンともスンとも言わず首を傾ける

我が家まであと少し


近道のトンネルを潜れば目と鼻の先で、私は鳴らなくなった音楽を気にしながらもアクセルを踏む


「----------」

「えっ?」

しかし突然聞こえた声に瞳を彷徨わせる

意識を前に固定しながら耳を澄ませる



一瞬寝ている息子の寝言かと思ったが先程の声は明らかに成人男性の声だったと気付きゾクリと悪寒が走る


それに


「見つけた」って


確かに聞こえて・・・・


その声は一瞬聞き間違いで、突然途切れた音楽が変な風に再生されたのかと思い直したけれど


良く考えるとスピーカーから聞こえた音じゃなく


その声は明らかに耳のすぐ後ろ・・・・そう、直接耳に吹き込む様に響いていて・・・

「見つけた・・・・」


二度目の声に私はゾワッとし、急ブレーキを踏む


突然急ブレーキを掛けた事で息子がビックリして起き上がる


「ママっ!どうしたのっ!」

その言葉と同時に助手席の息子を掻き抱く様に抱き締める


何だろ、コレ・・・・なんだか凄く嫌な予感がする


さっきからゾワゾワと鳥肌が立つ


それに明らかに私達以外・・・・一台も車が居ない


こんなに車の通らない場所じゃ無いはず


トンネルの出口に目を向けるがやけに遠く感じゴクリと生唾を飲み込む


運命の時まで後2分


私は怖くて、急いで家に帰りたくて勇気を出してアクセルを踏み締めるのだった


突然アクセルを踏み締める私に息子が驚く

「ママっ!どうしたの!?」

「ごめん、ママなんだか嫌な予感がするの」


運命の時まで後30秒


あと少しでトンネルを抜ける、と言う所で


「・・・・おいで」


そっと、耳に吹き込む様に低い声が聞こえる


「っ!!!」

「ママ?」


残り・・・・5秒

「・・・・おいで」

「いやっ・・・・何っ」


息子が咄嗟に手を伸ばしてくる


そして息子に一瞬、視線を動かした瞬間、トンネルを通り抜け・・・・


・・・・残り0秒



眩い光りと共に私達はその場から跡形も無く消えるのだった


そう、そのままの意味で車ごと私と息子は消えた


トンネルを通り抜けた瞬間、眩し過ぎて思わず瞳をギュッと閉じた


同時にブレーキを踏みしめ車を止める


息子の小さな手を空いてる片手で握り締めながら数秒身体を強張らせるも、ココは道の真ん中、ハッと息を吐き出しソッと片目を開く

瞳を開いた先が見慣れた家の近所だと疑いもせず

「え・・・・」




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