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家に帰って、仁人さんに予定の連絡を入れた。今回は夕方ということもあって、すぐに返事は帰ってこないだろうから、と思い汗をかいた身体をシャワーで洗い流すことにした。店内は冷房があると言っても、厨房は火を扱うから暑い。それに歩いて帰ってきているから、余計に汗をかいている。汗が冷えると風邪をひいたりするから、きちんと汗は拭くかお風呂に入るかしないといけない。
「今日は……、賄い遅かったし、食べなくていいや」
お風呂から出て、さっぱりしたところで、ご飯を考えたが作るのはやめることにした。今日は遅くなってしまったからしばらく食べられない。食べようと思う時間が遅くなれば次の日にも響く。
「びっくりした、電話か」
マナーモードを解除したスマホが突然鳴り響いたので、驚いてしまった。仁人さんかも、なんて淡い期待を抱いたけれど、残念ながらその期待は外れて、母親だった。
「もしもし、お母さん?」
『ああ、奏。今大丈夫?』
「うん、どうしたが?」
『もう来週帰ってくるろ?どれくらいおるって言よったか忘れてしもうてね、それを聞こうと思うて電話したがちや』
「ああね、二週間ばぁかな、おるのは。あんまり長いこと、バイトも休めんし」
『二週間か、短いね。まあ、バイトもあるがやったら仕方ないけんど。おばあちゃんとおじいちゃんも会いたがっちょったき、会いに行っちゃってよ』
「わかっちゅうよ、久しぶりに会えるき、楽しみ」
『聞こうと思って忘れちょったわ。アンタ、何で帰るつもりながで?』
私が今いるのは東京、実家のある高知に帰るには飛行機か夜行バスだ。圧倒的に安いのは夜行バス、時間が早いのは飛行機。どちらにするべきか迷うし、今から飛行機となるとかなり高額で取れるかどうかも怪しい。
「もうチケット、飛行機は取れんろうき、なんとか夜行バスで帰るつもり。高知駅ついたら、特急で最寄り駅まで帰るき、そこに迎えに来てや」
『えいがかね?別に高知まで迎えに行ったち、かまんで』
「うーん、ほんならお願いします」
『ほいたら、また時間教えてよ』
「うん、わかった。ほいたぁね」
しばらく母と電話をし、帰省するための夜行バスの予約をパソコンを開いて見る。やはり、一週間前の予定ではほぼ満席で、もう少し早く取ればよかったと後悔する。しかし時間は逆行できないので、空いている席を予約し、チケット購入を確定する。社会人の頃はクレジットカードを使っていたけど、今は学生になってしまったので、クレジットカードは使わないようにしている。チケットのお金の払い込みにはコンビニに行くしかない。
「行っちょったら、安心か」
お財布の中身を確認し、外に出られる格好に着替えてからコンビニに向かう。スマホにメールが届くから、その場で番号も確認できる。
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