彼が獣になる瞬間

高福あさひ

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馨に抱いてもらったあの日から、数日が経った。特に生活が突然変わるわけでもなく、同じような毎日を過ごしていた。唯一、変わったとすればそれは馨とルームシェアする話が進められているというところぐらいだろうか。この間は内見にも一緒に行って、家具なんかも一部は新しくしようということで某家具店や家電量販店にも行った。結局、互いに一部屋はあった方がいいだろうということで2LDKの部屋を探すことになった。馨の要望で通勤に便利な場所、私はできればお家賃安めでと希望を出したところ、そもそも指定したエリアに物件が少なく、必然と家賃が高くなってしまった。しかし馨は外へ通勤しに行くのに対して、私は別に家賃にものすごくこだわっているわけでもなかったから、だいたい物件は絞れた。あとはもう一軒の内見が終われば決まるというところ。馨の後輩と馨の人脈ってすごいんだなって改めて思ったよね。

「あ、馨?うん、今大丈夫だよ。……うん、その日は午後からならその近くにいるから行けるよ。わかった、その日の午後だね、うん、ありがとう」

『じゃあ、その日に内見行きましょう。たぶん、もう決まると思うから引っ越しの準備とかしようね』

「うん。それじゃあ、またね」

電話で馨の出勤前にやりとりをして、私はすぐにまた原稿に取り掛かる。そろそろ締め切りが近くて、ちょうどさっき決まったばかりの内見の日に担当さんと会って原稿を渡す予定だ。今回はデジタルではなくアナログの方だからやる気が出なくてなかなか作業が進まない。もっとペースを上げて仕上げていればよかったのに、なんて一人でつぶやきながら作業を続ける。どうやったって、予定日が変わるわけではないし。

「あ、間違えた…」

トーン貼りの最中に考え事をしながらボケッと進めていたのがよくなかったのか、さっそく間違えた。やっぱり集中して短時間で終わるようにした方が得策だ。

「さぁて、パッとやっちゃいますか」



















数時間が経って、気が付けば日は傾き部屋は薄暗くなっていた。短期集中で、と頑張った結果がどうやらでたようでいつの間にかアナログ作業は終わっている。今はデジタルで作業して先日の初体験を軽い読み切り漫画みたいにしているところだ。

「あ、ご飯…食べないと」

私は自慢ではないが家事が得意ではない。まあ部屋を汚部屋にする時点で家事能力はお察しであるが。そんな私がご飯を作れるのか、いや無理だろう。どう考えても学校の調理実習程度しか料理の経験がない私には普通の料理なんて作れるわけがない。しかし私も一応は自炊というものはしている訳で。じゃあ、普段何を食べているのか、ということになるといつもはパスタを食べている。最近は便利なもので電子レンジに入れるパスタを湯がく専用の容器を使えばあっという間に茹で上がるし、ソースは市販の物をレンジで温めるなり湯煎するなりすればすぐに食べられる。味もミートソースやカルボナーラ、ナポリタンと変えてしまえば飽きることはほとんどない。たまに飽きることがあるけどその時はカップ麺でも食べればいい。元々、朝と昼は一緒に食べることが多くて食パンだし、なんといっても私自身、家にあるものを食べられたらいいというスタンスで食べる物が無ければ「まあ、食べなくてもいいか」くらいなので不摂生だとわかってはいるがそんなものだ。なので余計に家事をする事が無くなるんだけど。



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