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情緒不安定すぎて、ぐちゃぐちゃになった感情を整理ができない。私が悪いのに、なんて溢せば即座にそれは否定された。
「千鶴、君は何も悪くない。悪いのは千鶴を傷つけた奴らなんだ」
じゃあ、なんで私が悪いって言われるの。
そう、言いそうになった。この人に言っても意味がないのに、理不尽な怒りをぶつけようとした。そんな汚い自分も、醜くて嫌いだ。
「千鶴、我慢しなくていい」
言葉を発そうとしてやめたのを感じ取ったのか、言ってもいいと言うが、言えるわけがない。醜く、汚い感情を、この人にぶつける勇気がない。ぶつけて受け入れてもらえなかったら、なんて弱虫を発揮して。
人間は、自分に都合のいい解釈をして、綺麗な面しか見ない。私を表向きは可哀そうと言って何もしてこなかった奴らは、私が何も言わずに厳しいしつけに耐えていると解釈していた。
実際に、私は「ご両親は厳しい方々なのね」の一言で終わらされている。あれのどこを見て厳しいと言えるのかわからないし、お前の目は節穴かと言いそうになったが、子どもの私が何を言ったところで、子どもの言葉として処理される。
そうして救いの手が遠のいていた私が学んだのは、人間など簡単に裏切る、だ。昨日まで助けてあげると言った先生は、次の日には手のひら返し。うんざりだ、もう。
「あの、とりあえず、いろいろ申請とかあるので、かえり、たいです……」
「何言ってるの、今日は日曜日だよ。どこもお休みだから」
「あっ……」
頭の中を冷めた感情が支配したおかげで、涙は引っ込んだ。ようやく泣き終えた私は、帰りたい、と言えば今日は日曜日だと言われて、そういえばそうだったと思い出す。
「えと、お金引くくらいなら、コンビニでもできますし、いろいろ買わないと駄目ですし……。その、あとアパートも見なくちゃ……」
「アパート? なんでアパートを見る必要がある?」
「え? だって、私の家は燃えましたから……次の住まいを探さないと……。そ、それに、仕事も探さないといけませんし」
「千鶴、これからはこの家に住むんだから、アパートなんて探す必要ないし、仕事もしなくていい。これからこの家にずっといてくれたらいい」
「は?」
最近、全然感情が表に出なかったけど、今度ばかりは全力の「は?」が出た。本当に何を言っているんだ、この人は。
結婚どころか付き合ってすらいない男女が同じ屋根の下で暮らすとか、どんな理由であれめったにないというか、私は聞いたことがないのだが。
「ん? 千鶴、君は俺のものなんだから、ずっと一緒にいるのは当たり前だよ?」
いや、あの、私、物じゃないんですけど。
そんな言葉が口から出そうになったし、言いたかったが、至極当然のように、当たり前でしょ、常識でしょ、みたいな顔で真剣に言われては言い出しづらい。
「あの、付き合ってすらいない、未婚の男女が同じ屋根の下は世間的にどうかと思います……」
さすがに常識から攻めていけば大丈夫だろうと思うので、常識を伝える。しかし、これも不発に終わった。
「小さいころ、千鶴と結婚の約束したよね? 覚えてない?」
「結婚!? してませんが!?」
一体どこからそんな約束が飛び出してきたんだ、と目をひん剥いた。そんな約束をした覚えなんて一切ないし、そんな重要な約束をしていたのならば、私はここまで夢を持てない女にはならなかっただろう。
「え? 必ず会いに行くと言っただろう?」
「それ、ただの会いに来る約束ですが!」
「なんだ、千鶴ならわかってくれると思っていたのに」
「そんなのでわかるわけないでしょう!? そもそも、私、結婚するつもりも誰かと付き合うつもりもないですし!!」
もう、訳の分からない発言をされているせいでツッコミまくっている。
「千鶴、君は何も悪くない。悪いのは千鶴を傷つけた奴らなんだ」
じゃあ、なんで私が悪いって言われるの。
そう、言いそうになった。この人に言っても意味がないのに、理不尽な怒りをぶつけようとした。そんな汚い自分も、醜くて嫌いだ。
「千鶴、我慢しなくていい」
言葉を発そうとしてやめたのを感じ取ったのか、言ってもいいと言うが、言えるわけがない。醜く、汚い感情を、この人にぶつける勇気がない。ぶつけて受け入れてもらえなかったら、なんて弱虫を発揮して。
人間は、自分に都合のいい解釈をして、綺麗な面しか見ない。私を表向きは可哀そうと言って何もしてこなかった奴らは、私が何も言わずに厳しいしつけに耐えていると解釈していた。
実際に、私は「ご両親は厳しい方々なのね」の一言で終わらされている。あれのどこを見て厳しいと言えるのかわからないし、お前の目は節穴かと言いそうになったが、子どもの私が何を言ったところで、子どもの言葉として処理される。
そうして救いの手が遠のいていた私が学んだのは、人間など簡単に裏切る、だ。昨日まで助けてあげると言った先生は、次の日には手のひら返し。うんざりだ、もう。
「あの、とりあえず、いろいろ申請とかあるので、かえり、たいです……」
「何言ってるの、今日は日曜日だよ。どこもお休みだから」
「あっ……」
頭の中を冷めた感情が支配したおかげで、涙は引っ込んだ。ようやく泣き終えた私は、帰りたい、と言えば今日は日曜日だと言われて、そういえばそうだったと思い出す。
「えと、お金引くくらいなら、コンビニでもできますし、いろいろ買わないと駄目ですし……。その、あとアパートも見なくちゃ……」
「アパート? なんでアパートを見る必要がある?」
「え? だって、私の家は燃えましたから……次の住まいを探さないと……。そ、それに、仕事も探さないといけませんし」
「千鶴、これからはこの家に住むんだから、アパートなんて探す必要ないし、仕事もしなくていい。これからこの家にずっといてくれたらいい」
「は?」
最近、全然感情が表に出なかったけど、今度ばかりは全力の「は?」が出た。本当に何を言っているんだ、この人は。
結婚どころか付き合ってすらいない男女が同じ屋根の下で暮らすとか、どんな理由であれめったにないというか、私は聞いたことがないのだが。
「ん? 千鶴、君は俺のものなんだから、ずっと一緒にいるのは当たり前だよ?」
いや、あの、私、物じゃないんですけど。
そんな言葉が口から出そうになったし、言いたかったが、至極当然のように、当たり前でしょ、常識でしょ、みたいな顔で真剣に言われては言い出しづらい。
「あの、付き合ってすらいない、未婚の男女が同じ屋根の下は世間的にどうかと思います……」
さすがに常識から攻めていけば大丈夫だろうと思うので、常識を伝える。しかし、これも不発に終わった。
「小さいころ、千鶴と結婚の約束したよね? 覚えてない?」
「結婚!? してませんが!?」
一体どこからそんな約束が飛び出してきたんだ、と目をひん剥いた。そんな約束をした覚えなんて一切ないし、そんな重要な約束をしていたのならば、私はここまで夢を持てない女にはならなかっただろう。
「え? 必ず会いに行くと言っただろう?」
「それ、ただの会いに来る約束ですが!」
「なんだ、千鶴ならわかってくれると思っていたのに」
「そんなのでわかるわけないでしょう!? そもそも、私、結婚するつもりも誰かと付き合うつもりもないですし!!」
もう、訳の分からない発言をされているせいでツッコミまくっている。
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